基礎講座 雇用保険法

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 目的  
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1.失業保険法:
 日本国憲法27条は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」とあり、国民には勤労権を補償し、国はこれを実現するために出来る限りの努力をしなければならない同義的責任があると規定している。
 雇用保険法の前身である失業保険法は、これを実現する手段の一つとして、昭和22年12月1日に制定された。
 その目的は、
 「被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ること」(失業保険法1条)

2.雇用保険法:
 失業保険法の機能をさらに発展させた雇用保険法は昭和49年12月28日に制定され、同時に失業保険法は廃止となった。
 機能強化された主なものは
 @中高年齢者等就職の困難な者も含めて、失業補償機能の一層の強化。
 A失業の予防機能などの強化。

3.保険制度:
 保険制度とは、事業主、被保険者(労働)、国が普段から、費用を負担して積立ておき、万が一保険事故(たとえば失業)が発生したときに、その者に保険給付(たとえば、基本手の支給)を、保険者(国)の認定により行うという制度のこと。
 このような保険制度について学ぶべきことは、
・保険者(保険制度を管理運営するもの)は誰か
・被保険者(その人の保険事故に対して、給付が受けられる)は誰か
・保険料は誰がどのように負担するか
・保険事故の範囲・給付を受けられる条件は何か、また給付額はいくらか
 などなどである。
 

1.目的(1条)
 「雇用保険は、労働者が失業した場合、及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、必要な給付を行うほか、
 労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、
 あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする」

 事業(3条) 
 「雇用保険は、1条の目的を達成するため、失業等給付を行うほか、雇用安定事業及び能力開発事業を行うことができる」

 労働者とは
 労働基準法による労働者とすると、失業したとたんに労働者ではなくなることになる。これについては、
 「雇用保険法における労働者については、明文の規定はないが、事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者、及び事業主に雇用されることによって生活しようとする者であって現在その意に反して就業することができないものをいうこととされている」(雇用保険法(コンメンタール)労務行政社P281)
⇒労基法より労組法に近いが、失業者であっても事業主に雇用されようとする意思と能力がないと労働者とはいわない。
 失業とは(4条3項)
 「
失業とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう」
⇒就職しようと自らが積極的に求職活動を行わないと、失業とはいわない。
⇒能力には、体力(療養や出産等のため職に就けない者はだめ)、環境(育児、介護に忙殺される場合などはだめ)を含む。
 雇用保険法の目的
 目的条文だけだとややわかりにくいが、

失業等
給付
 以下のような場合に、必要な失業等給付を行なって、労働者の生活及び雇用の安定、求職活動の容易化と就職の促進を図る。
@失業した場合:
 求職者給付
 就職促進給付
A雇用継続が困難になり、このままではやがては失業してしまう恐れがある場合:雇用継続給付
 たとえば、
 ・高年齢を理由に賃金が切り下げられた(高年齢雇用継続給付)
 ・育児・介護休業を理由に賃金の支給がストップしたりした(育児休業給付、介護休業給付)
B労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合:教育訓練給付 
二事業  以下のような雇用保険二事業を行って、労働者の職業の安定に役立てる。
@失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大を図る事業:雇用安定事業
A労働者の能力の開発・向上を図る事業:能力開発事業、就職支援法事業。
 職業の安定とは
 「労働者がその有する能力に適合した職業に就き、安んじてその職業にいそしむことをいう。その能力に適合しない職業に就いている場合は、職業の安定が確保されているということはできない」(雇用保険法(コンメンタール)労務行政社P283)  
 


 被保険者(4条1項)
 「この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であって、6条各号に掲げる者(適用除外者)以外のものをいう」

 被保険者とは、適用事業に雇用される労働者であって、かつ、適用除外者でないものをいう。
 よって、被保険者かどうかは、以下の3点に照らしてチエックする。
 @適用事業に雇用されているか
 A労働者であるか(この場合の労働者とは、雇用中の者に限る)
 B適用除外者に該当しないか、
 被保険者とは、雇用保険の適用を受けるものであり、保険給付を受けるためには、少なくとも被保険者か被保険者であったものでないといけない。
 雇用か委任あるいは請負かについては、判定が難しいケースもある。
  労働保険審査会による審査決定の一例 
(1)雇用関係と委任関係(S30.03.18)
 「請求人の事業主会社における関係が雇用関係であるかどうかを判定するには、請求人の業務活動に対する事業主会社の指揮監督の状況及び請求人に対して支給した報酬の性格について判断する必要がある。
 まず、後者については、一定の固定給が保障されているから、報酬は仕事の完成に対して支払われたものでなく、労務に対して支払われたものであると判断されるところであるが、
 固定給があることをもって直ちに雇用関係を認めるべきとする請求人の主張は採用できないところであって、
 労務に対して支払われたものであっても、それが事務処理に対する謝礼として支払われた性格のものであるか、従属的な労務供給に対する対価として支払われた性格のものであるかを判断する必要がある。
 次に、前者の指揮監督の状況については、請求人が毎日出勤し、出勤簿に捺印して個々の訪問先予定を報告し、それについての指揮を受け、毎日帰社して業務活動の状況を報告して会計上の事務手続きをとり、書類の整理を行っていたこと、欠勤、遅刻並びに早退の場合は、あらかじめ届出を行っていたこと、
 及び請求人の業務には通常使用従属関係における労働とみられる集金活動が含まれていたことが認められる。
 従って、請求人は、事業主会社の指揮監督をうけて業務活動を行い、事業主会社は、事務処理に対する謝礼としてではなく、請求人が供給した労務に対する対価として報酬を支給していたと認められるから、請求人の事業主会社における関係は、雇用関係であった判断する」
(2)雇用関係と請負関係(S31.03.26)
 「一般に雇用関係は、作業者が事業主から場所、施設、器材の提供を受けて、事業主の指揮監督の下に一定の秩序に従って作業を行い、その労働の対償として事業主から報酬を受ける関係をいう。
 本件の場合、請求人(公共職業安定所長)は雇用関係であるよりも、請負関係の色彩が強かったと主張するので、これについて判断する。
・請求人は、事業所の洋裁部においては、勤務時間、作業場所等の拘束もなく、事業主の支配を受けてその規律のもとに労務を提供していたとは解しがたいと主張するが、
 事業所は建物、ミシン等の施設器具を提供して、事業所で作業することを原則としており、
 また、勤務時間も業務の繁閑により多分に融通性が認められるが、おおむね午前9時から午後6時まで作業する慣習になっていた認められる。
 当洋裁部における業務が、事業所の支配の下に行われていたことは、顧客の注文があった場合、デザイナー又は縫い子はあたえられた仕事を拒否する自由を持たなかったと認められることからも明らかである。
・ 請求人は、契約は「歩合による請負」ということだけであって、加工賃の7割がデザイナーに一括支払われ、保障給も設けられていなかったから、賃金とは認めがたいと主張するが、
 保障給の有無は労働関係か否かの判断を行うに当たっての参考とはなっても、逆に保障給がないことをもって直ちに出来高払の報酬を賃金ではないとは言い得ない。
 また仕立て加工費の7割が一括手渡されたことは、事務上の便宜の問題と解すべきである。
・、本件のごとく、歩合による出来高払いというほか特に明確な取り決めのないまま作業に従事した場合には、請負関係にあるか雇用関係にあるかを判断することは非常に困難であるが、
 種々に証拠調べと証言にも基づいて判断するに、作業の態様、支配従属の程度等からみて、雇用関係であったと解することがより妥当である」
 被保険者となる者・ならない者こちらを参照にしながらも、個別的にその実態に照らして判断されるのである。
 事例 一時的に短時間就労者となった場合(雇保発34 S61.08.30)
 「被保険者である者が、被保険者として取扱う基準に該当しない短時間就労者(週所定労働時間が20時間未満)となったが、やむを得ない臨時・過渡的な事由によって一時的に生じた場合で、従前の就労形態への復帰が十分に見込まれる場合にあっては、引続き被保険者資格が認められる」

 

 強制適用事業(5条)
 「この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする」

 

 事業(事業所、事業場)とは
・本店、支店、工場などを総合した企業そのものではなく、個々の本店、支店、工場、事務所のように、一つの経営組織として独立性をもった経営体そのもをいう。
・保険関係は事業所単位で成立する。
 被保険者に関する届け出、保険料の納付などの事務処理も事業所単位で行う。
 一つの事業となりうるか否かの判断基準
@場所的に他の事業所から独立しているか否か
A経理、人事、経営(事業)上の指揮監督などにおいてある程度独立しているか否か
B一定期間継続し、持続性を有するか否
 よって、これらに該当しない場合は、ひとつの事業所とはいえば、直近上位の事業所に属するものとされる。
 例外
・同一の場所にあっても、活動の場を明確に区分することができ、経理、人事、経営(事業)上の指揮監督を異にする部門があって、組織上独立したものと認められる場合は、独立した事業として取り扱う(工場の中の診療所、食堂など)
・船員を雇用する事業については、同一場所にあっても、それ自体を独立した事業として取り扱う。(同じ事業所内に船員と船員でない被保険者が混在することがあってはならない)
・徴収法上、事業所の一括が認可された場合は、一括処理する事業所として指定された事業所だけが保険関係の成立する事業所となる(全被保険者は一括処理する事業所に使用されるものと見なされる)