発展講座 労働者災害補償保険法

S3C 心理的負荷による精神障害の認定基準  (R02.05.29基発0529-1、H23.12.26基発1226-1号
血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準
(R03.09.14基発0914-1)(脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準(H13.12.12基発1063)の改定版)
上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(H09.02.03基発65) 
 心理的負荷による精神障害の認定基準(R02.05.29基発0529-1)
































































 対象疾病
 本認定基準で対象とする疾病は、国際疾病分類ICD-10 の5章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを除く。
 対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主としてICD-10のF2からF4に分類される精神障害(統合失調症・統合失調症型障害・妄想性障害、気分(感情)障害、神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害)である。
 なお、器質性の精神障害及び有害物質に起因する精神障害(F0及びF1に分類されるもの)については、頭部外傷、脳血管障害、中枢神経変性疾患等の器質性脳疾患に付随する疾病や化学物質による疾病等として認めら れるか否かを個別に判断する。
 また、いわゆる心身症は、本認定基準における精神障害には含まれない。
⇒ここで、国際疾病分類とは、死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関によって公表された分類であって、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較などに利用されている。
 認定要件
 次の1、2及び3のいずれの要件も満たす対象疾病は、労働基準法施行規則別表1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。
(1)対象疾病を発病していること。
(2)対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
(3)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
 また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。
 認定要件に関する基本的な考え方
 対象疾病の発病に至る原因の考え方は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし、 逆に脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレ ス−脆弱性理論」に依拠している。
 このため、心理的負荷による精神障害の業務起因性を判断する要件としては、対象疾病の発病の有無、発病の時期及び疾患名について明確な医学的判断があることに加え、当該対象疾病の発病の前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められることを掲げている。
 この場合の強い心理的負荷とは、精神障害を発病した労働者がその出来事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されるものであり、「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいう。
 さらに、これらの要件が認められた場合であっても、明らかに業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には、業務起因性が否定されるため、認定要件を上記第2のとおり定めた。
 認定要件の具体的判断
4.1 発病の有無等の判断
 対象疾病の発病の有無、発病時期及び疾患名は、「ICD−10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン」に基づき、主治医の意見書や診療録等の関係資料、請求人や関係者からの聴取内容、その他の情報から得られた認定事実により、医学的に判断される。
 特に発病時期については特定が難しい場合があるが、そのような場合にもできる限り時期の範囲を絞り込んだ医学意見を求め判断する。 
 なお、強い心理的負荷と認められる出来事の前と後の両方に発病の兆候と理解し得る言動があるものの、どの段階で診断基準を満たしたのかの特定が困難な場合には、出来事の後に発病したものと取り扱う。
 精神障害の治療歴のない事案については、主治医意見や診療録等が得られず発病の有無の判断も困難となるが、この場合にはうつ病エピソードのように症状に周囲が気づきにくい精神障害もあることに留意しつつ関係者からの聴取内容等を医学的に慎重に検討し、診断ガイドラインに示されている診断基準を満たす事実が認められる場合又は種々の状況から診断基準を満たすと医学的に推定される場合には、当該疾患名の精神障害が発病したものとして取り扱う。
4.2 業務による心理的負荷の強度の判断
 認定要件のうち、2の「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」とは、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による出来事があり、当該出来事及びその後の状況による心理的負荷が、客観的に対象疾病を発病させるおそれのある強い心理的負荷であると認められることをいう。
 このため、業務による心理的負荷の強度の判断に当たっては、精神障害発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務によるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に把握し、それらによる心理的負荷の強度はどの程度であるかについて、別表1「業務による心理的負荷評価表」を指標として「強」、「中」、「弱」の三段階に区分する。
 具体的には次のとおり判断し、総合評価が「強」と判断される場合には、上記2の(2)の認定要件を満たすものとする。
(1)「特別な出来事」該当する出来事がある場合:発病前おおむね6か月の間に、別表1の「
特別な出来事」
に該当する業務による出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価を「強」と判断する。
(2)「特別な出来事」に該当する出来事がない場合:「特別な出来事」に該当する出来事がない場合は、以下の手順により心理的負荷の総合評価を行い、「強」、「中」又は「弱」に評価する。(以下略)
(3)出来事が複数ある場合の全体評価:対象疾病の発病に関与する業務による出来事が複数ある場合の心理的負荷の程度は、次のように全体的に評価する。。(以下略)
(4)時間外労働時間数の評価
 別表1には、時間外労働時間数(週40時間を超える労働時間数)を指標とする基準を次のとおり示しているので、長時間労働が認められる場合にはこれにより判断する。
 なお、業務による強い心理的負荷は、長時間労働だけでなく、仕事の失敗、役割・地位の変化や対人関係等、様々な出来事及びその後の状況によっても生じることから、この時間外労働時間数の基準に至らない場合にも、時間数のみにとらわれることなく、心理的負荷の強度を適切に判断する。
ア:極度の長時間労働による評価
 極度の長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となることから、発病日から起算した直前の1か月間におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」とする。
 なお、別表(心理的負荷評価表)によれば「極度の長時間労働による評価」に関して、「発病日直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(3週間におおむね120時間時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待ち時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く)ば場合は、総合評価を「強」とする。としている。
イ:長時間労働の「出来事」としての評価
 長時間労働以外に特段の出来事が存在しない場合には、長時間労働それ自体を「出来事」とし、新たに設けた「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」という「具体的出来事」に当てはめて心理的負荷を評価する。
ウ:恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価
 出来事に対処するために生じた長時間労働は、心身の疲労を増加させ、ストレス対応能力を低下させる要因となることや、長時間労働が続く中で発生した出来事の心理的負荷はより強くなることから、出来事自体の心理的負荷と恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)を関連させて総合評価を行う。
 出来事の前の恒常的な長時間労働の評価期間は、発病前おおむね6か月の間とする。
(5)出来事の評価の留意事項
 業務による心理的負荷の評価に当たっては、次の点に留意する。
@ 業務上の傷病により6か月を超えて療養中の者が、その傷病によって生じた強い苦痛や社会復帰が困難な状況を原因として対象疾病を発病したと判断される場合には、当該苦痛等の原因となった傷病が生じた時期は発病の6か月よりも前であったとしても、発病前おおむね6か月の間に生じた苦痛等が、ときに強い心理的負荷となることにかんがみ、特に当該苦痛等を出来事「(重度の)病気やケガをした」とみなすこと。
A いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とすること。
B生死にかかわる業務上のケガをした、強姦に遭った等の特に強い心理的負荷となる出来事を体験した者は、その直後に無感覚等の心的まひや解離等の心理的反応が生じる場合があり、このため、医療機関への受診時期が当該出来事から6か月よりも後になることもある。その場合には、当該解離性の反応が生じた時期が発病時期となるため、当該発病時期の前おおむね6か月の間の出来事を評価すること。
C本人が主張する出来事の発生時期は発病の6か月より前である場合であっても、発病前おおむね6か月の間における出来事の有無等についても調査し、例えば当該期間における業務内容の変化や新たな業務指示等が認められるときは、これを出来事として発病前おおむね6か月の間の心理的負荷を評価すること。
4.3 業務以外の心理的負荷及び個体要因の判断
 認定要件のうち、3の「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」とは、次の@又はAの場合をいう。
@業務以外の心理的負荷及び個体側要因が認められない場合
A業務以外の心理的負荷又は個体側要因は認められるものの、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが医学的に明らかであると判断できない場合(以下略)
5  精神障害の悪化の業務起因性
 業務以外の原因や業務による弱い心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合、悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められることをもって直ちにそれが当該悪化の原因であるとまで判断することはできず、原則としてその悪化について業務起因性は認められない。
 ただし、別表1の「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については、その「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因であると推認し、悪化した部分について、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。
 上記の「治療が必要な状態」とは、実際に治療が行われているものに限らず、医学的にその状態にあると判断されるものを含む。
8  その他
1.自殺について:業務によりICD―10のF0からF4に分類される精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認める。その他、精神障害による自殺の取扱いについては、従前の例(平成11年9月14日付け基発第545号)による。
2.セクシュアルハラスメント事案の留意事項:セクシュアルハラスメントが原因で対象疾病を発病したとして労災請求がなされた事案の心理的負荷の評価に際しては、特に次の事項に留意する。(以下、略)
 特徴
・分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)を定めた、
・いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした
・これまで全ての事案について必要としていた精神科医の合議による判定を、判断が難しい事案のみに限定した。
 
 血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準 (R03.09.14基発0914-1
 詳細版
 改正概要は、こちらを参照ください(厚生労働省ホームページ引用)
 改定前は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」(H13.12.12基発1063) 


























































































基本的な考え方
 脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)は、その発症の基礎となる動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤、心筋変性等の基礎的病態(以下「血管病変等」という)が長い年月の生活の営みの中で徐々に形成,進行及び増悪するといった自然経過をたどり発症するものである。 
 しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合があり、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は、その発症に当たって業務が相対的に有力な原因であると判断し、業務に起因する疾病として取り扱う。
 このような脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷及び長期間にわたる疲労の蓄積を考慮する。
 これらの業務による過重負荷の判断に当たっては、労働時間の長さ等で表される業務量や、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する必要がある。 
対象疾病
 
本認定基準は、次に掲げる脳・心臓疾患を対象疾病として取り扱う。
 脳血管疾患として、脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
 虚血性心疾患等として、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、重篤な心不全(注:新規追加),大動脈解離
認定要件 
 次の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務に起因する疾病として取り扱う。
(1)発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過剰な業務(長時間の加重業務)に就労したこと。
(2)発症に近接した時期において、特に過重な業務(短期間の過重業務)に就労したこと。
(3)発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(以下「異常な出来事」という)に遭遇したこと。
認定要件の具体的判断概要)
4.1
.疾患名及び発症時期の特定
 認定要件の判断に当たっては、まず疾患名を特定し、対象疾病に該当することを確認すること。
4.2 長期間の過重業務
(1) 疲労の蓄積の考え方
 恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。
 このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するに当たっては、発症前の一定期間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする。
(2) 特に過重な業務
 特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいうものであり、日常業務に就労する上で受ける負荷の影響は、血管病変等の自然経過の範囲にとどまるものである。
 ここでいう日常業務とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。
(3) 評価期間
 発症前の長期間とは、発症前おおむね6か月間をいう。
 なお、発症前おおむね6か月より前の業務については、疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり、付加的要因として考慮すること。
(4)過重負荷の有無の判断
 著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
 ここでいう同種労働者とは、当該労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいい、基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できるものを含む。
 業務の過重性の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、以下に掲げる負荷要因について十分検討すること。
@労働時間
 疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、
・ 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。
A労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価
 労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断すること。
・上記の@の水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況(勤務時間の不規則性、事業場外における移動を伴う業務、心理的負荷を伴う業務,身体的負荷を伴う業務、作業環境)を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できること。
 なお、ここでいう時間外労働時間数は、1週間当たり40時間を超えて労働した時間数である。
B労働時間以外の負荷要因
・勤務時間の不規則性
  拘束時間の長い勤務:拘束時間とは、労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束されている時間(始業から終業までの時間)をいう。拘束時間の長い勤務については、拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)
 休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
・事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務など)
・心理的負荷を伴う業務
 心理的負荷を伴う業務については、別表1及び別表2に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等について、負荷の程度を評価する視点により検討し、評価すること。
 ここで、「別表1」は日常的に心理的負荷を伴う業務(たとえば常に自分あるいは他人の生命、財産が脅かされる危険性を有する業務、 危険回避責任がある業務、 人命や人の一生を左右しかねない重大な判断や処置が求められる業務、極めて危険な物質を取り扱う業務等)、
 「別表2」は心理的負荷を伴う具体的出来事(たとえば、事故や災害の体験、仕事の失敗・過重な責任の発生等、役割・地位の変化等、パワーハラスメントを受けた等)
・身体的負荷を伴う業務
 重量物の運搬作業、掘削作業などの身体的負荷が大きい作業や、日常業務と質的に著しく異なる場作業など)の観点から検討し、評価すること。
・作業環境
 温度環境や騒音など、長期間の過重業務の判断に当たって付加的に評価すること。
4.3 短期間の過重業務
(1) 特に過重な業務
 特に過重な業務の考え方は、前記の長期間の過重業務2(2)と同様である。
(2) 評価期間
 発症に近接した時期とは、発症前おおむね1週間をいう。
 ここで、発症前おおむね1週間より前の業務については、原則として長期間の負荷として評価するが、発症前1か月間より短い期間のみに過重な業務が集中し、それより前の業務の過重性が低いために、長期間の過重業務とは認められないような場合には、発症前1週間を含めた当該期間に就労した業務の過重性を評価し、それが特に過重な業務と認められるときは、短期間の過重業務に就労したものと判断する。
(3)  過重負荷の有無の判断
 特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
 業務の過重性の具体的な評価に当たっては、以下に掲げる負荷要因について十分検討すること。
@ 労働時間
 労働時間の長さは、業務量の大きさを示す指標であり、また、過重性の評価の最も重要な要因であるので、評価期間における労働時間については十分に考慮し、発症直前から前日までの間の労働時間数、発症前1週間の労働時間数、休日の確保の状況等の観点から検討し、評価すること。
 その際、
・発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合、
・発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合等には、業務と発症との関係性が強いと評価できることを踏まえて判断すること
A 労働時間以外の負荷要因
 労働時間の長さのみで過重負荷の有無を判断できない場合には、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して判断する必要がある。
 労働時間以外の負荷要因については、長期間の加重業務の項で記載した勤務時間の不規則性,心理的負荷を伴う業務、身体的負荷を伴う業務などにおいて各負荷要因ごとに示した観点から検討し、評価すること。
 作業環境について、付加的に考慮するのではなく、他の負荷要因と同様に十分検討すること。
4.4 異常な出来事
(1) 異常な出来事
 異常な出来事とは、当該出来事によって急激な血圧変動や血管収縮等を引き起こすことが医学的にみて妥当と認められる出来事であり、具体的には次に掲げる出来事である。
 ・極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす事態
 ・急激で著しい身体的負荷を強いられる事態
 ・急激で著しい作業環境の変化
(2) 評価期間
 異常な出来事と発症との関連性については、通常、負荷を受けてから24時間以内に症状が出現するとされているので、発症直前から前日までの間を評価期間とする。
(3) 過重負荷の有無の判断
 異常な出来事と認められるか否かについては、出来事の異常性・突発性の程度、予測の困難性、事故や災害の場合にはその大きさ、被害・加害の程度、緊張、興奮、恐怖、驚がく等の精神的負荷の程度、作業強度等の身体的負荷の程度、気温の上昇又は低下等の作業環境の変化の程度等について検討し、これらの出来事による身体的、精神的負荷が著しいと認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
4.5 その他
 基礎疾患を有する者についての考え方
 器質的心疾患(先天性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等)を有する場合についても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって自然経過を超えて著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連が認められるものであること。
ここで、「著しく重篤な状態に至った」とは、対象疾病を発症したことをいう。
4.6  複数業務要因災害
  労働者災害補償保険法に定める複数業務要因災害による「業務起因性」を「二以上の事業の業務起因性」と解した上で、本認定基準に基づき、認定要件を満たすか否かを判断する。
 その上で、前記4の2ないし4の4に関し以下に規定した部分については、これにより判断すること。
1 二以上の事業の業務による「長期間の過重業務」及び「短期間の過重業務」の判断
 前記第4の2の「長期間の過重業務」及び同3の「短期間の過重業務」に関し、業務の過重性の検討に当たっては、異なる事業における労働時間を通算して評価する
 また、労働時間以外の負荷要因については、異なる事業における負荷を合わせて評価する。
2 二以上の事業の業務による「異常な出来事」の判断
 前記第4の4の「異常な出来事」に関し、これが認められる場合には、一の事業における業務災害に該当すると考えられることから、一般的には、異なる事業における負荷を合わせて評価することはないものと考えられる。
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   上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準 (H09.02.03基発65)












































































  認定基準
1  対象とする疾病
 本認定基準が対象とする疾病は、上肢等に過度の負担のかかる業務によって、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手及び指に発生した運動器の障害(上肢障害という)である。
 上肢障害の診断名は多様なものとなることが考えられるが、代表的なものを例示すれば、上腕骨外(内)上顆炎、肘部管症候群、回外(内)筋症候群、手関節炎、腱炎、腱鞘炎、手根管症候群、書痙、書痙様症状、頸肩腕症候群などがある。
2 認定要件
 次のいずれの要件も満たし、医学上療養が必要であると認められる上肢障害は、労働基準法施行規則別表第1の2第3号4又は5に該当する疾病として取り扱うこと。
(1)上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。
(2)発症前に過重な業務に就労したこと。
(3)過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められること。
⇒労働基準法施行規則別表第1の2第3号4:電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸けい部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
⇒同5:これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病 
 認定要件の運用基準
(1)「上肢等に負担のかかる作業」とは、次のいずれかに該当する上肢等を過度に使用する必要のある作業をいう。
・上肢の反復動作の多い作業
・上肢を上げた状態で行う作業
・頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
・上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
(2)「相当期間」とは、1週間とか10日間という極めて短期的なものではなく、原則として6か月程度以上をいう。
(3)「過重な業務」とは、上肢等に負担のかかる作業を主とする業務において、医学経験則上、上肢障害の発症の有力な原因と認められる業務量を有するものであって、原則として次の(1)又は(2)に該当するものをいう。
@同一事業場における同種の労働者(同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者をいう)と比較して、おおむね10%以上業務量が増加し、その状態が発症直前3か月程度にわたる場合
A業務量が一定せず、例えば次のイ又はロに該当するような状態が発症直前3か月程度継続している場合
イ:業務量が1か月の平均では通常の範囲内であっても、1日の業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの
ロ:業務量が1日の平均では通常の範囲内であっても、1日の労働時間の3分の1程度にわたって業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの
3.認定に当たっての留意事項
1  認定に当たっての基本的な考え方について
・上肢作業に伴う上肢等の運動器の障害は、加齢や日常生活とも密接に関連しており、その発症には、業務以外の個体要因(例えば年齢、素因、体力等)や日常生活要因(例えば家事労働、育児、スポーツ等)が関与している。
 また、上肢等に負担のかかる作業と同様な動作は、日常生活の中にも多数存在している。
 したがって、これらの要因をも検討した上で、上肢作業者が、業務により上肢を過度に使用した結果発症したと考えられる場合には、業務に起因することが明らかな疾病として取り扱うものである。
2  診断名について
・上肢障害の診断名は、多様なものとなることが考えられることから、対象とする疾病に例示した以外の疾病についても、上肢障害に該当するものがあることに留意すること。
 なお「頸肩腕症候群」は、出現する症状が様々で障害部位が特定できず、それに対応した診断名を下すことができない不定愁訴等を特徴とする疾病として狭義の意味で使用しているものである。
 また、頸部から肩、上肢にかけて何らかの症状を示す疾患群の総称としての「頸肩腕症候群」については、診断法の進歩により病像をより正確にとらえることができるようになったことから、できる限り症状と障害部位を特定し、それに対応した診断名となることが望ましいが、障害部位を特定できない「頸肩腕症候群」を否定するものではないこと
3  過重な業務の判断について
「過重な業務」の判断に当たっては、発症前の業務量に着目して記の第2の3の要件を示したが、業務量の面から過重な業務とは直ちに判断できない場合であっても、通常業務による負荷を超える一定の負荷が認められ、次のイからホに掲げる要因が顕著に認められる場合には、それらの要因も総合して評価すること。
イ 長時間作業、連続作業
ロ 他律的かつ過度な作業ペース
ハ 過大な重量負荷、力の発揮
ニ 過度の緊張
ホ 不適切な作業環境
4  上肢障害の発症までの作業従事期間について
 上肢障害の発症までの作業従事期間については、原則として6か月程度以上としたが、腱鞘炎等については、作業従事期間が6か月程度に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に過度の負担がかかった場合には、発症することがあるので留意すること。
5  類似疾病との鑑別について
 上肢障害には、加齢による骨・関節系の退行性変性や関節リウマチ等の類似疾病が関与することが多いことから、これが疑われる場合には、専門医からの意見聴取や鑑別診断等を実施すること。
 なお、上肢障害と類似の症状を呈する疾病としては、次のものを原因とする場合が考えられるが、これらは上肢障害には該当しない。しかしながら、これらに該当する疾病の中には、上肢障害以外の疾病として、別途業務起因性の判断を要するものもあることに留意すること。
・頸・背部の脊椎、脊髄あるいは周辺軟部の腫瘍
・内臓疾患に起因する諸関連痛
・類似の症状を呈し得る精神医学的疾病
・頭蓋内疾患
6  その他
 一般に上肢障害は、業務から離れ、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行い就業すれば、症状は軽快する。
 また、適切な療養を行うことによって概ね3か月程度で症状が軽快すると考えられ、手術が施行された場合でも一般的におおむね6か月程度の療養が行われれば治ゆするものと考えられるので留意すること