1 契約期間(14条)
「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約は5年)を超える期間について締結してはならない」
高度の専門的知識等を有する労働者との契約 |
満60歳以上の労働者との契約
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@期間の定めのない契約(いわゆる正社員等)の場合は、労働者はいつでもやめることができるし、使用者も労基法の規定(解雇権の濫用、解雇制限、解雇予告な)どに違反しない限り、いつでもやめさせることができる。⇒ 不当拘束にはならない。
A有期事業(一定期間たてば事業が終了するもの)については、契約期間の上限はない。 B期間の定めのある有期労働契約については、契約期間は長い方が雇用の安定にも繋がるという側面もあるので、平成16年1月より、従来の1年(例外3年)から3年(例外5年)に延長された。
趣旨 通達(H15.10.22基発1022001号(趣旨))
「有期契約労働者の多くが契約更新を繰り返すことにより、一定期間継続して雇用されている現状等を踏まえ、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の1つとして活用されるようにすることを目的として、有期労働契約の契約期間の上限を1年から3年に延長するとともに、高度の専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者については、特例としてその期間の上限を5年としたものであること。
なお、高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となるものであり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年であること」
法14条1項に規定する期限を超える期間を定めた労働契約の効力等について 通達(H15.10.22基発1022001号(14条関連))
「法14条1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約の期間は、法13条(部分無効・自動改定)により、1号(高度の専門的知識等を有する労働者との契約)又は2号(満60歳以上の労働者との契約)については5年、その他のものについては3年となること」
・なお、上限期間を超えた契約については、その契約締結自体が違反であって、120条により「30万円以下の罰金」が使用者に課せられる。
・ただし、契約更新の回数には特に制限はなく、たとえば、「当事者双方が労働契約の解約の意思表示をしないときは、改めて同一内容の労働契約を締結する手続きを省き、自動的に更新する旨の自動更新契約を締結することも、本条違反でない」とされている。
しかしながら、それでも、3年(5年)は長すぎて不当拘束になるのではないかという心配もあり、次のような暫定措置(附則137条)が講ぜられている。
「1年を超える期間の定めのある労働契約(有期事業は除く)を締結した労働者は、3年後の見直し措置が講じられるまでの間、民法の規定(契約解除に伴う賠償責任)にかかわらず、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる」 |
1' 有期労働契約についての基準(14条のつづき)
「2項 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる」
「3項 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる」 |
有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準
「有期契約労働者について適切な労働条件を確保するとともに、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにするためには、有期労働契約の締結、更新、雇止め等に際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにすることが必要であることから、厚生労働大臣が「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準を定め、行政官庁が必要な助言及び指導を行うことができるようにしたものである」(H15.10.22基発1022001)
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具体的には、
契約締結時:契約更新の有無、更新に関する判断基準の明示。 |
1年超過継続勤務者の雇止め時:満了日の30日前までに予告。理由の証明書を交付。 |
1回以上契約更新した1年超過継続勤務者の更新時:契約時間をできるだけ長くする。(努力義務) |
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実質的には期間の定めのない契約と認められる例
反復更新の実態や契約締結時の経緯等により、実質的には期間の定めのない契約と異ならないものと認められるケースもあり、その場合は解雇に関する規定の適用によって雇止めが認められなかった判例も少なくない。
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2 賠償予定の禁止(16条)
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」 |
民法との関連
そもそも民法においては、契約違反があった場合には損害賠償を請求することができるが、その賠償金額を決めるにあたっては当事者間でもめることが多い。そこで、民法420条において、
「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所はその額を増減することはできない」として、わざわざ、「賠償額の予定」の規定を設けている。
しかし労働契約の場合、使用者が労働者よりも優位な立場にたって不当な契約を押し付けないとも限らないので、
「途中で労働契約を解除した場合は、実際の損害があるなしにかかわらず一定額を賠償として支払う」というような契約を結んで、不当な足止めをすることを禁止したのである。
16条の趣旨 労働法コンメンタール「労働基準法上P232-233」(厚生労働省労働基準局編) 「労働契約の期間の途中において労働者が転職したり、帰郷する等労働契約の不履行の場合に、一定額の違約金を定めたり、又は労働契約の不履行や労働者の不法行為に対して一定額の損害賠償額を支払うことを労働者本人又はその身元保証人と約束する慣行が従来我が国にみられたが、こうした制度は、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属せしめることとなるので、本条は、こうした違約金制度や損害賠償額予定の制度を禁止し、労働者が違約金又は賠償予定額を支払わされることをおそれて心ならずも労働契約の継続を強いられること等を防止しようとするものである」
違約金とは (労働基準法コンメンタール労働基準法上P233)
「違約金とは、債務不履行の場合に債務者が債権者に支払うべきものとあらかじめ定められた金銭であって、契約当事者間で契約に付随して定めるものである。
労働契約における違約金もその性質は右と同様であり、労働契約に基づく労働義務を労働者が履行しない場合に、労働者本人若しくは親権者又は身元保証人の義務として課せられるものであり、労働義務不履行があれば、それによる損害発生の有無にかかわらず、使用者は約定の違約金を取り立てることができる旨を定めたものである。
民法は、契約自由の原則に基づき、かかる違約金を定めることを認めているが、労働関係においては労働者の足留策に利用され、身分的拘束を伴うこととなるので、これを民法の特別法として(労働基準法により)禁止したものである」
損害賠償額を予定する契約とは (労働法コンメンタール労働基準法上P234)
「損害賠償額の予定とは、債務不履行の場合に賠償すべき損害額を実害の如何にかかわらず一定の金額として定めておくことである。
労働契約の締結にあたり損害賠償額を約定すると、債務不履行による実損害額の如何にかかわらず予め定められた損害賠償額を支払うべき義務を労働者が負うことになり、労働者の弱みにつけこんだ異常に高い損害賠償額が定められ、労働者の退職の自由が拘束され、労働者の足留策となる等の弊害があるので、契約自由の原則を修正して、これを禁止したものである」
賠償予定の禁止 通達(S22.9.13発基17号16条関係)
「本条は金額を予定することを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない」
⇒よって、例えば業務命令や就業規則に対する違反があった場合、使用者が予め金額を定めておいてこれにより徴収するのは本条違反であるが、実際に発生した損害に応じて賠償を求めることは、違反ではない。
16条違反 労働法コンメンタール「労働基準法上238P」 「16条は、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときに違反が成立するのではなく、「労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定」する契約を締結したときに違反が成立する。
本条に違反した違約金契約又は損害賠償額の予定をする契約は無効となる」
契約者の範囲等 労働法コンメンタール「労働基準法上P237」
「16条は、その禁止している違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約の締結当事者としての使用者の相手方を、労働者本人に限定していないから、相手方が労働者自身の場合はもちろん、労働者の親権者又は身元保証人が、労働者の行為についての違約金又は損害賠償額の支払義務を負担する場合の契約も含まれ、さらには、労働者が負担義務を負った契約金等の支払いについての保証人契約、又は連帯債務保証契約等も含まれる」
留学・派遣費用の企業負担について 最近問題となりそうなのは、「会社の費用で、海外留学をさせたとか、資格を取らせるために大学院等に派遣した場合で、その後一定期間勤務せずに会社を辞めた場合に援助費用を請求できるか否か」である。
これについては、労働法コンメンタール労働基準法上P236(社員留学制度等)によると、
「これらが16条違反となるかどうかは、結局は事実認定の問題であるが、
・留学や派遣が使用者の命令によるものであるか、・援助金等が立替金であるか(事業の必要経費ではないか)、・金銭消費貸借であるか、・返済方法を定めているか等の点から、当該契約が労働関係の継続を不当に強要するものであるかどうかを総合的に判断する必要がある」としている。 |
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3 前借金相殺の禁止(17条)
「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」 |
目的等 労働法コンメンタール「労働基準法上P
239」
「本条は、前借金と賃金とを相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離することにより金銭貸借関係に基づく身分的拘束関係の発生を防止することを目的としたものである。
賃金債権については民法、民事執行法などの規定があるが、労働者保護の観点からは適用対象労働者の範囲と金額について不十分な点があるので、
労働基準法では、労働者の足留策や強制労働の原因ともなる前借金その他労働をすることを条件とする前貸しの債権に限り、賃金との相殺を一切禁止したものである」
趣旨 通達(S22.9.13発基17(17条関係))
「本条の規定は、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離し、金銭貸借関係に基づく身分的拘束関係の発生を防止するのがその趣旨であるから、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融、弁済期の繰上(給料の前払い)等で、明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働をすることを条件とする債権には含まれない」
⇒ 使用者の好意で、当座の費用調達のために給料を前借したなどは許される |
前借金
労働法コンメンタール「労働基準法上239P(前借金とは)」 「前借金とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいうものである。
労働者の足留策として行われ、労働者の身体を拘束する作用を伴うのが一般であるから、前借金制度を全面的に禁止すべきとの意見も制定当時にあったが、これを全面的に禁止することは、労働者に対し不時の出資に際しての金融の途を絶つこととなるので、本条では、前借金そのものは禁止せず、単に賃金と前借金を相殺することを禁止するにとどめたものである」
補足:昔の人身売買(多額の借金返済等のため、親が一時に多額のお金を受け取り、娘がただ働きするなど)はもってのほかであるが、そこまではいかなくても、労働することを条件としてお金を前渡し、不当に労働を強制すれば5条(強制労働の禁止)違反、強制はないが賃金と相殺(差引)すれば17条違反である。
ただし、住宅ローンなど、自らが申し出て会社からお金を借り、給料で返済することは良くあることでもあり、適法か否かについて、難しい判断を伴うこともある。
「労働することを条件とする前貸の債権」、「前貸の債権と賃金の相殺禁止」等 労働法コンメンタール「労働基準法上P240-241」
@「労働することを条件とする前貸の債権とは、金銭貸借関係と労働関係が密接に関係し、身分的拘束を伴うものと解される」
A「(本条における)前貸の債権と賃金の相殺禁止は、使用者の側で行う場合のみを禁止しているのである。
使用者の単独行為たる相殺ではなく、使用者と労働者との相殺についての合意契約によるものも、禁止に含むものと解すべきである。
一方、労働者が自己の意思によって相殺することは禁止されていない。しかし、労働者からの相殺の意思表示がなされたような形式がとられている場合であっても、実質的にみて使用者強制によるものと認められるときは、やはり本条違反が成立すると解すべきであろう」
B「相殺が禁止される賃金とは、11条の賃金であり、その額には(民法等には定められている)限度がない。(1円でもだめ)
賞与あるいは退職金についても、これらが11条の賃金に該当する限り、これらとの相殺も許されない。
24条に基づく賃金控除の協定をしても、使用者は賃金から控除することができないと解される」
生活資金の貸付に対する返済金 通達(S63.3.14基発150(17条関連))
「この規定は、前借金により身分的拘束を伴い、労働が強制される恐れがあること等を防止するためのものであるから、使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して、労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条は適用されない」
⇒いわゆる住宅資金の借入金、物資購入や学資の借入金などは、返済不能なほどの大金や暴利でないなど、労働することが条件となっていないものであれば、許される。 |
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4 強制貯金の禁止(18条)
「使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない」 |
戦前には、賃金の全部又は一部を事業主がお国のためなどと称して半ば強制的に預かりおくことが良く行われていた。容易に貯蓄を引き出せないようにして労働者の足止めをしたり、経営資金として使用された結果、経営難のため払い戻し不能となるなど、問題点が多かった。
戦後においても、倒産に伴う貯蓄金返還不能事件は結構多いことから、強制貯蓄は禁止とし、任意貯蓄にもさまざまな制約を課している。
「労働契約に付随して」とは、労働契約の締結又は存続の条件とすることをいう。
例えば、名称は任意貯蓄であれ何であれ、「貯蓄をやめれば解雇する」というような契約は労働契約と付随した強制貯蓄の契約であり、本条違反である。
また、単に通帳を預かるだけでも、労働契約に付随して行われる場合は違反である。
共済会等について
共済会などと称して従業員全員から強制的に掛金を徴収することがよくあるが、この場合は、「その拠出金が、福利施設や見舞金、祝金など特定の事由が発生した労働者のみに支払われ、時に拠出額以上の恩恵を受けたり、逆にまったく受けなかったりする仕組みであれば、貯蓄金とは考えられないのので、使用者が保管管理しても18条違反ではない」と解されている。(労働法コンメンタール労働基準法上P248)
退職積立金の取扱い(S25.9.28基収2048)
「事業場において下記のような退職金給与規程を作成(たとえば、毎月月俸の100分の2に相当する金額を納付するなど)している所があるが、本規程による積立金は、法律的には労働者の退職を条件として権利が発生するものであり、在職中既に一旦労働者に帰属した金を使用者が委託を受けて保管する貯蓄金とは性質を異にするものであるから、18条に定める貯蓄金に該当しないものとして取り扱ってよろしいか、というお伺いに対して、
@本件退職積立金は労働者に帰属した金を納付せしめるものであるから退職積立金と称していても、労働者の金銭をその委託をうけて使用者において保管管理する性格を有するものである以上、18条に規定する貯蓄金に該当する。
A従って本規定による退職積立金は18条1項に抵触するものと考えられる。
依って本件については労働者の積立金と連合会の積立金とをそれぞれ別個の会計とし、労働者の積立金に関する限り18条の規定に従わなければならない」
社外機関により退職積立金を取り扱う場合(S25.9.28基収2048その2)
「職員の福利増進を図るため全く別個の社外機関である共済会を設立して、別紙のような要綱(社外機関が労働者の毎月受けるべき賃金の一部を積み立てたものと使用者の積み立てたものを財源として、共済事業のほかに、退職時における退職金支給事業を行うなど)により退職金の積立をしているが、この取扱いに関して18条の貯蓄金管理及に疑義があるので、御教示願いたい、というお伺いに対して、
・退職金給与事業は全く別個の機関である共済会で取り扱っているもので(使用者のかかわりが軽微なもので)あれば、労働者と使用者との間には18条にいう貯蓄金管理の問題は生じない。
・しかしながら、労働者がその意思に反しても、(退職金支給事業に)加入せざるを得ないようになっている如き場合においては、労働者の労働契約に附随する貯蓄の契約となり、18条1項に抵触する。
なお、本件に関して、労働法コンメンタール労働基準法上P247においては、「中小企業等において行われている退職積立金制度のうち、使用者以外の第三者たる商店会又はその連合会等が労働者の毎月受けるべき賃金の一部を積み立てたものと使用者の積み立てたものを財源として行っているものについては、このような退職積立金は、傷病者に対する見舞金や結婚祝金等の特殊の出費について労働者相互が共済しあう共済組合の掛金とは異なり、労働者の金銭をその委託を受けて保管管理する貯蓄金と考えられるので、労働者がその意思に反してもこのような退職積立金制度に加入せざるを得ないようになっている場合は、労働契約に付随する貯蓄の契約となり、本条の禁止する強制貯蓄に該当する」 |
4' 任意貯蓄(18条2項)
「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ないときは、労働者の過半数を代表する者)との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない」
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任意貯蓄による貯蓄金を労働者の委託を受けて管理することは、
@労使協定の締結と届出、
A貯蓄管理規程の整備と周知(届出は不要)
があれば許される。
この、任意貯蓄には次の2種類がある。
通帳保管 |
労働者が自分名義で貯蓄し、使用者が通帳等を保管する。 |
預金受入れ |
いわゆる社内預金で、 使用者が預金を受け入れて管理する。この場合はさらに制約が厳しく、
@年0.5%以上の利子をつけることと、
A預金の管理の状況を毎年4月30日までに、所轄労働基準監督署長に報告する義務がある |
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派遣労働者の社内預金
「18条は派遣元の使用者に適用される。派遣先の使用者は派遣労働者と労働契約関係にないので、18条に基づき、派遣中労働者の預金を受け入れることはできない」(S61.6.6基発333)
つまり、18条は強制貯蓄を禁止している規定であるが、また一方では、労使協定の締結など一定の条件のもとで任意貯蓄を許容している規定でもある。 |
4'' 参考 貯蓄金の保全措置(賃金支払確保法3条)
「事業主(国及び地方公共団体を除く)は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入れであるときは、厚生労働省令で定める場合を除き、毎年3月31日における受入預金額について、同日後1年間を通ずる貯蓄金の保全措置(労働者ごとの同日における受入預金額につき、その払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約の締結その他)を講じなければならない」 |
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5.徒弟の弊害排除(69条)
「使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない」
「2項 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない」 |
趣旨
「本条は、わが国における従来の徒弟制度にまつわる悪習慣を是正し、特に酷使の典型である雑役への使用を禁止する趣旨であるから、その監督取締を厳格に行うこと。
2項の「家事その他技能の習得に関係のない作業」中には、機械、道具、器材等の出し入れ、整備、事業場の整頓、清掃等当該技能を習得するに必要と認められる作業は含まれないが、従来とかくかかる作業の範囲を超えて雑役に使用した弊が多かった実情(注、使い走り、子守、炊事、洗濯など)に鑑み、個々の場合につきその範囲を具体的に判断し、監督取締を適切に行うこと」(S22.12.9基発53) |
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強制労働違反等に対する罰則
1 |
強制労働の禁止(5条)
「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」と、労基法では最も重い罰則が規定されている。 |
2 |
中間搾取の排除(6条)
「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」 |
3 |
公民権行使の保障(7条)
「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」 |
4 |
契約期間(14条)
「3年(5年)を超える契約をした場合は、契約しただけで14条違反となり、使用者は30万円以下の罰金」
⇒ その場合は契約期間は自動的に3年(5年)となる。よって、3年(5年)経過したときは、労働者には労働の義務はないことになる。その後も依然として、「労働者の意思に反して労働を強制させた」場合は5条違反にもなりうる。 |
5 |
労働条件の明示(15条)
「30万円以下の罰金」(帰郷旅費不支給の場合も同じ)
⇒ 労働契約自体は有効。 |
6 |
賠償予定の禁止(16条)
「違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をした場合は、契約しただけで16条違反となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」
⇒ 契約自体は無効。
ただし、使用者が実際に損害を被った場合には、その事実を証明して損害賠償を請求することはできる。 |
7 |
前借金相殺の禁止(17条)
「労働することを条件とする前借金と賃金との相殺を行なったとき、17条違反で、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金。さらに、賃金の全額支払を拒んだ場合は24条違反
となり、30万円以下の罰金」
前借金そのものは適法であるが、身分的な拘束を意図して前貸しし、賃金から控除して返済させることは違法である。
また、前借金のあることを理由に退職を認めず、「労働者の意思に反して労働を強制させた」場合は5条違反となりうる。 |
8 |
強制貯金(18条)
「労働契約に付随する貯蓄契約、貯蓄金管理
契約を契約をした場合は、契約しただけで18条違反となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」
中止命令に従わないとき、保全措置命令に従わないときは、さらに30万円以下の罰金。 |
9 |
徒弟の弊害排除(69条)
⇒ 本条違反に対する罰則の定めはない。ただし、年少労働者に対する保護規定や5条による強制労働の禁止、労働条件の明示等に違反する場合は、これらによる罰則が適用される。 |
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