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 有害物の製造等禁止、製造の許可、表示、文書の交付
関連過去問 11-9C11-9D11-9E令3-8D令3-8E
関連条文 製造等の禁止(55条)、製造の許可(56条)、表示等(57条)、文書の交付等(57条の2)、57条1項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等(57条の3)、化学物質の有害性の調査(57条の457条の5)
製造禁止 1.製造等の禁止(55条)
 「黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない」
 製造等の禁止物質の例 
⇒黄りんマツチ、ベンジジン及びその塩、4-アミノジフェニル及びその塩、すべての石綿、石綿をその重量0.1%を超えて含有する製剤その他の物、クロロメチルエーテルなど
11
9C
 ベンジジンは労働者に重度の健康障害を生ずる物として製造等が禁止されているが、試験研究のために製造し、輸入し、又は使用する場合で、あらかじめ厚生労働大臣の許可を受ける等の要件に該当するときは、この禁止が解除される。
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製造許可 2.製造の許可(56条)
 「ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるものを製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」
 製造許可物質の例
⇒ ジクロルベンジジン及びその塩、アルファナフチルアニン及びその塩、塩素化ビフェニル(PCB)、ベリリウム及びその化合物、ベンゾトリクロリドなど
11
9D
 ジクロルベンジジン等労働者に重度の健康障害を生ずる恐れのある一定の物を製造する場合には、あらかじめ製造する場所を管轄する都道府県労働局長の許可を受けることが必要である。
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3.表示等(57条) 法改正(H28.06.01)法改正 H18.12.1施行)
 「爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条1項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。
 ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない」
 1号:次に掲げる事項
 イ:名称、ロ:人体に及ぼす作用、ハ:貯蔵又は取扱い上の注意、二:イからハなでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
 2号:当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
 表示等が必要な物質の例(安全衛生法施行令18条)
⇒製造許可物質、ベンゼン、ベンゼンを含有する製剤、アクリルアミド、クレゾール、塩化ビニル、エチルアミン、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物など
 「同2項 前項の政令で定める物又は前条1項の物を前項に規定する方法(容器に入れるか、包装する方法)以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところ(継続的な場合を除き、譲渡、又は提供する際に)、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない」
⇒タンクローリーなどで継続的に輸送する場合は、一度だけでよいから文書を交付する。
11
9E
 ベンゼンを容器に入れて譲渡する者は、その名称をその容器に表示しなければならないが、人体に及ぼす作用、貯蔵又は取扱い上の注意等一定の事項については表示するよう努めることで足りる。(H29改)
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4.文書の交付等(57条の2) (法改正 H18.12.1施行)
 「労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条1項の物(通知対象物)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(57条2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。
 ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない」 
1  名称
2  成分及びその含有量
3  物理的及び化学的性質
4  人体に及ぼす作用
5  貯蔵又は取扱い上の注意
6  流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
7  前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項(氏名等、危険性又は有害性の要約、安定性及び反応性、適用される法令、その他)

 「同2項 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない
⇒変更があったときの通知は努力義務。
 57条1項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等(57条の3) リスクアセスメント 法改正(H28.06.01新規)
 「事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、57条1項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない」

 「同2項 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない」
 「同3項 厚生労働大臣は、28条1項及び3項に定めるもののほか、前2項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする」

  「同4項 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる」
チョッと補足(リスクアセスメント)
(1)ここでいうリスクとは化学物質やその製剤が持っている危険性や有害性(労働災害を誘発するリスク)のことで、それをアセスメントするとは、危険性や有害性を特定して、それによるリスクの程度を見積もり、さらにはリスクの低減対策を検討・実施することをさす。
(2)義務化事業場:業種、事業規模に関わらず、対象となる化学物質(2017年3月1日現在663物質)の製造・取扱を行うすべての事業場
(3)実施時期(義務化されているもの)(安全衛生規則34条の2の7)
・表示対象物質及び通知象物(調査対象物)を原材料などとして新規に採用あるいは変更したとき
・調査対象物の製造、取扱業務の作業方法や作業手順を新規に採用あるいは変更したとき
・調査対象物による危険性又は有害性などについて変化が生じるあるいは生じる恐れがあるとき。
(4)実施方法(安全衛生規則34条の2の7の2項)
 「調査対象物の製造、取扱業務ごとに、次のいずれかの方法(危険性に係るものは@又B)又はこれらの方法の併用により行わなければならない」
@調査対象物が業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は当該調査対象物により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度及び当該危険又は健康障害の程度を考慮する方法(発生可能性と重篤度を考慮する方法)
A従事する労働者が調査対象物にさらされる程度及び調査対象物の有害性の程度を考慮する方法(暴露濃度と有害性の程度を考慮する方法)
B前2号に準ずる方法
(5)実施体制
・統括安全衛生管理者など:実施を統括管理 こちらを参照
・安全管理者・衛生管理者、作業主任者、職長など:実施を管理
・化学物質管理者:技術的業務を実施
・安全委員会:付議事項
・衛生委員会:付議事項
・労働衛生コンサルタント、労働安全コンサルタントなど:技術的な助言を得るために、活用が望まれる。
(6)結果の労働者への周知(安全衛生規則34条の2の8)
 「事業者は、調査を行つたときは、次に掲げる事項(対象物の名称、対象業務の内容、アセスメントの結果(特定した危険性・有害性、見積もったリスク)、事業者が講ずる危険又は健康障害の防止措置の内容)を、調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない」
(7)関連用語
SDS(安全データシート):有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡又は、提供する際に、対象化学物質等の性状や取り扱いに関する情報を提供するための文書。
GHS:化学品の危険有害性ごとの分類基準、安全データシート、ラベルなどについて、世界的に統一されたルール。これに基づき、危険険有害性を表すためのラベル(容器、外部梱包に貼付あるいは印刷された絵表示)が普及している。
  化学物質の有害性の調査(57条の4
 「化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(3項の規定によりその名称が公表された化学物質を含む))以外の化学物質(新規化学物質という)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
 ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない」
@当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質について予定されている製造又は取扱いの方法等からみて労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
A当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、既に得られている知見等に基づき厚生労働省令で定める有害性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
B当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき。
C当該新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品(当該新規化学物質を含有する製品を含む))として輸入される場合で、厚生労働省令で定めるとき。
 「2項 有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない」
 「3項 厚生労働大臣は、1項の規定による届出があつた場合(同項Aの規定による確認をした場合を含む)には、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質の名称を公表するものとする」
 がんなどに対する化学物質の有害性調査(57条の5)
 「厚生労働大臣は、化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものについて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該化学物質を製造し、輸入し、又は使用している事業者その他厚生労働省令で定める事業者に対し、政令で定める有害性の調査(当該化学物質が労働者の健康障害に及ぼす影響についての調査をいう)を行い、その結果を報告すべきことを指示することができる」
 「2項 前項の規定による指示は、化学物質についての有害性の調査に関する技術水準、調査を実施する機関の整備状況、当該事業者の調査の能力等を総合的に考慮し、厚生労働大臣の定める基準に従つて行うものとする」p 「3項 厚生労働大臣は、1項の規定による指示を行おうとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、学識経験者の意見を聴かなければならない
 「4項 1項の規定による有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない」。
 「5項 3項の規定により1項の規定による指示について意見を求められた学識経験者は、当該指示に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」

3
8D
  労働安全衛生法では、化学物質による労働者の健康障害を防止するため、新規化学物質を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう)を行うよう努めなければならないとされている。 
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8E
 労働安全衛生法では、厚生労働大臣は、化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものについて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該化学物質を製造し、輸入し、又は使用している事業者その他厚生労働省令で定める事業者に対し、政令で定める有害性の調査(当該化学物質が労働者の健康障害に及ぼす影響についての調査をいう。)を行い、その結果を報告すべきことを指示することができることとされ、また、その指示を行おうとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、学識経験者の意見を聴かなければならないとされている。
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