18年度 法改正トピックス(建設労働者雇用改善法に関する主要改正点)

建設労働者雇用改善法(17.10.1施行)

  改正後 改正ポイント
  1.目的(1条)
 「この法律は、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置、並びに建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保を図るための措置を講ずることにより、建設業務に必要な労働力の確保に資するとともに、建設労働者の雇用の安定を図ることを目的とする」
 不況に悩む建設事業の対して、
@余った社員を他社に紹介して常時雇用してもらう建設業務有料職業紹介事業、
A余った社員を他社に派遣する建設業務労働者就業機会確保事業が
 実施できるようにした。
2.定義(2条)
 「7項、8項 有料建設業務職業紹介とは、手数料又は報酬を得て、事業主団体が、当該事業主団体の構成員を求人者とし、又は当該事業主団体の構成員若しくは構成員に常時雇用されている者を求職者とし、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における建設業務に就く職業に係る雇用関係(期間の定めのない労働契約に係るものに限る)の成立をあっせんすることをいう」
 「9項、10項 建設業務労働者就業機会確保事業とは、事業主が、自己の常時雇用する建設業務労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他の事業主の指揮命令を受けて、当該他の事業主のために建設業務に従事させる(当該建設業務労働者を当該他の事業主に雇用させることを約してするものを含まない)事業を、業として行うことをいう」
 「11項 送出労働者とは、事業主が常時雇用する建設業務労働者であって、建設業務労働者の就業機会確保の対象となるものをいう」
 事業場 ⇒ 事業所に変更

 

 

 


 


 「送出労働者」は派遣法における「派遣労働者」に、「送出事業主」は「派遣元事業主」に相当する。
2.建設雇用改善計画の策定(3条)
 「厚生労働大臣は、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する重要事項並びに建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業適正な運営の確保に関する重要事項 を定めた計画(建設雇用改善計画)を策定するものとする」
 1の目的を達成するため、「建設雇用改善計画」に、新規の三事業の適正な運用の確保に関する事項を追加した。
 注 現在は二事業
3.建設労働者の福祉等(9条)(4号の追加)
 「政府は、建設労働者(雇用保険法被保険者等に限る)の能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るため、同法63条の能力開発事業として、次の事業を行うことができる」 
1  事業主等(事業主、事業主の団体又はその連合団体)に対して、建設労働者の技能の向上を推進するために必要な助成を行うこと。
2  事業主等に対して、雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修を実施するために必要な助成を行うこと。
3  認定団体(実施計画の認定を受けた事業主団体)に対して、送出労働者の就業場所における作業環境に適応させるための訓練の促進並びに建設業務労働者の就職及び送出就業の円滑化を図るために必要な助成を行うこと
 事業主団体とは、事業主を直接又は間接の構成員とする団体又はその連合団体(法人でない団体にあっては、代表者又は管理人の定めのあるものに限る)をいう 。
4.実施計画の認定(12条) (新設)
 「事業主団体は、
 建設業務労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する措置並びに、
 建設業務有料職業紹介事業又は当該事業主団体の構成員である事業主が行う建設業務労働者就業機会確保事業に関する措置を、
 一体的に実施するための実施計画を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その実施計画が適当である旨の認定を受けることができる」
 事業主団体が実施計画の認定を受けることによって 、「建設業務有料職業紹介事業」、「建設業務労働者就業機会確保事業」の許可申請のほか、関連する助成金の申請などが可能になる。
5.建設業務有料職業紹介事業の許可(18条) (新設)
 「建設業務有料職業紹介事業を行おうとする認定団体は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」
5.1 手数料(20条) (新設)
 「許可を受けた認定団体(建設業務有料職業紹介事業者)は、次に掲げる場合を除き、建設業務職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない」
1  建設業務職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
2  あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づき手数料を徴収する場合
「同2項 建設業務有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、前項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる」


5.2 許可の有効期間(23条)(新設)
 「許可の有効期間は、当該許可の日(有効期間の更新を受けた場合にあっては、有効期間が満了した日の翌日)から起算して3年とする」
 建設業務有料職業紹介事業を実施するには、事業主団体が厚生労働大臣から、「実施計画の認定」と「同事業の許可」を得る必要 がある。
 建設業務有料職業紹介事業の趣旨 ⇒ 同じ事業主団体に所属する事業主間で、余った労働者や事業の中核的となる労働者を、常時雇用者として転職させることにより、解雇の防止や必要人材の確保を行うもの。
 建設業務労働者就業機会確保事業を実施するには、所属する事業主団体が厚生労働大臣から「実施計画の認定」を受けた上で、事業主が「同事業の許可」を得る必要がある。
 建設業務労働者就業機会確保事業の趣旨 ⇒ 受注産業という建設業の特性から生じる、一時的な技能労働者の過不足を、労働者派遣という形で調整して、就業の場を確保するもの。
 一時的な労働者の過不足が生じる事業主のみが許可の対象となり、送出就業(派遣事業)のために労働者を雇用することや、送出を主たる業務とすることはできない。
6.建設業務労働者就業機会確保事業の許可(31条) (新設)
 「建設業務労働者就業機会確保事業を行おうとする構成事業主は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」
 「36条 有効期間は3年である」
7.1 職業安定法の規定の読替え(30条)(新設)
 「建設業務有料職業紹介事業者が行う建設業務有料職業紹介事業に関しては、職業安定法30条第2項から6項まで及び31条から32条の10までの規定は適用しないものとする(以下その他にも読み替えが規定されているが省略)」
7.2 労働者派遣法の規定の読替え(44条)(新設)
 「送出事業主が行う建設業務労働者就業機会確保事業に関しては、労働者派遣法2章2節、26条1項、48条2項及び54条の規定は適用しないものとし、労働者派遣法の他の規定の適用については、雇用管理責任者を労働者派遣法に規定する派遣元責任者と、送出事業主を労働者派遣法派遣元事業主と、受入事業主を労働者派遣法に規定する派遣先とみなす(以下その他にも読み替えが規定されているが省略)」
 
8.徴収法の適用に関する特例(45条)(新設)
 「受入事業主がその指揮命令の下に労働させる送出労働者の当該建設業務労働者の就業機会確保に係る就業に関しては、当該送出事業主を当該受入事業主の請負人とみなして、徴収法の規定(労災保険に係る労働保険の保険関係に係るものに限る)を適用する」
 労災保険料は、送出事業主が「下請事業の分離」をしない限り、受入事業主が負担する。