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労働者、使用者と適用事業 

KeyWords  労働者使用者適用事業・適用除外労働者性判定の例(芸能タレント、訪問介護労働者、在宅勤務者など)
 
 
1 労働者(9条) 
 「この法律で、労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」
 
 労働者性判定の例 
 実務的には、「他人の指揮命令を受けて労働を提供し、その対償として賃金を受けとる者は労働者であり、名称等には捉われずに、実体で判断する」
新聞配達人  (S22.11.27基発400)
 「配達部数に応じて報酬を与えている場合は、単なる請負関係であって、労働関係はなく従って労働者でないと見るを適当と考えるが如何」というお伺いに対して、回答は、
 「配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払形態が請負制になっているだけであって、一般に販売店と配達人との間には、使用従属関係が存在し、配達員も本法の労働者である場合が通例である」 
大工
 
 (S23.12.25基収4281)
 「請負契約であるか、使用従属関係のある雇用契約によるかによって判断する」
生命保険の外交員  (S23.1.9基発13)
 「委任契約に基づき、成績に応じて報酬や経費を受け取る場合は労働者でない。ただし、名称はともあれ実質上、労働関係がある場合は労働者」
競輪選手  (S25.4.24基収4080)
 「参加者に支給される日当等は実費弁償であり、賞金は競争参加の目的物であるから、いずれも労働の対償ではなく、よって労働者ではない 」
芸能タレント  (S63.7.30基収355)
 「所属劇団、事務所との間の労働契約関係の有無による。
 しかし、何人にも替えられないほど当人の個性が大きい、報酬が稼働時間には左右されない、事務所等に時間的に拘束されていないなどいずれにも該当する場合は、労働者ではない」
 有名になれば労働者ではないということ。 詳細はこちらを
法人等の役員   (S23.1.9基発14)
 「法人、団体、組合等の代表者又は執行機関たる者のごとく、事業主体との関係において使用従属の関係に立たない者は労働者でない」
 (S23.3.17基発461)
 「法人の重役で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて9条に規定する労働者である」 
⇒工場長、部長などの職務を遂行し、その対償として賃金を受けとるという労働者的立場にある場面に限り労働者であり、他の一般の労働者と全く同じ権利があるわけではない。
 「業務執行権を持たないで賃金を受ける」の判定は、意外のほか難しく、取締役非設置会社(取締役が1人でもよい会社)においては、取締役は原則的には業務執行権(会社の全体又は一部の部門に対して指揮命令権を有して業務を行う権利)を有していると考えてよいが、取締役設置会社(取締役が3年以上の会社)においては、業務執行取締役に選定されたものだけが、業務執行権を有する」 
訪問介護労働者  (H16.08.27基発0827001)
  「訪問介護事業に使用される者であって、介護保険法に定める訪問介護に従事する訪問介護員若しくは介護福祉士、又は、老人、障害者等の居宅において、入浴、食事等の介護やその他の日常生活上の世話を行う業務に従事するものをいう。したがって、介護保険法の適用の有無にかかわらないものであること。
 この訪問介護の業務に従事する者の中には、委託、委任等の呼称が用いられている場合もあるが、労働者に該当するかどうかについては、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断すること。なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法9条の労働者に該当するものと考えられること」
在宅勤務者   (H20.07.28 基発0728001)
 「労働者が在宅勤務(労働者が、労働時間の全部又は一部について、自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう)を行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることとなる。
 (1)労働基準法上の注意点
ア:労働条件の明示(労働基準法施行規則5条2項)
  使用者は、労働契約を締結する者に対し在宅勤務を行わせることとする場合においては、労働契約の締結に際し、就業の場所として、労働者の自宅を明示しなければならない。
イ:労働時間
・在宅勤務については、事業主が労働者の私生活にむやみに介入すべきではない自宅で勤務が行われ、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、一定の場合には、労働時間を算定し難い働き方として、労働基準法38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制を適用することができる。
・在宅勤務についてみなし労働時間制が適用される場合は、在宅勤務を行う労働者が就業規則等で定められた所定労働時間により勤務したものとみなされることとなる。
 業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該必要とされる時間労働したものとみなされ、労使の書面による協定があるときには、協定で定める時間が通常必要とされる時間とし、当該労使協定を労働基準監督署長へ届け出ることが必要となる。
・在宅勤務についてみなし労働時間制を適用する場合であっても、労働したものとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働に係る三六協定の締結、届出及び時間外労働に係る割増賃金の支払いが必要となり、また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要となる。
・このようなことから、労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、事業主はそれをもって在宅勤務を行う労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて所定労働時間や業務内容等について改善を行うことが望ましい。
(2)労働安全衛生法上の注意点
  事業者は、通常の労働者と同様に、在宅勤務を行う労働者についても、その健康保持を確保する必要があり、必要な健康診断を行うとともに(労働安全衛生法66条1項)、在宅勤務を行う労働者を雇い入れたときは、必要な安全衛生教育を行う必要がある(労働安全衛生法59条1項)
 また、事業者は在宅勤務を行う労働者の健康保持に努めるに当たって、労働者自身の健康を確保する観点から、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等に留意する必要があり、労働者に対しその内容を周知し、必要な助言を行うことが望ましい。
(3)労働者災害補償保険法上の注意点
 労働者災害補償保険においては、業務が原因である災害については、業務上の災害として保険給付の対象となる。
 したがって、自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない。
インターンシップにおける学生  通達(H9.09.18基発636)
 「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある」
 ここで「学生インターシップ」とは、学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと
組合専従職員の労働関係    通達(S24.6.13基収1073)
 「会社からは給料を受けず、その所属する組合より給料を受ける組合専従職員の労働関係は、会社との間にはなくて組合との間にあり、法の適用を受けると思われるが如何」という問に対する回答は、「組合専従職員と使用者との基本的な法律関係は、労働協約その他により労使の自由に定めるところによるが、使用者が専従職員に対し在籍のまま労働提供の義務を免除し、労働組合の事務に専従することを認める場合には、労働基準法上当該会社との労働関係は存続するものと解される」 
判例  研修医 最高裁判例[未払賃金請求事件(H17.06.03)、
 「研修医は,医師国家試験に合格し,医籍に登録されて,厚生大臣の免許を受けた医師であって、医療行為を業として行う資格を有しているものであるところ,医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。
 この臨床研修は,医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり,教育的な側面を有しているが,そのプログラムに従い,臨床研修指導医の指導の下に,研修医が医療行為等に従事することを予定している。
 そして,研修医が医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべき」
 トラック所有者による自営運送業務に従事していた者 最高裁判例[療養補償給付等不支給処分取消](H08.11.28)
 「被告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。
 そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。
 そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである」
 労働契約なき労働関係 労働法コンメンタール「労働基準法」上のページ132
 「明確な契約関係がなくても、事業に「使用」され、その対償として「賃金」が支払われる者であれば、労働基準法9条の労働者であり、労働基準法の適用がある」
 参考:労働組合法にいう「労働者」(労働組合法3条)
 「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう」
 よって労組法では土地、資本、生産設備などを持たず、体と頭だけが頼りの者であれば、就業中、失業中にかかわらず労働者である。

2 使用者(10条)
 「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」
 労働者に関する事項とは、
  「人事、給与、厚生等の労働条件の決定や労務管理を行いこと、あるいは業務命令を出したり指揮監督を行うことなどのすべてが含まれる」
  使用者の意義 (S22.9.13発基17、10条関係)
 「使用者とは、労基法各条の義務についての履行の責任者をいい、その認定は部長、課長等の形式にとらわれることなく、各事業において本法各条の義務について実質的に一定の権限を与えられているか否かによるが、かかる権限が与えられておらず、単に上司の命令の伝達者にすぎぬ場合は使用者とみなされないこと」 

 すなわち使用者とは、
 @事業主(法人であれば法人そのもの、個人事業であれば事業主(オーナー))
 A事業の経営担当者(代表取締役、取締役、理事など)
 B労働者に関する事項について、事業主のために行為をする者(人事、労務などで実質的権限のある者。人事部長、労務課長などの名称ではなく実態で判断する)
 要するに、
・労基法は労働者保護を基礎においていることから、労基法遵守について義務を持っている者すべてを使用者としてとらえている。
・適用する労基法の規定に応じて、同一人が使用者になったり、労働者になったりすることもあり得る
 この点の使用者と労働者との関係について、労働法コンメンタール「労働基準法(上)P153」(厚生労働省労働基準局編)によれば、
 「10条の使用者は個々の具体的事実においてその実質的責任が何人にあるかによって決まるものであるから、使用者という概念は相対的なものである。
 従って、9条にいう労働者であっても、その人が同時にある事項について権限と責任をもっていれば、その事項については、その者が本条の使用者となる場合がある。
 したがって、10条の使用者は、企業内で比較的地位の高い取締役、工場長、部長、課長等の者から、作業現場監督員、職場責任者等といわれる比較的地位の低い者に至るまで、その権限と責任に応じて、あるいは特定の者のみが、あるいは並列的に複数の者が該当することとなる。
 単に地位の高低のみでは一概に使用者となるかどうかは結論づけられるものではない」
 事業主とは、(労働法コンメンタール「労働基準法(上)P136」(厚生労働省労働基準局編)
 「事業主とは、その事業の経営の主体をいい、個人企業にあってはその企業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものをいう」
   外国人事業主 通達(S43.10.9基収4194)
 「わが国で行われる事業については、事業主又は労働者が外国人であると否とを問わず、法令又は条約に特別の定めがある場合を除き、法の適用がある。
 ただし、外国政府及び国際法によっていわゆる外交特権を有する外交官等については、原則としてわが国の裁判権は及ばない」。
⇒ よって、労基法の適用に当たっては、それが日本人であるか外国人であるか、その外国人の就労が不法であるか否かには左右されない。
 下請負人 (通達(S23.01.09基発14号(10条関係)、S63.03.14基発150号婦発47号)
 「下請負人がその雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するとともに、当該業務を自己の業務として相手方(注文主)から独立して処理するものである限り、注文主と請負関係にあると認められるから、自然人である下請負人が、たとえ作業に従事することかあっても、法9条の労働者ではなく、10条にいう事業主である」
⇒「10条にいう事業主」であれば、10条にいう使用者でもある。
 出向の場合 (通達(S61.6.6基発333号10条関係)
 「出向とは、出向元と何らかの労働関係を保ちながら、出向先との間において新たな労働契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態であり、出向元との関係から在籍型出向と移籍型出向とに分類される」
(1)「在籍型出向は、出向先と出向労働者との間に出向元から委ねられた指揮命令関係ではなく、労働契約関係及びこれに基づく指揮命令関係がある形態である。
@出向先と出向労働者との間に労働契約関係が存するか否かは、出向・派遣という名称によることなく出向先と労働者との間の労働関係の実態により、
・出向先が出向労働者に対する指揮命令権を有していることに加え、
・出向先が賃金の全部又は一部の支払いをすること、
・出向先の就業規則の適用があること、
・出向先が独自に出向労働者の労働条件を変更することがあること
・出向先において社会・労働保険へ加入していること等
 総合的に勘案して判断すること。
A在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対しては、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある。
 すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて、出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである」
(2)「移籍型出向は、出向先との間のみ労働契約関係がある形態であり、出向元と出向労働者との労働契約関は終了している。
 移籍型出向の出向労働者については、出向先との間のみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある」  
 出向元とも労働契約は残っている。
 出向先は出向者との労働契約関係があり、これに基づく指揮命令権も有する。又、賃金の全部又は一部を負担し、出向先の就業規則(労働時間、休日、時間外労働、福利厚生等も含めて)に従わせる。 
 出向契約等に基づき、出向先と出向元事業主の権限と責任に応じて、労基法に基づく使用者責任を負う。
 出向先との間のみに労働契約関係がある。よって、出向先についてのみ、労基法の適用がある。
 労働者派遣の場合
 労働基準法の適用に関する特例(労働者派遣法44条)
 「派遣元事業主に雇用され、派遣先事業主の事業に派遣就業のために派遣されている
労働者であって、派遣中の労働者に関しては、派遣先の事業もまた、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、均等待遇、強制労働の禁止、徒弟の弊害排除の規定を適用する」
 「2項 派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、公民権の保障、労働時間・休憩・休日、時間外・休日労働、深夜業、危険有害業務、年少者、妊産婦、育児時間、生理休暇等の規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定を適用する」

@派遣労働者は派遣元と労働契約を締結しているので、基本的な事項については派遣元事業主が労基法の使用者責任を負う。
Aしかしながら、現場では派遣先事業主が指揮命令権を持って労働させていることもあるので、均等待遇、強制労働の禁止などについては派遣元、派遣先いずれもが使用者責任を
B労働時間・休憩・休日、深夜業、公民権の行使の保障など労働現場に関わる事項については派遣先事業主が使用者責任を負う。
 請負と労働関係(労働法コンメンタール「労働基準法(令和3年版)」上123-124P)
 「請負契約における下請負人は、当該業務を自己の業務として注文主から独立して処理するものである限り、たとえ本人が労務に従事することがあっても、本条(9条)の労働者となることはない。
 たとえば農家又は工場がその事業経営上必要な建物その他の施設を大工に修理させる場合は、一般に請負契約によるので、大工は9条の労働者にはならない。
 しかし、形式上は請負のようなかたちをとっていても、その実体において使用従属関係が認められるときは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は9条の労働者であることになる」
 社会保険労務士
 事務代理の懈怠と罰則の適用について (通達(62.3.26基発169号10条関係)
 「法令の規定により事業主等に申請等が義務づけられている場合において、事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により当該申請等を行わなかった場合には、当該社会保険労務士は、10条にいう「使用者」及び、各法令の両罰規定にいう「代理人、使用人その他の従業者」に該当するものであるので、当該申請等の義務違反の行為者として、各法令の罰則規定及び両罰規定に基づきその責任を問い得る者である」

 
3. 適用事業・適用除外(116条)
 「1項 総則など一部の規定を除き、この法律は、船員法に規定する船員については、適用しない」
 「2項 この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」
 すなわち、
 「労基法は、原則として、同居の親族のみを使用する事業を除いて、労働者を使用するすべての事業に適用される」
 
 「社会経済の変化の中で新たな事業を適用事業として追加することとすると、一時的にも適用漏れが生ずるおそれがあり、また、号別に適用事業を区分して適用する規定が従来に比べて少なくなったこと等の理由により、適用事業の範囲を号別に列記する方式を廃止した」(H11.1.29基発45(号別列記)
 すなわち従来は、適用事業を号別に列記していたが、これは廃止になった。
 ただし、「労働時間、休憩、年少者の取扱等」が業種によって異なることがあるので、業種を号別に表現した表は、別表1としてまだ残っている。
 労働基準法は原則として、場所単位で適用される。
 事業の定義(S22.9.13発基17)
 「事業とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において、相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体をいう。一つの事業であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として、別個の事業とする。
 しかし、同一場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門が存在する場合に、その部門が主たる部門との関連において従事労働者、労務管理等が明確に区別され、かつ、切り離して適用することによって、労基法がより適切に運用できる場合には、その部門を一つの独立の事業とする。たとえば、工場内の診療所、食堂など。
 ただし、場所的に分散していても、規模が著しく小さい場合は、直近上位の機構と一括する」
 同居の親族のみを使用する事業 労働法コンメンタール「労働基準法下P 1015-1075参照))
@事業主と使用されているその他の同居の親族との関係を、一般の場合と同様の労働関係として取り扱うのは適当でないと考えられるので、同居の親族のみを使用する事業は、労働基準法の適用除外とされている。
・親族とは、「民法の規定にいう6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族」
・同居とは、「居住及び生計を一にするもの」
A同居でない親族(いわゆる通いの者)あるいは親族ではない他人を一人でも使用している事業であれば、当然に労働基準法の適用を受ける。
B上記Aの場合において、同居の親族がたとえ形式上労働者として働いている様に見えたとしても、一般には、事業主と利益をともにし、事業主と同じような地位にあると認められ、原則として労働基準法の労働者ではない。
Cただし、「同居の親族のうちの労働者」通達(S54.4.2基発153)によると、
 「同居の親族は、事業主と居住及び生計を一にするものであり、原則として労働基準法上の労働者に該当しないが、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業においては、同居の親族であっても、一般事務又は現場作業等に従事し、かつ次の要件いずれも満たすものについては、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立した労働関係が成立しているとみられるので、労働基準法上の労働者として取扱うものとする」
・業務を行なうにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
・就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等及び賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること」
⇒すなわち、「同居の親族のみを使用する事業」においても、それ以外の者(同居していない親族、あるいは親族ではない者)を(一時的にせよ)使用している場合は、その事業は労基法が適用されることになり、それ以外の者は労基法上の労働者となる。
 さらに、同居の親族についても、上記の労働者性の2要件を満足する者であれば、労基法上の労働者になる。
 家事使用人 労働法コンメンタール「労働基準法下P 1015参照))
@家事使用人については、その労働の態様は、各事業における労働とは相当異なったものであり、各事業に使用される場合と同一の労働条件で律するのは適当でないため、労働基準法の適用除外とされた。
A「家事使用人であるか否かを決定する」に当たっては、
 通達(H11.3.31基発168(家事使用人))によると、
・従事する作業の種類、性質の如何等を勘案して実態により決定すべきものであり、家事一般に従事している者がこれに該当する。
・法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者も家事使用人である。(法人から賃金を得ていても、法人に労働を提供しているわけげはない。また、役職員の家族を使用者として、これに一定の義務を課すことはできない)
・個人家庭における家事を事業として請負うものに雇われて、その指揮命令の下に当該家事を行う者は家事使用人に該当しない(家事代行を業とする使用者の労働者となる)
・家政婦紹介所の紹介などにより、個人家庭に雇用されて、家事、育児などの作業に従事する者は、家事使用人である。

 
4 国及び公共団体についての適用(112条)
  「この法律及びこの法律に基づいて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする」
 ただし、
 「労働基準法並びにこれらの法律に基づいて発せられる命令は、2条の一般職に属する職員には、これを適用しない」(国家公務員法附則16条)
 
 国家公務員⇒ 一般職は適用除外、ただし行政執行法人(印刷局、造幣局、国立公文書館、統計センター等)の国家公務員には適用
 地方公務員一般職 ⇒ 原則適用(一部適用除外の項目あり)
 地方公務員特別職 ⇒ 適用