18年度 法改正トピックス( 労働安全衛生法に関する主要改正点)

  改正後 改正ポイント








調査
・措置
 事業者の行うべき調査等(28条の2の新設)
 「事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る」
 「同2項 厚生労働大臣は、前条1項及び3項に定めるもの(事業者が講ずべき措置にかかる技術上の指針)、化学物質の製造事業者にかかる指針)のほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする」
 「同3項 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる」
 事業者の行うべき調査等を定めていた58条を破棄する代わりに、その対象範囲を拡大して、28条の2を新設した。
 ここで、破棄された旧58条とは、
 「事業者は、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で、労働者の健康障害を生ずるおそれのあるものについては、あらかじめ、これらの物の有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、これらの物による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない」
 ただし、対象範囲を拡大した部分の適用は、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限られている。
 元方事業者の講ずべき措置(30条の2の新設)
 「製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない」
 「同2項 仕事の発注者で、元方事業者以外のものは、1の場所において行なわれる仕事を2以上の請負人に請け負わせている場合において、当該場所において当該仕事に係る2以上の請負人の労働者が作業を行なうときは、厚生労働省令で定めるところにより、請負人で当該仕事を自ら行なう事業者である 者のうちから、前項に規定する措置を講ずべき者として1人を指名しなければならない」
⇒ 分割発注のため、1項の措置を講ずべき者が二以上あるときは、発注者は、措置を講ずべき者1人を指名しなければならない。
 特定元方事業者等の講ずべき措置(30条)に準じて、製造業などの元方事業者が講ずべき措置を新設した。
⇒製造業においても、同じ事業所内で自社だけでなく下請け、孫請け会社の労働者が混在して作業を行う場合は、連絡・調整など災害防止の措置を講じなければならない。
 「30条 特定元方事業者(建設業又は造船業の元方事業者)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない」
1  協議組織の設置及び運営
2  作業間の連絡及び調整
3  作業場所を巡視
4  安全衛生教育の指導・援助等
注文者の措置  化学物質等の仕事の注文者が講ずべき措置(31条の2の新設)
 「化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」
 特定事業の注文者の講ずべき措置(31条)に準じて、化学物質等の仕事の注文者が講ずべき措置を定めた。
 「既設31条 特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」
   表示等(57条)(H18.12.1施行 太線部分を追加)
 「爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条1項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。
 ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない」
1  次に掲げる事項
  名称
  成分
  人体に及ぼす作用
  貯蔵又は取扱い上の注意
  その他、厚生労働省令で定める事項
2  当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
 ベンゼンだけでなく、新たに、爆発・引火の恐れのある物については、その容器や包装に、一定の事項を表示しなければならないとした。
 また、労働者に注意を喚起するために、厚生労働大臣が定めた標章(マーク)も表示しなければならないとした。
 ただし、施行は18年12月からである。
請負人の
措置
 製造業等の請負人の講ずべき措置(32条2項の追加)
 「30条の2の1項に規定する措置を講ずべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、これらの規定により講ぜられる措置に応じて、必要な措置を講じなければならない」
 30条の措置を講ずべき特定元方事業者の請負人だけでなく、30条の2の措置を講ずべき製造業の元方事業者の請負人についても、一定の措置を講じなければならないとした。
健康診断  健康診断実施後の措置(66条の5の1項の改正)
 「事業者は、66条の4による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」(太字部分追加) 
 
 健康診断結果の通知(66条の6の改正)
 「事業者は、66条1項から第4項までの規定により行う健康診断(すなわち一般健康診断、特別項目の健康診断歯科医師による健康診断臨時の健康診断)を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない」(太字部分追加)
 特殊健康診断の結果についても一般健康診断と同様に、遅滞なく労働者に通知しなければならないことになった。
 面接指導(66条の8の新設)
 「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう)を行わなければならない」
 「同2項 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない」
 「同3項 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第1項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない」
 「同4項 事業者は、第1項又は第2項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない}
 「同5項 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」
 面接指導対象者以外の労働者への配慮(66条の9の新設)
 「事業者は、前条1項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であって健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない」
 過重労働メンタルヘルス対策の充実を図るために、事業者は、一定時間(100時間)を超える時間外労働等を行った労働者本人が申し出た場合には、医師による面接指導等を行うことを義務化した。
 参考 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(平成14年2月12日基発0212001)
 「ア 月45時間を超える時間外労働をさせた場合については、事業者は、当該労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等に関する情報を、産業医等に提供し、事業場における健康管理について産業医等による助言指導を受けるものとする」
 「イ 月100時間を超える時間外労働を行わせた場合、又は2か月間ないし6月間の1か月平均の時間外労働を80時間を超えて行わせた場合については、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断されることから、事業者は、上記アの措置に加えて、作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等の情報を産業医等に提供し、当該労働者に産業医等の面接による保健指導を受けさせるものとする。また、産業医等が必要と認める場合にあっては 、必要と認める項目について健康診断を受診させ、その結果に基づき、当該産業医等の意見を聴き、必要な事後措置を行うものとする」



届出
 計画の届出等(88条1項の改正)
 「事業者は、当該事業場の業種及び規模が政令で定めるものに該当する場合において、当該事業場に係る建設物若しくは機械等を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。
 ただし、28条の2の1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない」
 28条の2の1項に規定する措置等を講じているものとして、労働基準監督署長が認定した事業者については、計画の届出義務を免除することとした。
石綿関連 1.「石綿作業主任者技能講習」を「特定化学物質等作業主任者技能講習」から分離独立
2.「石綿障害予防規則」の制定
 「1条 事業者は、石綿による労働者の肺がん、中皮腫その他の健康障害を予防するため、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もって、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、石綿にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない」
 「同条2項 事業者は、石綿を含有する製品の使用状況等を把握し、当該製品を計画的に石綿を含有しない製品に代替するよう努めなければならない」