発展講座 国民年金法

KN02

国民年金基金

 
KeyWords  加入員地域型職能型掛金給付国民年金連合会
 老齢給付に関して、サラリーマンなどは「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金(一元化前退職共済年金を含む)」からなる2階建て給付(あるいは厚生年金基金なども含めると3階建て)になっているのに対して、自営業者などの国民国民年金1号被保険者は「老齢基礎年金」だけしかなく、年金額に大きな差があった。
 これを解消するひとつの手段として、平成3年に創設されたのが「国民年金基金制度」である。任意加入ではあるがこれも公的年金である。
 これにより、すべての被保険者に2階建て給付のメニューがそろったことになる。
 ここでは、別の切り口から基金の概要を紹介する。       
 参考文献 国民年金基金連合会ホームページ
1.加入できる人、できない人
1.1 資格取得
 「日本国内に居住している20歳以上60歳未満第1号被保険者が、その者が住所を有する地区の地域型基金、又は従事する事業若しくは業務の職能型基金申し出た日に加入員となる」

・二つ以上の国民年金基金に加入することはできない。
・任意加入被保険者であっても、60歳未満で老齢給付等を受給できるものを除き、加入することができる。
 すなわち、国内在住の60歳以上65歳未満の者、海外在住で20歳以上65歳未満の国民年金任意加入者であれば、地域型、職能型いずれの加入員にもなることができる。 
1.2 資格喪失
 最初から資格喪失に該当する者は、当初から加入できない。
 また、加入後は、自己都合等で途中でやめることはできない。
1  国民年金強制被保険者の資格を喪失したとき、
⇒ただし、国内在住の60歳以上65歳未満の者、海外在住で20歳以上65歳未満の 者で、任意加入すれば、資格喪失はしない。
 その日
1'  第2号被保険者若しくは第3号被保険者となったとき
⇒ サラリーマンになって厚生年金等に加入したときは、本人はもちろん、被扶養配偶者(3号被保険者)も喪失あるいは加入できない。
 その日
2  地域型基金の加入員にあっては、当該基金の地区内に住所を有する者でなくなったとき、職能型基金の加入員にあっては、当該事業又は業務に従事する者でなくなったとき(ただし、いずれも海外在住で20歳以上65歳未満の任意加入者は除く)
⇒ 新住所の地域型あるいは、新事業の職能型に入り直す。(3か月以内に手続きをすれば、従前の掛金で加入できる特例あり)
 翌日
3  保険料を全額あるいは一部免除されたとき、または 額納付特例などによろ猶予されたとき    納付を要しない月の初日
4  農業者年金の被保険者となったとき  その日
5  基金が解散したとき  翌日

 「加入員の資格を取得した月にその資格を喪失した者は、その資格を取得した日にさかのぼって、加入員でなかったものとみなす」
同月に資格取得と喪失があった場合は、国民年金や厚生年金の場合は加入期間1か月、基金の場合は0ヵ月。
1.3 国民年金との関係
1  国民年金の保険料を滞納した場合、その滞納期間に対する基金の年金給付は受給できない。
⇒本体の保険料を滞納した期間分の国民年金基金の掛金は返済される。
2  国民年金の付加年金の保険料を納付することはできない。
⇒ 国民年金は付加保険料の機能を代行しているので、重複はだめ。
3  免除期間終了後に加入し、国民年金の免除期間について追納を行った場合は、一定期間に限り、通常の場合の上限を越えて基金に掛金を収めることができる。
4  老齢基礎年金を繰上げ受給した場合、繰上げ期間中は、付加年金に相当する部分(基礎年金と同じ率により減額 )だけが基金から支給される。
⇒ 基金では繰上げ受給の仕組みはない。
2.1 地域型
 「都道府県単位をひとつの地区とし、その地区内に住所を有する者をもって組織する」
⇒47都道府県にひとつづつある。神奈川県の場合は、「神奈川県国民年金基金」
 ただし、29年1月から隣接県基金どうしの合併が可能になり、将来的には全国で一つの地域型基金になるものとされている。
2.2 職能型
 「同種の事業又は業につき全国を通じて一個とし、同種の事業又は業務に従事する者をもって組織する」
 現在25業種について設立されているが、29年1月から職能型基金どうしの合併が可能になった。
 日本医師・従業員、歯科医師、歯科技工士、薬剤師、柔道整復師、鍼灸マッサージ師等、社会保険労務士、税理士、土地家屋調査士、司法書士、弁護士、公認会計士、損害保険代理業、貨物軽自動車運送業、個人タクシー、自動車整備、建設技能者、建築業、板金業、左官業、電気工事業、クリーニング業、全国農業みどり、漁業者、麺類飲食業国民年金基金
3. 掛金(134条) 
 「基金は、基金が支給する年金及び一時金に関する事業に要する費用に充てるため、掛金を徴収する」
1  掛金は、給付の型(終身年金A型・B型、確定年金T型・U型・V型)、加入口数(1口以上)、加入時の年齢、男女の別によって決まる。
2  掛金の上限は、月額68,000円(個人型確定拠出年金とあわせた合計)
3  口数の増減(ゼロにはできない)は年1回可能
4  全額が社会保険料控除(国民年金保険料などと同じ扱い)
4.給付(128条)
 「基金は、加入員又は加入員であった者に対し、年金の支給を行ない、あわせて加入員又は加入員であった者の死亡に対し、死亡一時金の支給を行なうものとする」
4.1 年金給付
 「129条 基金が支給する年金は、少なくとも、当該基金の加入員であった者が老齢基礎年金の受給権を取得したときには、その者に支給されるものでなければならない」  
⇒老齢基礎年金の受給権を取得したときは、必ず年金を支給。
 実際には、加入するタイプによって、支給開始年齢が決まっている。
 「同2項 老齢基礎年金の受給権者に対し基金が支給する年金は、当該老齢基礎年金の受給権の消滅事由以外の事由によって、その受給権を消滅させるものであってはならない」
⇒死亡以外には、権利は消滅しない。とはいっても、確定年金は保障期間が過ぎれば支給されない。
 「130条 基金が支給する年金は、政令の定めるところにより、その額が算定されるものでなければならない」
 「同2項 老齢基礎年金の受給権者に対し基金が支給する年金の額は、200円(支給の繰下げ・繰上げがあった場合は老齢基礎年金と同じ割合で減額又は増額した額)に、該基金の加入員であった期間の月数を乗じて得た額を超えるものでなければならない」 
掛金の最初の1口には、付加保険料400円が含まれている。つまり、基金は付加年金を代行している。
よって、年金は最低でも付加年金相当分を支給しなければならないのだ。
4.2 遺族一時金
 「129条3項 基金が支給する一時金は、少なくとも、当該基金の加入員又は加入員であった者が死亡した場合において、その遺族が死亡一時金を受けたときには、その遺族に支給されるものでなければならない」 
⇒国民年金から死亡一時金の支給をうけたとき(国民年金の保険料納付済月数+1/4免除月数×3/4+1/2免除月数×1/2+3/4免除月数×1/4が36月以上のとき)は、必ず基金からも 遺族一時金を支給。
 「130条3項 基金が支給する一時金の額は、8500円を超えるものでなければならない」
⇒ これも、基金が付加年金を代行していることによる。
⇒ 保障期間のある終身年金A型と確定年金I型、II型、III型等に加入している者が年金を受け取る前に死亡した場合、加入時年齢と死亡時年齢及び死亡時までの掛金納付期間に応じた額の一時金が支給される。
 終身年金B型のみに加入している場合でも 、年金を受給する前に死亡した場合、1万円を支給。
 4.3 途中での資格喪失
 「基金は、自己都合により中途脱退することはできない」
⇒ 支給金額が確定されている確定給付であるため。
 「中途で死亡以外の理由で資格喪失した場合」
 ⇒ 脱退一時金の制度はない。納めた掛金と期間に応じた年金が、65歳から支給される(加入期間が15年未満のときは、国民年金基金連合会から、15年以上のときは基金から支給) 
   掛金のタイプ 
 口数  加入タイプ  年金の支給方法
1口目 終身年金A型  65歳から80歳までは生死にかかわらず支給(15年保障)、
 80歳以降は死亡まで
終身年金B型  65歳から死亡まで
2口目以降 終身年金A型またはB型  上記に同じ
確定年金T型  65歳から80歳まで生死にかかわらず支給(15年保障)
確定年金U型  65歳から75歳まで生死にかかわらず支給(10年保障)
確定年金V型  60歳から75歳まで生死にかかわらず支給(15年保障)
確定年金W型  60歳から70歳まで生死にかかわらず支給(10年保障)
確定年金X型  60歳から65歳まで生死にかかわらず支給(5年保障)
⇒ 
・1口目は終身年金のA型かB型のいずれかを選択する。
 
 (最初の1口には、付加保険料400円が含まれている)
・2口目以降は終身年金のA型、B型のほか、確定年金(65歳から支給されるT型、U型、60歳から支給されるV型、W型、X型)の選択も可能であり、また、選択しないことも任意である。
・ただし、1口目を含めた全体で、終身型が全体の年金額の半分以上でなければならない。
・年金額は、加入時の年齢によって異なる。
 たとえば、終身年金A型の場合、@35歳までに加入で3万円/月+アルファ、A45歳までに加入で2万円/月+アルファ、B50歳までに加入で1万円/月+アルファ、C50歳以降加入は加入月数により決まる額+アルファ。
5. 国民年金基金連合会
 「137条の4 基金は、中途脱退者(資格喪失日において、基金の年金の受給権を有する者を除き、基金加入期間が15年未満の者)及び、解散基金加入員に対する年金及び一時金の支給を共同して行うため、国民年金基金連合会を設立することができる」
 「137条の19 連合会は、その会員である基金が解散したときは、当該基金の解散基金加入員に係る責任準備金に相当する額を当該解散した基金から徴収する」
 「同2項 連合会は、
 @解散基金加入員が老齢基礎年金の受給権を取得したとき、又は解散した日において老齢基礎年金の受給権を有していたときは、当該解散基金加入員に年金を支給し、
 A解散基金加入員が死亡した場合において、その遺族が死亡一時金を受けたときは、その遺族に一時金を支給するものとする」
 「同3項 前項の年金の額は、200円に当該解散した基金に係る加入員期間の月数を乗じて得た額とし、一時金の額は、8,500円とする」
 国民年金基金連合会は、
 @国民年金基金の中途脱退者(加入期間15年未満)の掛金の運用(中途脱退事業)
 A基金の委託を受けての、1口目の掛金の運用(給付確保事業)
 B同じく、2口目以降の掛金の運用(共同運用事業)
 C連合会に設置されたコンピュータにより、72の国民年金基金と共同で事務処理を行なう事業
 などを実施している。