法改正トピックス(厚生年金法(除く厚生年金基金、企業年金関連)に関する主要改正点)
 併給調整加給年金経過的加算保険料納付済要件国庫負担積立金の運用
 算定基礎日数の短縮
 国民年金法、厚生年金法は16年に大幅に改正された。各改正条項の施行は16年、17年、18年、19年、20年と段階的に行われる。
 よって、18年度受験対象部分(18年4月15日施行分)をマスターするには、当然のことながら17年度対象分と合わせて学習する必要があるし、17年度対象分も法改正に絡んで出題される可能性は高い。
 また、18年4月16日以降施行分についても、話題性の高いものは一般常識として出題する可能性もあるし、改正年金法の全体像をつかむためにも、目を当しておきたい
 

改正後

改正ポイント

併給調整 1.併給調整(38条) 法改正 (H18.4.1施行)
 「障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く)又は他の被用者年金各法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害共済年金を除く)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。
 老齢厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金を除く並びに障害基礎年金を除く)、又は他の被用者年金各法による年金たる給付(退職共済年金を除く)を受けることができる場合における当該老齢厚生年金及び
 遺族厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金、障害基礎年金並びに当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される遺族基礎年金を除く)又は他の被用者年金各法による年金たる給付(当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される遺族共済年金を除く)を受けることができる場合における当該遺族厚生年金についても、同様とする」

 改正の趣旨: 国民年金法20条と同一 。
 たとえば、国民年金1号の若い時期に障害を負うと、その後の国民年金1号の期間中は法定免除になり、老齢基礎年金は低額である。その後、会社等に就職して厚生年金に加入しても、低賃金であったり、在職期間が短いと老齢厚生年金も低額である場合がある。
 このようなときは、65歳になっても「障害基礎年金」を受給し続けた方が、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」に切り替えるよりも有利であった。
 ⇒ このたびの法改正により、「障害基礎年金+老齢厚生年金」を選択できるようになった。
@ 支給事由が同じである、老齢基礎・付加年金と老齢厚生年金(又は退職共済)は併給可。
 さらに、老齢厚生と退職共済も併給可
A 支給事由が同じである、障害基礎と障害厚生(又は障害共済)は併給可
B 支給事由が同じである、遺族基礎と遺族厚生(又は遺族共済)は併給可能。
 さらに、遺族厚生と遺族共済も併給可(ただし、いずれも長期要件のとき)
C 65歳以後の老齢基礎・付加年金と遺族厚生(又は遺族共済)も併給可。さらに、遺族厚生と遺族共済も併給可 (ただし、いずれも長期要件のとき)
D 65歳以後の障害基礎と老齢厚生(又は退職共済)も併給可(新規)
 
さらに、老齢厚生と退職共済も併給可
E 65歳以後の障害基礎と遺族厚生(又は遺族共済)も併給可(新規)
 
さらに、遺族厚生と遺族共済も併給可(ただし、いずれも長期要件のとき)
加給年金 1.加給年金額(44条)(H18.4.1施行)
 「老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る)の額は、受給権者がその権利を取得した当時(その権利を取得した当時、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であったときは、当該月数が240以上となるに至った当時)その者によって生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にある子に限る)があるときは、43条に定める額に加給年金額を加算した額とする。
 ただし、国民年金法の規定により加算が行われている子があるとき(当該子について加算する額に相当する部分の全額につき支給を停止されているときを除く)は、その間、当該子について加算する額に相当する部分の支給を停止する」 (太字分追加)
 国民年金法20条、厚生年金法38条の改正により、障害基礎年金と老齢厚生年金の併給 可能。
⇒ 障害基礎年金に加給年金がつくときは、老齢厚生年金の加給は支給停止
 
 参考までに、加給の対象は一定の要件の子(18歳到達年度末未満の子、20歳未満で障害等級の1級若しくは2級の子)
2.経過的加算(S60法附則73条)(H18.4.1施行)
 「62条(中高齢の寡婦加算)に規定する遺族厚生年金の受給権者であって、昭和31年4月1日までの間に生まれた者(死亡した厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の妻であった者に限る)が、その権利を取得した当時65歳以上であったとき、又はその後65歳に達したときは、中高齢寡婦加算額から満額の老齢基礎年金額×生年月日による乗率を控除した額を加算する 。
 ただし、当該遺族厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金又は旧国民年金法による障害年金の受給権を有するとき(その支給を停止されているときを除く)は、その間、当該加算する額に相当する部分の支給を停止する」 (太字分追加)
 国民年金法20条の改正により、障害基礎年金と 遺族厚生年金の併給可能
 ⇒ 経過的寡婦加算は支給停止
 
 参考までに、この組み合わせの併給は65歳以上になってからであるので、経過的寡婦加算が対象になる。
(中高齢の寡婦加算は65歳までで終了している)
納付済要件 1.保険料納付済み要件の特例(昭和60年改正法附則64条)(H18.4.1施行) 
 国民年金法における昭和60年改正法附則20条と同じ。
 
国庫負担

 基礎年金拠出金の国庫負担に関する経過措置(平成16年改正法附則32条)
 「5項(H18.4.1新規)18年度から特定年度の前年度までの各年度における第7条の規定による改正後の80条1項の規定の適用については、同項中「の2分の1に相当する額」とあるのは、「に、3分の1に1000分の25を加えた率を乗じて得た額」とする」

⇒ 18年度以降は基礎年金拠出金の額×(3分の1+1,000分の25)
 
積立金の運用
1.年金積立金管理運用独立行政法人(79条の3)(H18.4.1改正)
 「積立金の運用は、厚生労働大臣が、前条の目的に沿つた運用に基づく納付金の納付を目的として、年金積立金管理運用独立行政法人に対し、積立金を寄託することにより行うものとする」
2.運用方針(79条の4)(H18.4.1廃止)
 「厚生労働大臣は、積立金の運用に関する基本方針を定めなければならない」
 本条は廃止された。
3. 報告(79条の5)(H18.4.1廃止) 
従来は
 「年金資金運用基金に対し、基本方針に沿った運用に基づく納付金の納付を目的として、積立金を寄託することにより行う」とあった。
 ⇒年金資金運用基金は年金積立金管理運用独立行政法人に。
 
⇒運用のための基本方針、社会保障審議会への報告の義務は廃止された。
算定基礎
日数
の短縮
1.定時決定(21条)(H18.7.1施行)
 「社会保険庁長官は、被保険者が毎年7月1日現に使用される事業所において同日前3月間(報酬支払の基礎日数が17日未満である月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を決定する」
 
 18年7月1日以降に実施する部分については、
 「報酬の支払基礎日数17日以上ある月」を対象   
  従来は、20日以上
 背景
@「通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであること」(S55.6.6各都道府県保険課長あて内かん)
A週休2日制が普及してきたこと
ことから、Tomeさんが推測すると、通常の労働者の1週平均労働日は5.2日、1月あたりは22.3日。この4分の3とすると16.7日。
 注意 月給制の者の賃金支払基礎日数は1月の暦日数である。あくまでも日給、時間給等の者に対して適用される。
 
 健康保険法についても同様の改正有り。
施行日はH18年7月1日であるが、18年7月10日までに提出する定時決定のための「報酬月額算定基礎届」には、4月からこのルールを適用しなければならない。
 18年7月1日以降に実施する随時改定、育児休業等終了時の改定についても、4月からこのルールを適用しなければならない。
2.随時改定(23条)(H18.7.1施行)
 「社会保険庁長官は、被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間(各月とも、報酬支払の基礎となった日数が、17日以上でなければならない)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができる」
3.育児休業等終了時の改定(23条の2)(H18.7.1施行)
 「保険者は、育児・介護休業法に規定する育児休業、育児休業の制度に準ずる措置による休業を終了した被保険者が、
 @ 終了した日において育児休業に係る3歳に満たない子を養育する場合において、
 A 事業主を経由して、保険者に申出をしたときは、定時決定の規定にかかわらず
 B 終了日の翌日が属する月以後3月間(終了日の翌日以降、継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払基礎日数が17日未満である月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として
 C 標準報酬月額を改定する」