発展講座 労働者災害補償保険法

S3D

働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付に関する留意事項等について( S61.6.30発労徴41号、基発383号)  

1 1 労働者派遣の概念について
 労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものである(労働者派遣法2条1号)。この場合の「雇用関係」とは、労働基準法9条の使用する関係(労働契約関係)と同義である。
 したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、@派遣元と派遣労働者との間に労働契約関係があり、A派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき派遣元が派遣先に労働者を派遣し、B派遣先は、派遣元から委ねられた指揮命令権により派遣労働者を指揮命令するというものである」
2 2.労働者派遣事業に対する労働保険の適用について
2.1 総論的事項
 労働者派遣事業に対する労働保険の適用については、労働者災害補償保険・雇用保険双方とも派遣元事業主の事業が適用事業とされる。
(1)労働者災害補償保険について
@労働基準法の災害補償責任の所在について:労働者派遣事業における事業主の災害補償責任については、
・派遣元事業主は、労働者の派遣先事業場を任意に選択できる立場にあり、労災事故の起きた派遣先事業主と労働者派遣契約を締結し、それに基づいて労働者を派遣したことに責任があること、
・派遣元事業主は、派遣労働者を雇用し、自己の業務命令によって派遣先の事業場において就労させているのであるから、派遣労働者を雇用している者として、派遣先の事業場において派遣労働者の安全衛生が確保されるよう十分配慮する責任があること。
・業務上の負傷・疾病に係る解雇制限の規定(労働基準法19条1項)あるいは、補償を受ける権利の退職による不変更の規定(労働基準法83条1項)は、労働契約関係の当事者である派遣元事業主に災害補償責任のあることを前提としていると考えられること、
 等を考慮し、労働者派遣法においては、特例を設けず、派遣元事業主に災害補償責任を負わせることとされている。
A労働者災害補償保険法の適用について:
 労災保険法3条1項は「労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定しており、この「使用する」は労働基準法等における「使用する」と同様労働契約関係にあるという意味に解されており、また、労働基準法上の災害補償責任が派遣元事業主に課される以上、派遣元事業主を労災保険の適用事業とすることが適当である。
2)雇用保険について
 雇用保険法5条1項は「労働者が雇用される事業を適用事業とする」と規定していることから、派遣元事業主の事業が適用事業となる。
2.2 各論的事項
(1) 適用単位について
 労働者派遣事業については、派遣労働者を含めた派遣元事業場を一の事業として取り扱う。ただし、労働者派遣事業と他の事業とを併せ行う事業については、それぞれの事業が活動組織として独立したものか否かを総合的に判断して適用単位を決定すること。
(2) 保険料率について
@労災保険率の適用について
・労働者派遣事業に係る労災保険率の適用は、派遣労働者の派遣先での作業実態に基づき事業の種類を決定し、労災保険率表による労災保険率を適用すること。
・派遣労働者の派遣先での作業実態が数種にわたる場合には、主たる作業実態に基づき事業の種類を決定することとし、この場合の主たる作業実態は、それぞれの作業に従事する派遣労働者の数、当該派遣労働者に係る賃金総額等により判断するものとする。
・派遣労働者を含め適用上一の事業として扱われる派遣元事業場がメリット制の適用要件を満たしている場合には、当然、メリット制を適用すること。
A雇用保険率の適用について
 雇用保険率は、徴収法12条5項において「一般の事業」を適用する。
B保険料の徴収について
・保険料の申告・納付について:労働者派遣事業に係る保険料の納付義務は、すべて派遣元事業主が負うこととなる。
3 3.派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付について
3.1 業務災害及び通勤災害の認定について
(1)業務災害の認定
 派遣労働者に係る業務災害の認定に当たっては、派遣労働者が派遣元事業主との間の労働契約に基づき派遣元事業主の支配下にある場合及び派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づき派遣先事業主の支配下にある場合には、一般に業務遂行性があるものとして取り扱うこと。
 なお、派遣元事業場と派遣先事業場との間の往復の行為については、それが派遣元事業主又は派遣先事業主の業務命令によるものであれば一般に業務遂行性が認められるものであること。
(2) 通勤災害の認定
 派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となること。したがって、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となること。
3.2 費用徴収について
(1)労災保険法12条の3(不正受給者からの費用徴収)関係
 派遣労働者が偽りその他不正の手段により保険給付を受けた場合において、労災保険法12条の3の2項の規定は、派遣元事業主が不当に保険給付を受けさせることを意図して、事実と異なる報告又は証明を行ったものであるときに、派遣元事業主に対して適用すること。
 なお、派遣先事業主に対しては、労災保険法12条の3の2項の規定は適用されない。
(2)労災保険法31条(事業主からの費用徴収)関係
 派遣労働者の被った業務災害が派遣元事業主の故意又は重大な過失により生じたものであるときは、当該派遣事業主に対し労災保険法31条1項3号の規定による費用徴収を行うこと。
 なお、派遣先事業主に対しては、労災保険法31条1項3号の規定は適用されない。
(3)第三者行為災害の求償について
@派遣労働者と派遣先事業場所属の労働者相互の加害行為による業務災害及び通勤災害については、加害者の事業主が、民法715条の規定による使用者責任を、又は自動車損害賠償法の規定による運行供用者責任を負う場合には労災保険法12条の4の規定に基づく求償権の行使を差し控えること。
A派遣労働者の被った業務災害が派遣先事業主の故意又は重大な過失により生じたものであるときは、保険給付の価額の30パーセント相当額を限度として求償権を行使すること。
4 4.その他事務処理上の留意点について
(1)派遣労働者については、その就労形態の特異性に鑑み、保険給付の請求に当たり特に次により取り扱うこととするので、請求人ほか関係者の指導に努めること。
@保険給付請求書の事業主の証明は派遣元事業主が行うが、当該証明の根拠を明らかにさせるため、死傷病報告書の写等災害の発生年月日、災害の原因及び災害の発生状況に関して派遣先事業主が作成した文書を療養(補償)給付以外の保険給付の最初の請求を行う際に添付させること。
 なお、療養(補償)給付のみの請求がなされる場合にあっては、派遣先事業主に、当該請求書の記載事項のうち、事業主が証明する事項の記載内容が事実と相違ない旨、当該請求書の余白又は裏面に記載させること。
A当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容等を把握するため、当該派遣労働者に係る「派遣元管理台帳」の写を当該保険給付請求書に添付させること。
(2) 上記(1)において添付することとした文書が添付されないときは、別途提出するよう指導し、必要に応じ実地調査等により確認すること。
(3)なお、安全衛生関係法令の規定は原則として派遣先事業に適用され、死傷病報告は派遣先事業主から当該派遣先事業の所在地を管轄する労働基準監督署に提出されることとなり、また、災害調査等も当該労働基準監督署において実施されるので、実地調査等に際しては、まず、派遣先事業に管轄する労働基準監督署へ照会すること。