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R09  労働時間と休憩時間 
KeyWords  労働時間坑内労働等労働時間の計算休憩労働時間および休憩の特例労働時間等の規定の適用除外
 労働時間は賃金と並んで、サラリーマンの重大関心事です。
 過労死、サービス残業などが社会問題化していますが、ここではまず、これらの問題をひもとくベースとなる「労働時間」について、労基法は何をいっているかをじっくり学習しましょう。
 人が寝ているとき、休んでいるときでないと働けない場合もあり、事業の種類や内容によって労働の実態はさまざまです。これらをひっくるめて、強行規定(違反すれば処罰する規定)とするには、結構難しい問題もあるのです。
1.労働時間(32条)
 「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」
 「2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」
 
 歴史的経緯:
 大正5年施工の「工場法」では、15歳未満の児童および女子について、1日の労働時間を休憩時間を含めた拘束で12時間に制限するもののそれら以外の者には原則として、制限がなかった。その後、昭和14年に1日最長で12時間となり、戦後の昭和22年、労基法の制定によって、ようやく1日8時間、1週48時間が実現された(法的にという意味である。なお、1日8時間かつ1週48時間は、大正8年の国際労働機関第1回総会で採択されており、 当時から一つの目標になっていた)
 その後、昭和62年から段階的に週40時間労働制へ移行することが規定され、平成6年4月からは、「原則、週40時間労働制」が確立された。その後、猶予措置はなくなり、現在では一部特例の事業場を除いて全面適用となっている」(労働法コンメンタール労働基準法上巻387から388ページ)
1.1 1週間とは、1日とは(S63.1.1基発1号)
 「1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までとする。 また、1日とは、原則として午前0時から午後12時までをいう。ただし、継続勤務が2暦日にわたる場合には1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とする」)
日本では不思議なことに、週は日曜日から始まる。外国人に「今週の日曜日、先週の日曜日」というときは、注意しないと1週間ずれることがある。(Tomeさんの経験談)
1.2 1週40時間とは
 いずれの7日間をとっても40時間という意味ではなく、就業規則等で定めた1週間、そうでない場合は日曜日から土曜日までの1週間で40時間である。
1.3 労働させるとは 労働法コンメンタール労働基準法上巻
 「一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず、従って、貨物取扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が2名乗り込んで交代で運転に当たる場合において運転しないものが助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは労働であり、その状態にある時間(手待時間)は労働時間である」
 来客当番 (S23.4.7基収1196)
 「休憩時間に来客当番として待機させていれば、それは労働時間である」
 「昼食休憩時間中に来客当番で待機させていたならば、別途休憩を与えることを要する。また、来客当番としての労働時間と他の労働時間とを通算し、1日8時間または週の法定時間を超える場合は、割増賃金支払いの義務が生じる」
 黙示の指示 (S25.9.14基収2983)
 「教員が使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合のごとく、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる」
⇒ 教員は例であって、他の労働者にも適用される。 
⇒ 現実に作業を行う時間のほか、作業前に行う準備や作業後の跡片付け、掃除等であっても、使用者の明示又は黙示の指揮命令下に行われている限り、労働時間である。
 教育・研修
 
就業期間外の教育訓練 通達(S26,1.20基収2875)
 「使用者が自由意志によって行う労働者の技術水準向上のための技術教育を、所定就業時間外に実施した時間は労働時間とみなされるか」というお伺いに対し、
 「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」とある。
⇒いわゆる研修も同じ。
 すなわち、研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給などの不利益処分の対象とされたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育であっても、労働時間に該当する。(法定労働時間を超えれば時間外労働となる)
 厚生労働省・都道府県労働基準監督署ホームページ「労働時間の考え方:研修・教育訓練」等の取扱い」によると、
@労働時間に該当しない事例
・就業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない。
・労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練
・会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
A労働時間に該当しない事例(下線に注意)
使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど
実質的な業務指示で参加する研修
・自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ、実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学
 労働安全衛生関係 詳細は通達(S47.9.18基発602)を
@安全衛生教育 
雇入れ時・作業内容変更時等の教育、新任職長等の教育は、事業者の責任において実施されなければならないものであり、所定労働時間内に行うのを原則とすること。また、その実施に要する時間は労働時間と解されるので、法定時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならない。
A安全衛生委員会
・会議に要する時間は労働時間と解されること。従って、法定時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならない。
B一般健康診断
 ・事業者にその実施義務を課したもので、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間・賃金は、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、事業者が支払うことが望ましい。
C特別項目の健康診断(特殊健康診断)
・事業の遂行に絡んで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならない。
 任意に出勤して行った消火作業時間 (S23.10.23基収3141)
 「事業場に火災が発生した場合、既に帰宅している所属労働者が任意に事業場に出勤し消火作業に従事した時間は、労働時間と解してよいか」というお伺いに対し、回答は、「一般に貴見の通り」とある。
⇒自分の所属する事業場で発生した火災に対する消化作業であるから、業務上必要な行為でもあり、使用者の指揮命令下に置かれた状態ではないが、使用者に賃金支払い義務が発生するという意味で、労働時間とすることが相当と思われる。)

1'.労働時間の計算(38条)
 「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」
 「2項 坑内労働については、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。但し、この場合においては休憩に関する規定、34条2項(一斉付与の原則)及び3項(自由利用の原則)は適用しない」
 労働時間の通算
 「2以上の事業主に使用されその通算労働時間が8時間を超える場合、法定時間外に使用した事業主は、割増賃金を支払わなければならない」(S23.10.14基収217)
⇒ 契約の締結にあたっては、その労働者が他の事業場で労働しているか否か、いる場合はその労働時間について確認しなければならない。
⇒ 兼業(他の事業場で働くことなど)を規制する企業も多い。
 入出坑による労働時間(施行規則24条)
 「使用者が一団として入坑及び出坑する労働者に関し、その入坑開始から入坑終了までの時間について所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合には、入坑終了から出坑終了までの時間を、その団に属する労働者の労働時間とみなす」
⇒集団で(徒歩、トロッコ、ケージ等等により)入坑、出坑する場合、先頭の人と最後尾の人では出発時間差が生じることになるので、最後尾の人(トロッコ、ケージ等)が坑口に着いた時間から、労働が終わって、同じく最後の人(トロッコ、ケージ等)が坑から出た時間を、全員の坑内労働時間とみなす。
 この場合、(先頭の)入坑から(最後尾の)入坑までの時間差があまりい大きすぎる(30分程度以上かかる)場合は、許可されないことになっている。 
38条2項、施行規則24条とも坑内労働時間の算定方法について規定したものである。
これ以外に作業準備、作業後の整理整頓、キャップランプの受渡し・返納、着替えなど使用者の指揮監督のもとで行われた作業があれば、坑外で行われた場合であっても当然それらに要する時間は、当該労働者の労働時間に含まれる。

2.休憩(34条)
 「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中与えなければならない」
 「2項 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない」
 「3項 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない」
 
 休憩時間とは(S22.9.13発基17)
 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいうの意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」
2.1 休憩の3原則
 休憩時間は、@「労働時間の途中に」、A「一斉に」、B「自由」に与えないといけない。
これを休憩の3原則という。ただし、AとBに例外があるほか、休憩を与えなくてもよいとする例外もある。
 一斉休憩(S22.9.1発基17)
 「休憩の効果をあげるためには、原則として、一斉に与えなければならない。「一斉とは事業場単位であると解される」
 自由利用(S22.9.13発基17)
 「休憩時間の利用については事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」
 外出許可(S23.10.30基発1575)
 「休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせる取り決めになっていても、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない」
2.2 休憩時間の長さ
 「労働時間が8時間である場合は、最低45分でよい。ただし、時間外労働が少しでもあるときは、さらに15分の休憩を与えなければならなくなる(所定労働時間の後では、休憩とはいわない)」
   6時間を超える場合 労働法コンメンタール「労働基準法上P450」
 「6時間を超える場合とは、始業後6時間を経過した際少くとも45分の休憩が与えられなければならないという意味ではなく、一勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの場合は、その労働時間の途中に45分の休憩を与えなければならないという意味であって、休憩時間の置かれる位置は問わない。
 8時間を超える場合の意味についても同様である」
 実労働時間が8時間を超える場合の休憩時間(S22.2.27基発401、S26.10.23基収5058)
 「法34条における労働時間とは実労働時間の意であり、これが1日8時間を超える場合には、所定労働時間の途中に与えられる休憩時間を含めて少なくとも1時間の休憩時間が与えられなければならないものであること」
⇒「休憩時間は長ければよいというものでもない。休憩時間はその後にも労働時間があることから、拘束されている時間でもある」
 1昼夜交替制の休憩(S23.5.10基収1582)
 「1昼夜交替制は労働時間の延長ではなく2日間の所定労働時間を継続して勤務する場合であるから、法34条の条文の解釈(1日の労働時間に対する休憩と解する)により1日の所定労働時間に対して1時間以上の休憩を与えるべきものと解して、2時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならぬとの見解は如何」とのお伺いに対し、回答は、
 「1昼夜交替制においても、法律上は労働時間の途中において法34条1項の休憩(1時間の休憩)を与えればよい」

3.労働時間および休憩の特例(40条)
 「別表第1第1号から第3号まで(製造業、鉱業、建設業)、第6号(農林業)及び第7号(水産、畜産業)に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、32条から32条の5(法定労働時間、各種変形労働時間制)までの労働時間及び休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる」
第6号(農林業)及び第7号(水産、畜産業)については、労働時間・休憩・休日の規定そのもが適用されない。(別段の定めの余地 はない)
 「2項 前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであって、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない」  
3.1 休憩の特例
(1)休憩を与えなくてもよい者(施行規則32条)
(2)一斉休憩の例外
(2-1)労使協定による一斉休暇の適用除外(施行規則15条)
 通達(H11.1.29基発45(自由利用担保))
 「休憩時間の自由利用を担保するための手段として一斉付与を義務化しているが、労務管理の個別化が進展し、かつ自律的に働くことを希望する労働者がいることなどから、一斉付与の適用除外許可を廃止すると同時に、労使の自主的な話合いの上、職場の実情に応じた労使協定を締結することにより、適用除外とすることとした」
⇒すなわち、「業務の形態によって、一斉休憩を付与することができない場合は、労働基準監督署長の許可を条件に適用の除外を認める」とあったが、H10年の法改正で、この部分が労使協定の締結による方法に改められた。
(2-2))労使協定不要での一斉休暇の適用除外(施行規則31条)
 注
、「満18歳に満たない者については、労使協定不要での適用除外は認められない」
(3)自由利用の例外(施行規則33条)
 派遣労働者の場合 通達(H11.3.31基発168(34条関連))
 「休憩時間を一斉に与える義務は派遣先の使用者が負うこととされており、派遣先の使用者は、当該事業場の自己の労働者と派遣中の労働者とを含めて、一斉に休憩を与えなければならない。ただし、34条2項但し書きによる労使協定を締結した場合、および施行規則31条において一斉休暇の原則が適用除外されている業種の事業にあたる場合は、この限りではない」
3.2 労働時間の特例
(1)常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇事業、保健衛生事業、接客・娯楽事業:1日8時間、週44時間まで労働させることができる。(施行規則25条の2)

 この労働時間の特例は@1か月単位の変形労働時間制、Aフレックスタイム制に対しても適用できる。一方、B1年単位の変形労働時間制、C1週間単位の非定型的変形労働時間制に対しては、週40時間を基準にして実施する必要がある。
 労働者数の判断 通達(H9.03.25基発195(32条関係))
 「(労働時間の特例に該当するか否かにおける)労働者数の判断は、当該事業場の通常の状況によって判断するものであり、臨時的に労働者を雇入れた場合や欠員が生じた場合については、労働者数の変更があった者として取り扱わないこと」
 .列車等乗務員の予備勤務者の労働時間(施行規則26条) 
 「使用者は、列車、気動車又は電車に乗務する労働者で予備の勤務に就くものについては、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない限りにおいて、1か月単位の変形労働時間制の規定にかかわらず、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させることができる」
⇒突発的な場合に備える予備の勤務者に対しては、本来の1か月単位の変形労働時間制を柔軟に適用し、予め特定した日又週でなくとも、1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させることができる。

4.労働時間等に関する規定の適用除外(41条) 
 「4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、6章(年少者)及び6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない」
1  別表第1第6号(土地の耕作、開墾、植物の栽植、栽培、採取その他農業で、林業を除く)
  第7号(動物の飼育、水産動植物の採捕、養殖その他の畜産、養蚕、水産、漁業の事業)に従事する者
⇒ 農水産畜産業は適用除外、林業には適用される。
2  事業の種類にかかわらず監督管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの 
 
 深夜労働(H11.3.31基発168(41条関連))
 「41条は労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用が除外されるものでない。従って、本条により労働時間等の適用除外を受ける者であっても、37条4項に定める深夜時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない。
 ただし、労働協約、就業規則その他によって深夜業の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には、別に深夜業の割増賃金を支払う必要はない」  
 年次有給休暇(S22.11.26 基発389)
 「法41条該当者にも法39条(年次有給休暇)の適用がある」
 妊産婦の時間外労働の制限と管理監督者(S61.03.20基発151)
 「妊産婦のうち、法41条に該当する者については、労働時間に関する規定が適用されないため、法66条1項と2項(時間外労働、休日労働の制限)の規定は適用の余地がないが、3項(深夜業の制限)の規定は適用され、これらの者が請求したした場合には、その範囲で深夜業が制限されるものであること」
 監督・管理者(S63.3.14基発150)
 「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。
 具体的な判断に当たっては、下記の考え方によられたい。
(1)原則
 職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取り扱いが認められるものでないこと。
(2)適用除外の趣旨
 労働時間、休憩、休日等の規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として、41条による適用の除外が認められる趣旨であること。
(3)実態に基づく判断
 一般に、企業においては、職の内容と権限等に応じた地位(職位)と経験、能力等に基づく格付(資格)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
(4)待遇に対する留意
 管理監督者であるか否かの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。
 この場合、定期給与である基本給、役付手当などにおいて、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意すること。
 なお、一般労働者に比し優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものでないこと。
(5)スタッフ職の取扱い
 スタッフ職については、企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠ける恐れがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、適用除外者として取扱うことが妥当と考えられる」
 日本マクドナルド事件 (H20.01.28東京地裁)
@経緯: ハンバーガー販売会社であるY社は、就業規則において店長以上の職位の従業員を労基法41条2号の管理監督者として扱っているところ、直営店の店長であるXが、同条の管理監督者には該当しないとしてY社に対して過去2年分の割増賃金の支払等を求め、提訴した。
A判決文の主要部分
 「管理監督者については, 労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが, これは, 管理監督者は, 企業経営上の必要から, 経営者との一体的な立場において, 同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、 また、 賃金等の待遇やその動務態樣において、 他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、 労働時間等に関する規定の適用を除外されても, 上記の基本原則に反するような事態が避けられ, 当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。
 原告が管理監督者に当たるといえるためには, 実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められなければならない」
B結果
 東京地裁は、管理監督者に当たるとは認められず、時間外労働や休日労働に対する割増賃金が支払われるべきである。その理由は、
・店長は、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、その職務、権限は店舗内の事項に限られるのであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない。
・ 店長は、店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなければならないというY社の勤務態勢上の必要性から、自らシフトマネージャーとして勤務することなどにより、法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされ、労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない。
・ 店長の賃金は、労働基準法の労働時間等の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては十分であるといい難い。
 機密の事務を取扱う者(S22.9.13発基17)
 「秘書その他職務が経営者又は監督・管理者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまないものであること」
秘書は、料亭における重要な打合せ?に同席 したり、待機していなければならないことが多いが、これらは時間外労働ではないのだ。必ずしも会社の人事の秘密を知っているからではない。(これは監督・管理者)
 監視又は断続的労働
 監視に従事する者の許可基準 通達(S23.3.17基発464監視)
 「監視に従事する者は、原則として、一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ないものについて許可する。
 したがって、次のようなものは許可しないこと。
 ・交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場等の監視等精神的緊張の高い業務
 ・プラント等における計器類を常態として監視する業務
 ・危険又は有毒な場所での業務
 断続的労働に従事する者の許可基準 通達(S22.9.13発基17断続)
 「断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によって取り扱うこと。
・修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機するものは許可すること。
・寄宿舎の賄人等については、その者の勤務時間を基礎として作業時間と手待時間折半の程度まで許可すること。ただし、実労働時間の合計が8時間を超えるときは許可すべき限りではない。
・鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可すること。
・その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。
 寮母や役員専属の自動車運転手なども許可になるであろうが、タクシー運転手は認められない。
 断続的な宿直・日直
 断続的な宿直又は日直勤務(施行規則23条)
 「使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、32条の規定にかかわらず、使用することができる」  
 施行規則23条の根拠 通達(S23.3.17基発464(施行規則23条関連))
 「施行規則23条は法41条3号の規定に基づくものである」
 断続的な宿直又は日直勤務の許可基準 通達(S22.9.13発基17(許可基準))
 「施行規則23条に基づき、労働基準法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないこととしたものであるから、その許可は、労働者保護の観点から、厳格な判断のもとに行われるべきものである。宿直又は日直の許可にあたっての基準は概ね次のとおりである。
(@常態としてほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機などを目的とするものに限って許可するものであること。
A原則として、通常の労働からの継続は許可しないこと。
B宿直(日直)勤務1回についての宿直(日直)手当の最低額は、当該事業場において宿直(日直)の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日の平均額の3分の1を下回らないこと
C宿直は週1回、日直は月1回を限度とすること。(例外もある)
 医師、看護師等の宿直 通達(S24.03.22基発352、H11.03.31基発168)を参照のこと。
   多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について 通達(H20.09,09基発0909001)
 「小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業における比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されている実態がみられるが、この店舗の店長等については、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず労働基準法41条2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)として取り扱われるなど不適切な事案も見られるとろである。
 店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなるが、今般、店舗の店長等の管理監督者性の判断に当たっての特徴的な要素について、店舗における実態を踏まえ、最近の裁判例も参考として、下記のとおり整理したところである。
 ついては、これらの要素も踏まえて判断することにより、店舗における管理監督者の範囲の適正化を図られたい。
 なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい。(以下要旨)
(1)職務内容、責任と権限についての判断要素
・店舗に所属するアルバイト・パート等の採用に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
・店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
・人事考課の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
・店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(2)勤務態様についての判断要素
・遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
・営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
・管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(3)賃金等の待遇についての判断要素
・基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。
・一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
・実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
 特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。

 労働時間等規定の適用除外(高度プロフェッショナル制度:特定高度専門業務・成果型労働制)(41条の2) 
 「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(「対象労働者」)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における1号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。
 ただし、3号から5号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない」(以下略、 こちらを)