発展講座 労働者災害補償保険法

S04A

 通勤災害の認定(続き)

 
KeyWords  通勤災害の認定(住居就業の場所合理的な経路及び方法逸脱・中断通勤途上での疾病)
 参考文献 「労災保険法 解釈総覧」 厚生労働省労働基準局
 参考文献 「労災認定 早わかり」  厚生労働省労働基準局
3.3 住居
3.3.1 アパートの階段で転倒
 「 被災労働者は、出社するためアパートの2階の自室(住居)を出て階段を下りるとき、下から2段目のところで、靴のかかとが階段にひっかかったため前のめりに転落し、負傷した」
 「回答 通勤災害
 労働者が居住するアパートの外戸が住居と通勤経路との境界であるので、当該アパートの階段は、通勤の経路である」(S49.4.9基収314)
⇒ アパートの自分の部屋の玄関扉を出たところから通勤が始まる。
3.3.2 戸建て家の玄関先石段で転倒
 「被災労働者は、当日、通常どおり出勤し勤務についたが、身体の具合が悪くなり、午後3時頃に早退し、自宅の玄関先の石段を上がるとき、石段が凍っていたため、足をすべらせ転倒し て負傷した」
 「回答 通勤災害ではない。
 住居内において発生した災害であるので、住居と就業の場所との間の災害には該当しない」(S49.7.17基収2110)
⇒一戸建ての場合は、自分の敷地の境界から出たところから通勤が始まる。
3.3.2 夫の看護のため病院から出勤する途中
 「被災労働者は、夫の入院先である病院に宿泊し、翌朝、当該病院より勤務先への出勤途中、路面が凍結しアイスバーン状になっているところを歩行中に転倒し、尾骨部を地面に打ち負傷した。
 なお、被災労働者は入院中の夫を、勤務のかたわら母親と一日交替で看護にあたっていた。交替で看護にあたっていた間は通勤経路は自宅から勤務先に出勤し、業務終了後、当該病院へいき看護に当たり、翌日は当該病院から直接勤務先へ出勤し、業務終了後自宅に戻るという態様を繰り返していた」
 「通勤災害である。
 入院中の夫の看護のため妻が病院に寝泊りすることは社会慣習上通常行なわれることであり、かつ、手術当日から長期間継続して寝泊りしていた事実があることからして、被災当日の当該病院は、被災労働者にとって就業のための拠点としての性格を有する住居と認められる」(S52.12.23基収981)
3.4 就業の場所
3.4.1 会社更衣室の階段で転倒 
 「被災労働者が退勤時(午後5時)タイムレコーダーを打刻した後、会社内の2階更衣室で着替えをしてから階段を歩いて降りていたところ、パンタロンの裾が靴に絡んだため足を滑らし、階段の5〜6段目より落ち、腰部を強打した」
 「回答 通勤災害ではなく、業務上災害。
 「事業主の支配管理下において発生した災害であるので、業務上災害であり、「住居」と「就業の場所」との間の災害には該当しない」(S49.4.9基収314)
3.4.2 会社が入っている雑居ビルの扉で
 「被災労働者は、時間外勤務を終え、帰宅するためS工業鰍ェ入居しているビルを出ようとした際に、玄関の全透明ガラスドアが開いているものと錯覚し、当該ドアに前額部をぶつけ、破損したガラスにより負傷した」
 「回答 通勤災害ではなく、業務上災害。
 本件ビルの玄関、廊下、階段などの共用部分は、不特定多数の者の通行を予定しているものではなく、又、その維持管理費用が当該共用ビル入所事業場の均等負担であること及びその使用に当たっての了解事項等から判断すると、当該ビル所有者と入居事業場の各事業主等が、当該共用部分を共同管理しているものと解することができる。したがって、本件玄関ドアは事業主の施設管理下にあるものと認めるのが妥当である」(S51.2.17基収252の2)
3.5 合理的な経路及び方法
3.5.1 マイカー通勤者が共稼ぎの妻を送ってから
 「被災労働者は、妻と共稼ぎであるため、午前7時40分頃マイカーに妻を乗せて出勤する途中、自分の勤務場所を通り越し、約450メートル程走行し、妻の勤務場所で妻を下車させ、再び自分の勤務先に向かって走行中、鉄道の踏切で、ディーゼル機関車と衝突し、負傷をした。
 なお、被災労働者は、通常、マイカーに妻を乗せて、妻の勤務先を経由して通勤しており、会社の構内は駐車禁止となっているため、妻の勤務先と被災労働者の事業場との中間地点に路上駐車しているものである」
 「回答 合理的な経路と認められる。
 マイカー通勤の共稼ぎの労働者で、勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路から、さほど離れていなければ(450メートル)、二人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは、通常行なわれることであり、このような場合は、合理的な経路として取扱うのが妥当である」(S49.3.4基収289)
3.5.2 マイカー通勤者が共稼ぎ妻を迎えにいく途中
 「マイカー通勤をしている被災労働者は、当日、午後5時に業務終了後、事業場施設内にある風呂に入り、午後5時25分頃共稼ぎをしている妻を迎えにいくため、会社からマイカーで1.5キロメートル(車で5分くらい)先にある妻の勤務先に向かう途中、後続車に追突され負傷した。
 なお、出勤時、マイカーに妻が同乗するのは、被災労働者の会社近くまでであり、そこから妻は徒歩で勤務先へ通勤している。退勤時は、妻の勤務先まで迎えに行き、妻を同乗させ帰宅しているのが常態である。この場合、被災労働者の所定労働時間は午後4時までであり、妻の 終業時刻より1時間早いので会社内の風呂に入り、妻の退社時刻を見計らって退社していた」
 「回答 合理的な経路と認められない。
 マイカー通勤の共稼ぎ労働者で、妻の勤務先が同一方向にあるが、迂回する距離が3キロメートルと離れており、著しく距離が遠回りと認められ、これを合理的な経路として取り扱うことは困難であり、逸脱中の災害である」(S49.8.28基収2169)
⇒ 著しく遠回りというほどではないと思うがしかたがない。風呂がよくなかったか?
3.6 逸脱・中断
3.6.1 帰宅途中レストランにより、その後
 「被災労働者は、午後5時に勤務を終えて帰宅しようとしたが、その日は会社のマイクロバスや大型バスの洗車を行なったために空腹を覚えたので、会社の門から200メートルほど離れたところにあるB飯店で食事をし、約20分ほどで同店を出て再び会社正門前までもどり、通常の通勤経路を徒歩で駅へ向かう途中、横断歩道を渡りかけていたところ、センターラインを越えて走行してきた乗用車にはねられ負傷した。
 なお、被災労働者は妻帯者で、通常は自宅で夕食をとっており、会社から自宅までの通勤所要時間はおおむね20分(電車の運行間隔は約20分)である」
 「回答 通勤災害ではない。
 被災労働者が、通勤途中において食事をとった行為は、@妻帯者であり、通常は自宅で夕食をとっていたこと、A就業の場所から住居までは片道20分程度の所要時間であり、たとえ空腹であったとしても帰宅途中に食事をとらなければならない合理的な理由がないこと、などにより、 「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむをえない事由により行なうための最小限度のもの」には該当しない」(S.49.8.28基収2105)
⇒ 独身者であり、かつ会社と駅の間(通勤経路上)にあるレストランであれば、たぶん認められた。
3.6.2 帰宅途中、喫茶店でコーヒーを飲んだ後
 「被災労働者は、当日午後5時までの所定の勤務を終えて、バスで帰宅するため、午後5時10分頃退社する際、親しい同僚といっしょになったので、お互いによく利用している会社の隣の喫茶店に寄ってコーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後、同僚の乗用車で合理的な経路を自宅まで送られ、車を降りようとした際に、乗用車に追突され負傷した」
 「回答 通勤災害ではない。
 被災労働者が喫茶店に立ち寄って過ごした行為は、通常通勤の途中で行なうような「ささいな行為」には該当せず、また、「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむをえない事由により行なうための最小限度のもの」とも認められない」(S49.11.15基収1867)
⇒ 露天に(店内でも)立ち寄って5分程度のコーヒーならよかったが、腰を落ち着けて40分ではだめである。 
3.6.3 帰宅途中、本屋さんと写真展示をのぞいた後
 「被災労働者は、業務終了後、自動二輪で帰宅する途中、通常の通勤経路より約50メートル離れたN書店に立ち寄り(約3分)その後、同書店より約50メートルのT信用組合のロビーで開催されている交通事故写真展を見学(約20分)した後、再び通常の通勤経路に復し、自宅に向かって走行中、前方の自動車を追い越そうとした際対向車と衝突し、負傷した」
 「回答 通勤災害ではない。
 本件の場合、被災労働者が退勤途中において書籍の購入のため書店に立ち寄った行為は、「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむをえない事由により行なうための最小限度のもの」に該当するが、その後の交通事故写真展の見学行為については、当該労働者の興味によるものであって、ここにいう日常生活上必要な行為には該当しない。よって、通勤経路の逸脱後に生じた災害であって、通勤災害とは認められない」(S49.11.27基収3051)
⇒  本屋さんに寄った目的は、「立ち読みに」などとはいわずにあくまでも「いい本があれば購入しようと思って」ということ。
 交通事故写真展についても、最近同僚が被害にあったので、見学しておくようにと会社がいったとか、いろいろな事情があれば、業務災害など別の話になることもありうる ?
3.7 通勤途上での疾病
3.7.1 出勤途上で心臓麻痺
 「被災労働者は、事故当日いつもの起床時刻より遅れたため、朝食もとらずに通常より5分遅れて住居を出て、急いで自転車で約500メートル先の鉄道H駅へ向かった。その後、被災労働者がH駅構内の下りホームと通ずる階段で倒れているのを発見され、医師により手当てを受けたが、そのかいもなく急性心不全により死亡した」
 「回答 通勤災害ではない。
 「通勤による疾病」とは、通勤による負傷又は通勤に関連ある種々の状態(突発的又は異常なできごと等)が原因となって発病したことが医学的に明らかに認められるものをいうが、本件労働者の通勤途中発生した急性心不全による死亡については、特に発病の原因となるような通勤による負傷又は通勤に関連する突発的なできごと等が認められないことから、「通勤に通常伴う危険が具体化したもの」とは認められない」(S50.6.9基収4039)
⇒ 人が飛び込んできたので電車が急ブレーキをかけ、そのショックで心臓麻痺を、というのであれば可能性があるのでは。