17年度 法改正トピックス(労働組合法に関連する主要改正点) | ||||||||
労働組合法(趣旨、労働委員会、不当労働行為の審査手続、訴訟、雑則)、労働関係調整法、 個別労働関係紛争解決促進法 |
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労働組合法 | ||||||||
趣旨 |
労働委員会が行う不当労働行為事件の審査については、審査期間が著しく長期化しており、また、救済命令等に対する取消率についても高い水準となっている。 このような状況を踏まえ、今般の労働組合法の改正は、労使間の対等な交渉を可能とするための基盤を確保するという不当労働行為審査制度本来の趣旨が実現できるよう、不当労働行為事件の審査の迅速化及び的確化を図る観点から、労働委員会における審査の手続及び体制の整備等の措置を講ずることとした。(H16.12.1政発第1201001号) |
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改正後 | 改正ポイント | |||||||
労働委員会 |
1.都道府県労働委員会 「19条 労働委員会は、使用者を代表する者、労働者を代表する者及び公益を代表する者各同数をもって組織する」(改正なし) 「同2項 労働委員会は、中央労働委員会、船員中央労働委員会、都道府県労働委員会及び船員地方労働委員会とする」 「19条の12 都道府県知事の所轄の下に、都道府県労働委員会を置く」 |
地方労働委員会から「都道府県労働委員会」へ 都道府県労委が、不当労働行為事件等の処理について地域の実情に応じた対応ができるようにするため。 |
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2.合議体による審査等(24条の2) 「中央労働委員会は、会長が指名する公益委員5人をもって構成する合議体で、審査等を行う」 「同2項 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、公益委員の全員をもって構成する合議体で、審査等を行う。(たとえば、合議体が、法令の解釈適用について、その意見が前に中央労働委員会のした第5条第1項若しくは第11条第1項又は第27条の12第1項 の規定による処分に反すると認めた場合など)」 「同3項 都道府県労働委員会は、公益委員の全員をもって構成する合議体で、審査等を行う。ただし、条例で定めるところにより、会長が指名する公益委員5人又は7人をもって構成する合議体で、審査等を行うことができる」 |
新設 労働委員会が発する命令は、公益委員全員の合議により決定することとされているが、中労委では15人である等公益委員の数が多いため、機動的に、かつ充実した合議を行うことができるようにした。 |
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不当労働行為 の審査手続 |
1.審査の計画(27条の6) 「労働委員会は、審問開始前に、当事者双方の意見を聴いて、審査の計画を定めなければならない」 「2項 前項の審査の計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
「27条の18 労働委員会は、迅速な審査を行うため、審査の期間の目標を定めるとともに、目標の達成状況その他の審査の実施状況を公表するものとする」 |
審査手続については、従来は「中央労働委員会が定める手続規則による」とあったものを、審査の迅速化及び的確化を図る観点から全面的に見直され、法文上で明確化された。 | ||||||
審問開始前に予め争点及び証拠の整理を行い、その結果に基づいて、審問や命令の作成を計画的に行い得るようにした。また、当事者双方の意見を聴くことにより、事実認定に必要な主張・立証の機会を不当に抑制することのないようにした。 | ||||||||
2.証拠調べ(27条の7) 「労働委員会は、当事者の申立てにより又は職権で、調査を行う手続においては第2号に掲げる方法により、審問を行う手続においては次の各号に掲げる方法により証拠調べをすることができる。
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不当労働行為の有無に関する事実の認定に必要な証拠を速やかに確保するため、審査を担う公益委員の合議により、証人等の出頭又は物件の提出を命ずることができるようにした。 | |||||||
3.不服の申立(27条の10) 「都道府県労働委員会の証人等出頭命令又は物件提出命令を受けた者は、不服があるときは、命令を受けた日から1週間以内(天災その他この期間内に審査の申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内)に、その理由を記載した書面により、中央労働委員会に審査を申し立てることができる」 |
労働委員会がした処分については、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることはできないが、個人の秘密の侵害その他の不利益を及ぼすものであること、取消訴訟において証拠の申出が制限される可能性があることから、再度慎重な判断を求める機会を設けた | |||||||
4.救済命令 「27条の12 労働委員会は、事件が命令を発するのに熟したときは、事実の認定をし、この認定に基づいて、申立人の請求に係る救済の全部若しくは一部を認容し、又は申立てを棄却する命令(救済命令等)を発しなければならない」 「同3項 事実の認定及び救済命令等は、書面によるものとし、その写しを使用者及び申立人に交付しなければならない」 「27条の13 使用者が救済命令等について、救済命令等の交付の日から30日以内に同項の取消しの訴えを提起しないときは、救済命令等は、確定する」 「同2項 使用者が確定した救済命令等に従わないときは、労働委員会は、使用者の住所地の地方裁判所にその旨を通知しなければならない。この通知は、労働組合及び労働者もすることができる」 |
救済命令等の交付、効力の発生、確定等については、従来と同様 | |||||||
労働委員会は、事件が命令を発するのに熟したときは、事実の認定をし、この認定に基づいて、救済命令等を発しなければならないとした。 ここで認定した事実については、その認定の根拠とした証拠が摘示されるべきである。 |
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5.和解(27条の14) 「労働委員会は、審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができる」 「2項 救済命令等が確定するまでの間に当事者間で和解が成立し、当事者双方の申立てがあった場合において、労働委員会が当該和解の内容が当事者間の労働関係の正常な秩序を維持させ、又は確立させるため適当と認めるときは、審査の手続は終了する」 「4項労働委員会は、和解に金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を内容とする合意が含まれる場合は、当事者双方の申立てにより、当該合意について和解調書を作成することができる」 「5項 和解調書は、強制執行に関しては、民事執行法に掲げる債務名義とみなす」 |
当事者の自主的な合意に基づく和解は救済命令等による解決に比べて、労使関係を長期的に安定させる効果が高いことから紛争解決手段としては望ましいものであり、かつ、現実に多くの事件が和解により解決している。 このため、和解による不当労働行為事件の解決を一層促進するため、和解による解決の手続及び法的効果を法律上明確に規定した。 |
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訴訟 |
1.証拠の申出の制限(27条の21) |
新設(救済命令等の取消しの訴えの要件、出訴期間等については、従来と同様) 物件提出命令に応じなかった物件を、取消訴訟で証拠として提出することは、 @ 相手方との関係で信義則に反する。 A 労働委員会及び裁判所における審査等が長期化し、迅速な救済を図る制度の機能や手続の適正さが損なわれることから、これを制限した。 |
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雑則 | 1.中央労働委員会の勧告(27条の22) 「中央労働委員会は、都道府県労働委員会に対し、この法律の規定により都道府県労働委員会が処理する事務について、報告を求め、又は法令の適用その他当該事務の処理に関して必要な勧告、助言若しくはその委員若しくは事務局職員の研修その他の援助を行うことができる」 |
中労委の指示権等に関する規定を削除し、勧告、助言、研修その他の援助を行うことにした。 |
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2.抗告訴訟の取扱い等(27条の23) 「都道府県労働委員会は、その処分に係る行政事件訴訟法の規定による都道府県を被告とする訴訟について、当該都道府県を代表する」 「2項 都道府県労働委員会は、公益委員、事務局長又は事務局の職員でその指定するものに都道府県労働委員会の処分に係る行政事件訴訟法 の規定による都道府県を被告とする訴訟又は都道府県労働委員会を当事者とする訴訟を行わせることができる」 |
都道府県労委を当事者とする訴訟に係る指定代理人について、明確にした。 | |||||||
3.罰則(28条) 「救済命令等の全部又は一部が確定判決によって支持された場合において、その違反があったときは、その行為をした者は、1年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれに併科する」 |
労働委員会の命令 ⇒ 救済命令等 1年以下の禁固若しくは十万円以下の罰金 ⇒ 1年以下の禁錮若しくは百万円以下 |
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1.都道府県労働委員会関連(8条の2) 「中央労働委員会及び都道府県労働委員会に、その行う労働争議の調停又は仲裁に参与させるため、中央労働委員会にあっては厚生労働大臣が、都道府県労働委員会にあっては都道府県知事がそれぞれ特別調整委員を置くことができる」 「2項 中央労働委員会に置かれる特別調整委員は、厚生労働大臣が、都道府県労働委員会に置かれる特別調整委員は、都道府県知事が任命する」 |
地方労働委員会 ⇒ 都道府県労働委員会 |
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1.委員会組織 「7条 委員会は、3人以上政令で定める人数以内の委員をもって組織する」 |
「3人以上12人以内」 ⇒ 「3人以上政令で定める人数以内」 |