20年度 法改正トピックス( パーとタイム労働法に関する主要改正点)

パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
 背景 
  パートタイム労働者は平成18年で約1,200万人(雇用者の2割強)にも達しているが、正社員に比べて極端に待遇が悪い、正社員になかなかなれないなどの多くの問題を抱えている。
 そこでこのたび、パートタイム労働者の雇用環境を改善させるために、大幅な法改正が行われ、20年4月から施行されることになった。
 今回は、厚生年金や健康保険への加入条件の緩和は実現できなかったが、
 ・通常の労働者との均衡のとれた待遇改善措置
 ・通常の労働者への転換の推進措置
 など、多くの事項について前進が見られたようだ。
 20年度労働一般問題の中でも、最重要テーマになると思われる。
  改正後 改正ポイント
   1.目的(1条) (20年4月1日施行)
  「この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間労働者の果たす役割の重要性が増大していることにかんがみ、短時間労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする」
旧1条
  「この法律は、短時間労働者が我が国の経済社会において果たす役割の重要性にかんがみ、短時間労働者について、その適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善に関する措置、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図ることを目的とする」
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  2..事業主等の責務(3条) (20年4月1日施行)
 「事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態等を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換(短時間労働者が雇用される事業所において通常の労働者として雇い入れられること)の推進(以下「雇用管理の改善等」という)に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする」
 「同2項 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する短時間労働者の雇用管理の改善等に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めるものとする」
旧3条
 「事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して、適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずることにより、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする」
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  3.労働条件に関する文書の交付等(6条)(20年4月1日施行)
 「事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法15条1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの特定事項)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(文書の交付等))により明示しなければならない
 「同2項 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法15条1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする」
旧6条
 「事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働時間その他の労働条件に関する事項(労働基準法による労働条件の明示に規定する厚生労働省令で定める事項以外のもの)を明らかにした文書を交付するように努めるものとする」
 
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  4.通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(8条)(20年4月1日新設)
 「事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(職務内容同一短時間労働者)であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの (通常の労働者と同視すべき短時間労働者)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない」  
 通常の労働者と同視すべき短時間の概念についてはこちらを

 

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  5.賃金(9条) (20年4月1日新設)
 「事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金を決定するように努めるものとする」
 「同2項 事業主は、前項の規定にかかわらず、職務内容同一短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主に雇用される期間のうちの少なくとも一定の期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、当該変更が行われる期間においては、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとする」  

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  6.1 教育訓練((10条) (20年4月1日新設)
 「事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く)が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならない」
 「同2項 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする」 
6.2 福利厚生施設(11条) (20年4月1日新設)
 「事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く)に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない」  
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7.通常の労働者への転換(12条) (20年4月1日新設)
 「事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない」
1  通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間労働者に周知すること。
2  通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間労働者に対して与えること。
3  一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 「同2項 国は、通常の労働者への転換を推進するため、前項各号に掲げる措置を講ずる事業主に対する援助等必要な措置を講ずるように努めるものとする」
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8.待遇の決定に当たって考慮した事項の説明(13条) (20年4月1日新設)
 「事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、6条から11条まで及び前条1項の規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない」
 説明義務のある事項についてはこちらを
9.1 苦情の自主的解決(19条) (20年4月1日施行)
 「事業主は、6条1項(文書の交付)、8条1項(差別的取扱いの禁止)、10条1項(教育訓練)、11条(福利厚生施設)、12条1項(通常の労働者への転換)及び13条(待遇の決定に当たって考慮した事項の説明)に定める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関)に対し当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めるものとする」  
9.2 紛争の解決の促進に関する特例(20条) (20年4月1日新設)
 「前条の事項についての短時間労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争解決促進4条、5条及び12条から19条までの規定は適用せず、次条から24四条までに定めるところによる」  
9.3 紛争の解決の援助(21条) (20年4月1日新設)
 「都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる 」
  「同2項 事業主は、短時間労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」
9.4 調停の委任(22条) (20年4月1日新設)
 「都道府県労働局長は、20条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争解決促進による紛争調整委員会に調停を行わせるものとする」  
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