災石綿 石綿健康被害救済法                          Tom塾Homeへ 
「石綿による健康被害の救済に関する法律」が18年2月10日に交付され、施行は18年3月となりました。これに伴って、同法の38条、59条は社労士業務に関連する法のひとつに追加されました。ここでは、35条38条  59条を中心としてその概要を紹介する。
 関連過去問 令4-災8A
目的等 1.目的(1条) 
 「この法律は、石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする」
2.定義(2条)
 「1号 指定疾病とは、@中皮腫、A気管支又は肺の悪性新生物、B石綿を吸入することにより発生する疾病であって政令で定めるものをいう」
 「2号 法改正(H23.08.30) 死亡労働者等とは、 労働者災害補償保険に係る労働保険の保険関係が成立している事業に使用される労働者又は特別加入者であって、石綿にさらされる業務に従事することにより指定疾病その他厚生労働省令で定める疾病にかかり、これにより死亡したもの(昭和22年9月1日以降に当該指定疾病その他厚生労働省令で定める疾病にかかり、これにより、この法律の施行の日(H18.03.27)から10年を経過する日の前日までに死亡した者に限る)をいう」
 ⇒改正点:施行日の前日(H18.03.26)までに死亡から、10年を経過する日の前日(H28.03.26)までに死亡へ
救済給付 3. 救済給付の種類(3条)(H18年3月27日施行)
 「石綿による健康被害の救済のため支給される救済給付は、次に掲げるとおりとし、独立行政法人環境再生保全機構(以下機構)がこの章の規定により支給するものとする」
1  医療費  自己負担分
2  療養手当  月額約10万円
3  葬祭料  約20万円
4  特別遺族弔慰金  280万円
5  特別葬祭料  約20万円
6  救済給付調整金  指定疾病にかかったものが施行日から起算して2年以内に死亡した場合
 特別遺族弔慰金−医療費及び療養手当の合計額 
 があれば支給。
 注:特別遺族弔慰金、特別葬祭料は、法施行以前に指定疾病で死亡した者の遺族に給付するもの。
 このほかに、特別遺族給付金がある。
 特別遺族弔慰金等の支給(20条)
 「次に掲げる者の遺族(59条の特別遺族給付金の支給を受けることができる者を除く)に対し、特別遺族弔慰金及び特別葬祭料を支給する」
 @日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかり、当該指定疾病に起因して施行日前に死亡した者
 A日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかり、当該指定疾病に関し認定の申請をしないで当該指定疾病に起因して施行日以後に死亡した者
 特別遺族弔慰金等の支給を受けることができる遺族の範囲及び順位(21条)
 「前条の特別遺族弔慰金及び特別葬祭料の支給を受けることができる遺族は、死亡者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、死亡の当時死亡者と生計を同じくしていたものとする」
 特別遺族弔慰金等の請求(22条2項) 法改正(H23.08.30) 
 「特別遺族弔慰金等の支給の請求は、施行前死亡者の遺族にあっては施行日から16年、未申請死亡者の遺族にあっては当該未申請死亡者の死亡の時から15年を経過したときは、することができない」
 改正点:施行前死亡者の遺族については、6年から16年に
     未申請死亡者の遺族については、5年から10年に
 特別遺族給付金(59条)  (H18年3月27日施行)
 「厚生労働大臣は、死亡労働者等の遺族であって、労災保険法の規定による遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅したものに対し、その請求に基づき、特別遺族給付金を支給する」
 「同2項 特別遺族給付金は、特別遺族年金又は特別遺族一時金とする」
 「同5項 法改正(H23.08.30) 特別遺族年金又は特別遺族一時金の支給の請求は、施行日から16年を経過したときは、することができない」
 改正点:特別遺族給付金の請求期限は施行日から6年を16年に延長。
 特別遺族年金は原則として年額240万円。遺族の範囲と優先順位は遺族補償年金と同じ。
特別遺族一時金は、特別遺族年金を受け取れる遺族がいない場合、あるいは受け取った特別遺族年金の積算額が、特別遺族一時金の額に満たない場合に支給される。遺族の範囲と優先順位は遺族補償一時金と同じ。
@H18.03.27からH28.03.26の間に死亡した者 : 労災保険からの遺族保障給付が時効消滅した者であっても、特別遺族給付金を、請求した日の属する月の翌月から支給。
AH18.03.27からH18.08.29の間に死亡した者 : 労災保険からの遺族保障給付が時効消滅した者であれば、時効消滅した時点から
4.認定等(4条) (H18年3月施行)
 「機構は、日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた者に対し、その請求に基づき、医療費を支給する」
5.給付の調整(26条) (H18年3月施行)
 「医療費は、被認定者に対し、当該認定に係る指定疾病について、健康保険法等以外の法令の規定により医療に関する給付が行われるべき場合には、その給付の限度において、支給しない」
 「同2項 療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金等及び救済給付調整金は、これらの支給を受けることができる者に対し、同一の事由について、労災保険法その他の法令による給付で政令で定めるものが行われるべき場合には、その給付に相当する金額として政令で定めるところにより算定した額の限度において、支給しない」
 ⇒ 労災保険法などと重複しては支給しない。ただし、差額があればその差額分だけ支給する。 
6.救済基金(31条)(H18年2月10日施行)
 「機構は、救済給付の支給に要する費用(当該支給の事務の執行に要する費用を除く)に充てるため石綿健康被害救済基金を設ける」
 「同2項  前項の石綿健康被害救済基金は、
 @政府から交付された資金、
 A地方公共団体から拠出された資金、
  B36条の規定により厚生労働大臣から交付された金(労災保険適用事業主から徴収した一般拠出金から一定額を控除したもの)、
 C47条の規定により徴収した特別拠出金
 D27条(不正利得の徴収)の規定により徴収した金額
 及び当該石綿健康被害救済基金の運用によって生じた利子その他の収入金の合計額に相当する金額から、この法律の規定により機構が行う業務の事務の執行に要する費用に相当する金額を控除した金額をもって充てるものとする」



















7.1  一般拠出金の徴収及び納付義務(35条)
 「厚生労働大臣は、救済給付の支給に要する費用に充てるため、労災保険の保険関係が成立している事業の事業主(徴収法第8条第1項又は第2項の規定により元請負人が事業主とされる場合にあっては、当該元請負人。以下「労災保険適用事業主」という)から毎年度、一般拠出金を徴収する」
 機構に対する交付(36条)
 「厚生労働大臣は、前条1項の規定により一般拠出金を徴収したときは、機構に対し、徴収した額から当該一般拠出金の徴収に要する費用の額として政令で定めるところにより算定した額を控除した額に相当する金額を交付するものとする」
 一般拠出金の額(37条)
 「35条1項の規定により労災保険適用事業主から徴収する一般拠出金の額は、徴収法の一般保険料の計算の基礎となる賃金総額に一般拠出金率を乗じて得た額とする」
⇒一般拠出金率は1,000分の0.02(環境省告示111号H26.04.01改正)
7.2 一般拠出金の徴収方法(38条)(H19年4月1日施行)
 「徴収法の各規定は、一般拠出金について準用する」
⇒すなわち、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金を、徴収法における確定保険料、確定保険料の追徴金、口座振替による納付、督促、滞納処分、延滞金、 先取特権などの条項を適用して、一般保険料と同じように徴収する
額が小さいこともあって、概算保険料や延納の制度はない。
7.3 特別拠出金の徴収及び納付義務(47条)
 「機構は、救済給付の支給に要する費用に充てるため、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して政令で定める要件に該当する事業主(特別事業主)から、毎年度、特別拠出金を徴収する」
7.4 特別遺族給付金の費用(69条)(H19年4月1日施行)
 「特別遺族給付金の支給に要する費用については、徴収法に規定する労働保険の事業に要する費用とみなし、これに充てるため労働保険料(印紙保険料を除く)を徴収する」

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8A
 労災保険の適用事業場のすべての事業主は、労働保険の確定保険料の申告に併せて一般拠出金(石綿による健康被害の救済に関する法律第35条第1項の規定により徴収する一般拠出金をいう。以下同じ)を申告・納付することとなっており、一般拠出金の額の算定に当たって用いる料率は、
労災保険のいわゆるメリット制の対象事業場であってもメリット料率(割増・割引)の適用はない。

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正しい 誤り