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 第三者行為による災害、民事損害賠償との調整
関連過去問 11-3A11-3B11-3C11-3E12-2D12-6C14-5A14-5B14-5C14-5D15-5D18-7A18-7B18-7D18-7E20-6A20-6B20-6D20-6E29-6A29-6B29-6C29-6E
  24-2選択27-2選択
関連条文 先に保険給付をしたときの第三者行為災害に対する調整(12条の4の1項)、先に損害賠償を受けたときの調整(12条の4の2項)、届出(施行規則22条)、事業主(民事賠償)側の調整(附則64条1項)、労災保険側の調整(附則64条2項)
































1.第三者の行為による事故(12条の4)
1.1 先に保険給付をしたときの第三者行為災害に対する調整(12条の4の1項)
 「政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する
調整の必要性・趣旨
 第三者行為災害の場合、被災労働者(あるいはその遺族)には、労災保険給付の受給権と第三者に対する損害賠償請求権(求償権ともいう)が発生する。
(1)1項では、政府が先に保険給付をした場合、その額を限度に、第三者に対する損害賠償請求権を代位所得する。
 すなわち、被災労働者が受けることができるのは、保険給付金+損害賠償金の全額ではなく、
@先に受けた保険給付金<損害賠償金のときは、保険給付金全額+(損害賠償金ー先に受けた保険給付金の額)
・労働者が請求できる損害賠償額は(損害賠償金ー先に受けた保険給付金)である。(ただし、過去問29-6Aの最高裁判例にあるように、損害賠償金から減額できるのは、支給事由が同じものに限られる)
・先に受けた保険給付金に相当する額は政府が第三者に損害賠償請求をする
A先に受けた保険給付金>損害賠償金のときは、保険給付金全額
・労働者は損害賠償金を請求できない。
・先に受けた保険給付金に相当する額は政府が第三者に損害賠償として請求する。
(2)なお、同条2項においては、被災労働者(あるいはその遺族)が第三者から損害倍賞を受けたときは。その分は政府による保険給付はしないことになる。
B調整の趣旨:労働法コンメンタール「労働者災害補償保険法8訂新版」(厚生労働省労働基準局労災管理課編)P324)
 「一般に保険利益を受ける者に生じた損害について重複して填補を受けさせることは妥当でないので、「損害賠償者の代位(民法422条)の法理に基づいて、保険者に利益を帰属させようとする政策的要請によるものであるとされている。
 また、事故の真の原因者が最終的にその事故によって生じた責任を負うことが正義にかなっていると考えられる。そこで、一般の保険者代位と同様な趣旨で、本条が規定された」
 補足:代位について
 民法422条「債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する」
 すなわち、本条の場合は、「債務者(政府)が債権者(保険給付の受給権者)に対して損害賠償としての保険給付をし、債権者がその金額を受けとったとき、(第三者に対する)損害賠償請求権は当然に債務者(政府)に移転する」
⇒物または権利の価額(賠償金など)と、物または権利についての権利(所有権や賠償請求権など)の両方を手に入れることはできない。
 Aの物をBが壊したが、Bが全額費用を支出して修理したとき、Aが賠償金をもらえば、その物の所有権はBに移る。
 第三者行為における第三者とは労働法コンメンタール「労働者災害補償保険法8訂新版」(厚生労働省労働基準局労災管理課編)P324-325)
@第三者とは、保険者(政府)、保険加入者(事業主)及び当該受給権者(労働者、遺族等)以外の者をいう。第三者の範囲に事業主を含めることは文理上可能であるが、労災保険が、事業主の責に帰すべき場合をも含めて、労働者の業務上の負傷、疾病を保険しようとするものであることから考えれば、本条における第三者には、事業主が含まれないことは当然である。
⇒しかし、わかりにくい。
 かっては、通達S30基災発301号などにおいて、「第三者とは、保険者(政府)及び被災労働者以外の者であって、当該災害につき損害賠償の責を負担する者をいう。 
  従って、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行につき第三者に損害を与えた場合には、民法715条(使用者等の責任)の規定に基づき、当該使用者もまた労災保険法の第三者のうちに含まれる」とされた時代がある。
 しかしながら、保険料の全額は事業主が全額負担していることを考慮すれば、調整はこのことも考慮せざるを得ないので、事業主は第三者とはせず、12条の4とは別途に、附則64条による調整がなされているのである。
A第三者の行為によって生じた場合とは 出典は上記と同じ
 「業務上の負傷、疾病等及び通勤による負傷、疾病等の原因となった事故が、第三者の行為に起因し、第三者に損害賠償責任が生じる全ての場合を含む。
 従って、人の加害行為によって事故が生じた場合のみならず、物の瑕疵、動物の加害によって事故が生じた場合であっても、第三者がこれについて損害賠償の責に任ずる場合には、本条の適用がある。

第三者行為災害に対する調整の対象について
 あくまでも重複部分について調整する。
 損害賠償金の中に慰謝料、物損、差額ベッド代見舞金など労災保険法などにによる法定給付の対象とならないものは、調整の対象にならない。(被災労働者が別途に請求できる)   
 政府が代位して取得する損害賠償請求権の範囲都計算法 労働法コンメンタール「労働者災害補償保険法8訂新版」(厚生労働省労働基準局労災管理課編)P325-327)
@療養及び休業による損害
 治療費:療養(補償)給付の範囲と同一の基準
 逸失利益:給付基礎日額×休業期間日数
A後遺障害による損害:逸失利益=給付基礎日額×365×労働能力喪失率×就労可能年数に対応する係数等
B死亡による損害
 逸失利益及び(喪失した被扶養者利益
 埋葬に要した費用

  第三者行為災害に係る求償期間 
 この件について、労災保険法、同施行令、同施行規則など法令条の改正はないが、令和2年4月1日施行の民法改正を反映した時効の管理については、「第三者行為災害事務取扱手引」(令和2年4月厚生労働省労働基準局)により適切に実施することとされた。
 すなわち、同事務取扱手引きよれば、下記のように取扱いが変わった。、
@第三者行為災害事案について求償する期間は災害発生日から起算して「3年以内」から「5年以内」に。
A自賠責保険等への納入告知は従来どおり3年以内に行い、自賠責保険金額を超過する求償額については5年以内に。
 参考民法規定
(1)不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(724条)
 「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する」
 1号:被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
 2号:不法行為の時から20年間行使しないとき
⇒3年間はそのままであるが、20年間は除斥期間ではなく、時効の更新などが認められる時効期間であるとされ、事実上の長期化がなされた。
(2)ただし、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(724条の2〉法改正(R02.04.01新設)によると。
 「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする」 
 すなわち、「損害及び加害者を知った時から5年、不法行為の時から20年間行使しないと消滅する」という規定が設けられ、これに該当する場合は、3年から5年に延長されたといえる。
(3)債権等の消滅時効(166条)
 「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する」
 1号:債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
 2号:権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
⇒1号が新たに設けられ、それぞれ別個に定められていた短期時効は5年に整理された。よって、事案によっては短期化になったといえるものもある。
(4)ただし、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(167条)法改正(R02.04.01新設⁾によると、
 「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条1項2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする」
 すなわち、「権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から20年間行使しないとき」
⇒人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、その原因が不法行為であろうと、債務不履行(たとえば、安全配慮義務違反やパワハラ防止違反など))によるものであろうと、消滅時効年数は同じである。
 示談の場合の取扱い通達(S38.6.17基発687号)
 「受給権者と第三者との間に示談が行われている場合、次の事項がすべてを満たしているときに限り、政府は保険給付を行わない」
@示談が真正に成立していること。
A示談の内容が、受給権者の第三者に対して有する損害賠償請求権(保険給付と同一の事由に基づくものに限る)の全部の填補を目的としていること。
 次のような場合には、損害の全部の填補を目的としているものとは認められないものとして取り扱うこと。
a 損害の一部について保険給付を受けることとしている場合
b 示談書の文面上、全損害の填補を目的とすることが明確でない場合
c 示談書の文面上、全損害の填補を目的とする旨の記述がある場合であっても、示談の内容、当事者の供述等から、全損害の填補を目的としているとは認められない場合
 なお、これに先立つ最高裁判例(小野運送事件)(S38.06.04)において
 「被災労働者ら自らが損害賠償債務の全部又は一部を免除した場合は、その限度において、政府は保険給付をする義務を免れる。(その後に、政府が保険給付をしても、損害賠償請求権の代位取得はできない)
 このように解するときは、被災労働者らの不用意な又は必ずしも真意にそわない示談等により、これらの者が保険給付を受ける権利を失い、労働者の災害に対し迅速かつ公正な保護を与えようとする労災保険制度の目的にもとるがごとき結果を招来するおそれもないとはいえない。
 よって、保険給付が迅速に行われること、損害賠償債務の免除が被災労働者らの真意に出たものかどうかに関する認定を厳格に行うことによつて、これを防止しうるものと考えられる」としている。
⇒上記通達は、「示談による保険給付の免除」をより慎重に行おうとしているものである。

 派遣先事業主に係る第三者行為災害の取扱いについて (基発0907第4号H24.09.07) 法改正(H24.10.01実施)
 「派遣先事業主が関係する災害の分類と取扱い
(1)直接の加害行為が存在する事案
 派遣労働者の被った労働災害のうち、直接の加害行為が存在する事案は、第三者行為災害に該当することが明確であるため、これまでの第三者行為災害と同様に取り扱う。
 その際、労災保険給付請求書、第三者行為災害届等に記載された災害発生状況によっては事実関係を十分に把握できない場合には、派遣先事業場への立入検査等が規定されたことを踏まえ、必要に応じ実地調査等を行うこと。
(2) 直接の加害行為が存在しない事案
  派遣労働者の被った労働災害のうち、直接の加害行為が存在しない事案については、派遣労働者の被った災害が第三者の行為等によって生じ、かつ、派遣先事業主が被災した派遣労働者に対して損害賠償責任を負うか否かを直ちに判断することが困難である。
 このため、派遣労働者の被った労働災害であって直接の加害行為が存在しない災害が、第三者行為災害に該当するかどうかの判断は、次によることとする。
 ア 派遣労働者に係る労働災害であるか否かは
 @労災保険給付請求書に記載された災害発生状況、
 A労働者死傷病報告、
 B療養補償給付請求書裏面の派遣先事業主の証明等、により確認する。
 イ 派遣労働者の被った労働災害について、派遣先事業主の安全衛生法令違反が直接の原因と認められる場合には、派遣先事業主が被災した派遣労働者に対して損害賠償責任を負うものとして、次に該当する場合に第三者行為災害として取り扱う。
 @派遣先事業主が安全衛生法令違反で送検され、当該法違反が災害の直接原因となったと認められる場合。
 A災害調査や災害時監督等において、是正勧告書等により安全衛生法令違反が指摘され、当該法違反が災害の直接原因となったと認められる場合。
 B上記以外の場合であって、業務上外の調査の過程で、災害の直接原因となった安全衛生法令違反が認められる場合。
 C上記イに該当しない場合には、原則として第三者行為災害とは取り扱わない。
  なお、建築基準法等他の法令に係る違反が災害の直接の原因となっていることや、法令違反は認められないが派遣先事業主の故意又は過失が災害の原因となっていることが明らかな場合については、本省に協議すること」  
 派遣先事業主の行為による労災事故の報告等 (基労発0406第1号H24.04.06) 法改正(H24.10.01実施)
 「派遣先事業主の行為によって発生した労働災害について労災保険給付を行った場合に、政府が、当該派遣先事業主に対して、労働者災害補償保険法の規定に基づく損害賠償請求を行うことは、労働安全衛生法等による諸規制とあいまって派遣先事業主の災害防止の取組をより一層促進する効果をもたらすものであると考えられる。
 派遣労働者に関する労働災害は派遣先事業主の指揮命令下において発生することが一般的であるが、これまで、政府が派遣先事業主に対して報告徴収や立入検査を行う権限がなく、その損害賠償責任の有無の確認が困難であるなどの事情があり、派遣先事業主に対する損害賠償請求の実施が必ずしも徹底されていない状況にあった。
 この状況を踏まえ、派遣先事業主に対する損害賠償請求を円滑に実施することを目的とし、政府に派遣先事業主に対する報告徴収立入検査の権限を付与するための所要の改正を行った」
第三者とは 11
3B
 通勤途上の交通事故など、通勤災害については、第三者の行為によって生じた場合でも保険給付がなされるが、業務災害については、原因である事故が第三者の行為によって生じることはないため、保険給付は行われない。

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正しい 誤り










12
6C
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度において、保険給付の受給者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する。(基礎)

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18
7A
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度において、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。(12-6Cの類型)

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調整
の趣旨
27
2
選択
 最高裁判所は、労災保険法第12条の4について、同条は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、受給権者に対し、政府が先に保険給付をしたときは、受給権者の第三者に対する損害賠償請求権はその給付の価額の限度で当然国に移転し、第三者が先に損害賠償をしたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができると定め、受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府の保険給付義務とが|  D |の関係にあり、同一の事由による損害の|  E |を認めるものではない趣旨を明らかにしているものである旨を判示している。

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賠償額減額の範囲 29
6A
 政府が被災労働者に対し労災保険法に基づく保険給付をしたときは、当該労働者の使用者に対する損害賠償請求権は、その保険給付と同一の事由については損害の填補がされたものとしてその給付の価額の限度において減縮するが、同一の事由の関係にあることを肯定できるのは、財産的損害のうちの消極損害(いわゆる逸失利益)のみであり、保険給付が消極損害の額を上回るとしても、当該超過分を、財産的損害のうちの積極損害(入院雑費、付添看護費を含む)及び精神的損害(慰謝料)を填補するものとして、これらとの関係で控除することは許されないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

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29
6C
 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起され、第三者が当該行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において、当該事故により被害を受けた労働者に過失があるため損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは、保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには、当該損害の額から過失割合による減額をし、その残額から当該保険給付の価額を控除する方法によるのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。(27-2選択と同じ判例)

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賠償額の算定時期 29
6B
 労働者が使用者の不法行為によって死亡し、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するにあたり、当該遺族補償年金の填補の対象となる損害は、特段の事情のない限り、不法行為の時に填補されたものと法的に評価して、損益相殺的な調整をすることが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。 

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14
5B
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
 この場合において、対象となる保険給付は、災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付(年金たる保険給付については、この3年間に係るものに限る)とされている。

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20
6E
 政府は、第三者の行為によって生じた事故を原因とする業務災害について保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度で、受給者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
 この場合において、対象となる保険給付は、災害発生後5年以内に支給事由が生じた保険給付(年金たる保険給付については、この5年間に係るものに限る)とされている。(14-5Bの類型)

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29
6E
 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起された場合において、被災労働者が、示談により当該第三者の負担する損害賠償債務を免除した場合でも、政府がその後労災保険給付を行えば、当該第三者に対し損害賠償を請求することができるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。
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1.2 先に損害賠償を受けたときの調整(12条の4の2項)
 「前項の場合(保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合)において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる」 

@「同一の事由について損害賠償を受けたとき」とは、「保険給付の事由(労働者の負傷、疾病、傷害、死亡)と同一事由(精神的損害および物的的損害を除く)に基づいて、受給権者が損害賠償額の全部又は一部を得た場合」をいう。
 したがって、第三者から見舞金、香典等精神的苦痛に対する損害賠償や贈与と認められる金品を得た場合には、同一事由についての損害賠償を得た場合には該当しない。
A損害賠償を受けたとき、被災労働者が受けることができるのは、損害賠償金+保険給付金の全額ではなく、
・受けた損害賠償金<保険給付金のとき、(保険給付金ー受けた損害賠償金)+損害賠償金全額(保険給付は差額分のみ支給(一部不支給))
・受けた損害賠償金>保険給付金のとき、損害賠償金全額。(保件給付は全額不支給)
 第三者行為災害に係る控除期間 通達(H25.03.29基発0329第11号)
 「労災保険給付の請求を行った者が、第三者又は保険会社等から労災保険に先だって損害賠償金又は保険金の支払を受けている場合には、12条の4の2項に基づき、受領した損害賠償金又は保険金の額を差し引いて、更に労災保険より給付すべき額がある場合にのみ労災保険を給付しているところである。
 この労災保険給付の控除を行う期間については、これまで、平成17年2月1日付け基発第0201009号により、災害発生後3年以内に支給事由の生じた保険給付であって、災害発生後3年以内に支払うべきものを限度としてきたところであるが、今般、対人賠償責任の加入率の増加及び人身事故に対する民事損害賠償の高額化という社会経済情勢の変化等を考慮し、控除期間経過後の二重補填額が多額に上ることを避けるための方策を検討すべき旨の意見表示が会計検査院からなされたことから、労災保険制度の趣旨を踏まえ、控除期間を見直すこととしたものである。
 控除を行う期間については、年金給付を導入した労災保険制度の趣旨を損なわない範囲で延長することとし、災害発生後7年以内に支給事由の生じた労災保険給付であって、災害発生後7年以内に支払うべき労災保険給付を限度して行うこととする。
注:令和2年の民法改正の影響はいまのところない。
12
2D
 政府は、第三者の行為によって業務災害が生じた場合において、保険給付を受けるべき者が同一の事由について当該第三者から損害賠償を受けたときは、その価額の限度において保険給付をしないことができる。(基礎)

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18
7B
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付をしないことができる。 (12-2Dの類型)

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15
5D
 保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けることができるときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。 (12-2Dの類型)

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14
5A
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
 この場合において、対象となる保険給付は、災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付(年金たる保険給付については、この3年間に係るものに限る)とされている。(発展、14-5Bの関連)

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20
6D
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付を行わないことができる。
 この場合において、対象となる保険給付は、その支給事由の発生後5年以内に請求のあった保険給付(年金たる保険給付については、この5年間に係るものに限る)とされている。(H25改、14-5Aの類型)

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11
3C
 保険給付の原因である事故が第三者の行為により生じた場合において、労働者災害補償保険の被災労働者又はその遺族と第三者との間の示談が、真正に成立したものであり、かつ、その内容が被災労働者又はその遺族の第三者に対して有する損害賠償請求権(保険給付と同一の事由に基づくものに限る)の全部の填補を目的として行われている場合に限り、政府は保険給付を行わない。(発展)

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24
2
選択

 第三者行為災害とは、労災保険の保険給付の原因である災害が、当該災害に関する労災保険の保険関係の当事者、すなわち政府、|  B |及び労災保険の受給権者以外の第三者の行為などによって生じたもので、労災保険の受給権者である被災労働者叉は遺族(以下「被災者等」という)に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものをいう。
 労災保険法は、第三者行為災害に関する保険給付と民亊損害賠償との支給調整につき、次のように定めている。
 第一に、被災者等が第三者から先に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の|  C |で保険給付をしないことができる。
 第二に、先に政府が保険給付をしたときは、政府は、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を保険給付の価額の|  C |で取得する。政府が取得した損害賠償請求権を行使することを求償という。
 被災者等と第三者との間で、被災者等が受け取る全ての損害賠償についての|  D |が、真正に、すなわち錯誤や|  E |などではなく両当事者の真意により成立し、被災者等が|  D |額以外の損害賠償の請求権を放棄した場合、政府は、原則として|  D |成立以後の保険給付を行わない。(11-3Cの応用)

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11
3E
 政府が支給をしないことができる保険給付の範囲は、同一の事由に関し被災労働者又はその遺族が受けた損害賠償に相当する額であるが、被災労働者が加害者から慰謝料、見舞金、香典等精神的苦痛に対する損害賠償を受けても、原則として政府の保険給付の支払義務には影響しない。(応用)

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2.届出(施行規則22条)
 「保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じたときは、保険給付を受けるべき者は、その事実、第三者の氏名及び住所(第三者の氏名及び住所がわからないときは、その旨)並びに被害の状況を、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない」
第三者行為災害の届出は被災者本人がしなければならない。
11
3A
 保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じたときは、保険給付を受けるべき者は、その事実、第三者の氏名及び住所並びに被害の状況を、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。(基礎)

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正しい 誤り

 

 

 

 

 

 

 

調

 

3.民事損害賠償との調整
3.1 事業主(民事賠償)側の調整(附則64条1項)法改正(R02.04.01)
 「労働者又はその遺族が障害(補償)年金若しくは遺族(補償)年金を受けるべき場合(当該年金給付を受ける権利を有することとなった時に、当該年金給付に係る前払一時金給付を請求することができる場合に限る)であって、同一の事由について、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から民法その他の法律による損害賠償(当該年金給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けることができるときは、当該損害賠償については、当分の間、次に定めるところによるものとする。
1  事業主は、当該労働者又はその遺族の年金給付を受ける権利が消滅するまでの間、その損害の発生時から当該年金給付に係る前払一時金給付を受けるべき時までのその損害の発生時における法定利率により計算される額を合算した額が当該前払一時金給付の最高限度額に相当する額となるべき額(次号の規定により損害賠償の攻めを免れたときは、その免れた額を控除した額)の限度で、その損害賠償の履行をしないことができる。(履行の猶予)
⇒労災からの給付額が前払一時金給付の最高限度額(ただし、法定利率分は差引く)になるまでの期間は、事業主は民事損害賠償の支払を待ってもらうことができる。
2  前号の規定により損害賠償の履行が猶予されている場合において、年金給付又は前払一時金給付の支給が行われたときは、事業主は、その損害の発生時から支給が行われた時までのその損害の発生時における法定利率により計算される額を合算した額が年金給付又は前払一時金給付の額となるべき額の限度で、その損害賠償の責めを免れる(免責)
⇒上記の猶予期間中に、労災から給付が実際になされた場合は、給付額(ただし、法定利率分は差引く)だけ、事業主は民事損害賠償の支払を免除される。
 ただし、免除額は前払一時金給付の最高限度額(ただし、法定利率分は差引く)までであり、もし民事損害賠償額がそれ以上であれば、不足分は免除されない。

3.2 労災保険側の調整(附則64条2項)
 「労働者又はその遺族が、事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付を受けるべきときに、同一の事由について、損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けたときは、政府は、労働政策審議会の議を経て厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる」
  民事損害賠償との調整の趣旨
 事業主が損害賠償しなければならない場合とは、
  @事業主自身の不法行為によって、労災事故を起こした、
  A労働者が業務上の不法行為によって労災事故を起こし、事業主に使用者責任が問われた、
  B事業主が、労働者を安全で健康に労働させるべきという安全配慮義務違反に問われた
 等の場合である。
 このような場合、被災労働者は重複して損害のてんぽを受けるという側面からの調整のほか、そもそも労災保険料は事業主が全額負担していることから、事業主の負担も重複しているという側面もあり、複雑な調整方法が取られている。
@(附則64条1項)  保険給付額が前払一時金給付の最高限度額になるまでは、事業主は損害賠償の支払を猶予してもらうことができ、その期間中に実際に保険給付がなされた場合は、その額を限度に賠償金は免除される。
A(附則64条2項)  事業主が損害賠償金を支払ったときは、政府(労災側)はその価額の限度で保険給付をしないことができる。

 企業内補償との関係(S56.10.30基発696号)
 「@ 企業内労災補償の取扱い: 労働協約、労使協定、就業規則その他これらに準ずる規程によって定められている業務災害又は通勤災害に対する給付制度であり、通常は、保険給付の不足を補う趣旨すなわち保険給付に上積みして給付される趣旨のものと解される。したがって、原則として保険給付の支給調整を行わない」
 「A示談金及び和解金の取扱い: 労使間では業務災害又は通勤災害については、保険給付が将来にわたっても支給されることは周知の事項であり、保険給付が将来にわたり支給されることを前提としてこれに上積みして支払われる示談金及び和解金については、保険給付の支給調整を行わない」
 「B見舞金等の取扱い:見舞金は災害にあったことがお気の毒であるという気持を表わす趣旨のものであり、賠償責任があることを前提として行われるものではないことが多く、損害賠償としての性格を有しない。したがって、保険給付の支給調整を行わない」
14
5C
 労働者又はその遺族が事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付(一定のものを除く)を受けるべきときに、同一の事由について損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けたときは、政府は、厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で保険給付をしないことができる。(基礎)

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18
7D
 労働者又はその遺族が事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付(一定のものを除く)を受けるときに、同一の事由について損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る)を受けたときは、政府は、厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。(14-5Cの類型)

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20
6A
 保険給付を受けることができる労働者又はその遺族が、同一の事由について事業主から損害賠償を受けていた場合には、政府は、損害賠償の事由、内容、損害てん補の程度等を総合的に勘案して政令で定める基準により、保険給付の全部又は一部の支給を行わないことができる。(難問)

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14
5D
 企業内の労災補償は、労災保険の保険給付の上積みとして行われるのが通例であるので、労働協約、就業規則その他の諸規程からみて労災保険の保険給付に相当するものであることが明らかでない限り、保険給付の支給調整は行われない。(難問)

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20
6B
 企業内の災害補償制度が、労働協約、就業規則等からみて労災保険の保険給付と重なる損害てん補の性質を有するものであることが明らかに認められる場合であっても、政府は、当該保険給付について支給調整を行うことができない。(14-5Dの応用)

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18
7E
 適用事業の事業主が保険給付の上積みとして独自に行う災害補償については、保険給付と重複するものでない限り、これによって保険給付の調整が行なわれることはない。(14-5Dの応用)

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