労働基準法及び労働安全衛生法(選択式解答)

1
8年

1.労働契約法16条において、「解雇は、(A)客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されている。
[解説]
 旧労働基準法18条の2、現労働契約法16条に、
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」 
 有名な条文であるから、他の選択肢にはごまかされなかったと思う。
 詳細については、基礎講座を参照のこと。
2.労働基準法第38条の4の規定によるいわゆる企画業務型裁量労働制を適用するに当たっては、同条第1項に規定する委員会において、同項第4号に定める事項、すなわち、「対象業務に従事する対象労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること」等を決議することが求められており、同条第4項において、同条第1項の規定による決議の届出をした使用者は、労働基準法施行規則第24条の2の5の規定により、労働基準法第38条の4第1項第4号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況について、同条第1項に規定する決議が行なわれた日から起算して(B)6箇月以内ごとに1回、所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととされている。
[解説]
  問題文にある施行規則24条の2の5とは、
 「報告は、決議が行われた日から起算して6箇月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回様式第13号の4により、所轄労働基準監督署長にしなければならない」
 とあるが、暫定措置として、附則66条の2に、
 「当分の間、「6箇月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回」とあるのは「6箇月以内ごとに1回」とする」とある。
 よって、回答としては、施行規則24条の2の5の「6箇月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回」でよいはずであるが、選択肢に「6か月ごとに1回」というのがあるから、施行規則24条の2の5の読み替え規定である附則66条の2による、「6か月ごとに1回」を正解として要求しているのであろう。
 しかしそうなら、問題文にわざわざ「施行規則24条の2の5の規定により」などと規定の番号まで書くことはないと思う。
 企画業務型裁量労働制で一番問題になるのは、みずからの意思とはいいながらも働きすぎになったり、あるいは間接的に長時間労働を強いられることになりはせぬかということである。
 よって、「労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置」について決議し、その実施状況につい労働基準監督署長に報告しなければならないこととされている のである。 
3.労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(一定の労働契約については5年)を超える期間について締結してはならないこととされている。
 そこで、例えば、システムエンジニアの業務に就こうとする者であって、一定の学校において就こうとする業務に関する学科を修めて卒業し、就こうとする業務に一定期間以上従事した経験を有し、かつ、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年当たりの額に換算した額が(C)1,075万円を下回らないものとの間に締結される労働契約にあっては、5年とすることができる。
[解説]
 「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約は5年)を超える期間について締結してはならない」
1  高度の専門的知識等を有する労働者との契約
2  満60歳以上の労働者との契約
 となっている。
 1号の「高度の専門的知識等を有する労働者」とは、具体的には、厚生労働大臣が定める基準(H15.10.22厚労告356)に規定されており、5の「契約期間中に確実に見込まれる賃金の額が1年あたり1,075万円を下回らないシステムエンジニア」もこれに該当する。
4.労働安全衛生法第3条第1項の規定においては、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、(D)労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。
[解説]
 事業者等の責務を定めている安全衛生法3条に、
 「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない」
 つまり、事業者は労働者に対して「安全配慮義務」が課せられている。
 安全配慮義務違反とされると、労災保険給付だけで事業者の責任が免れるとは限らず、訴訟によって莫大な損害賠償責任を負わされることもある。
 国立大学や国立研究所などが行政法人化したとき、この事業主の安全配慮義務なるものがあることを知って、これをどのようにして全うするかということで、内部では大問題になったとか。
5.労働安全衛生法第66条の8の規定に基づき、事業者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1か月あたり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対し、当該労働者の申出により、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう)を行なわなければならない。
 また、労働安全衛生規則第52条の3第4項においては、産業医は、当該労働者に対して、当該申出を行うよう(E)勧奨することができる旨規定されている。
[解説]
 面接指導の実施方法を定めた安衛法施行規則52条の3の4項は、
 「産業医は、面接指導の対象労働者に対して、1項の申出(面接指導を受けたいという申出)を行うよう勧奨することができる」
 面接指導は18年度の法改正で新設されたもので、ほとんどの受験生は対象労働者の要件(1月あたりの時間外労働時間数が100時間以上で疲労の蓄積が認められる者)、本人の申出によること、申出があれば事業者は実施する義務があること、事業者は面接指導結果に基づき必要な措置についての意見を医師から聴くこと、必要な措置を実際に実施することなどについてマスターしたであろう。
 しかし皮肉なことにこれらのほとんどが問題文の中に書いてあり、択一式ではないからこれらすべてが正しいのである。この部分は問題文から削除されていても支障がないといえる。
 よってこの問題は、勧告、勧奨、指示、指導の中から好きなのを選べてということ、すなわち、選択式にはよくある国語の問題なのだ。
 指導については問題文で既に使われている。
 産業医が本人に対して「事業者に申出よ」と指示するのも変である。指示するなら、事業者に対して  「面接指導を受けさせよ」となるはず。
 「勧告」とは勧め説くこと、「勧奨」とはすすめ励ますこと・ほめてひきたてること。(いずれも広辞苑)