趣旨(H11.3.31基発168(趣旨))
「基準法は1週40時間、1日8時間労働制、週休制を原則としているが、36条1項の協定により時間外・休日労働協定を締結し、労働基準監督署長に届けることを要件として法定労働時間を超える時間外労働、法定休日における労働を認めている。
しかし、36条1項は時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、36条1項は労使がこのことを十分意識した上で協定を締結することを期待しているものである」 |
所定労働時間との関係
@会社の就業規則等で定める労働時間を所定労働時間という。所定労働時間を超えて労働を行わせる場合であっても、法定労働時間を超えなければ協定は不要である。(H11.3.31基発168(趣旨))
この場合、延長時間に相当する賃金は支払わなければならないが、割増賃金は不要である。
A4週4日以上の休日における労働
休日に労働をさせても4週間に4日の休日を確保できる(例えば週休2日制)場合は、休日労働に関する協定の締結の義務はない。(S23.12.18基収3970)
この場合、休日の労働時間に相当する賃金は支払わなければならないが、休日割増賃金は不要である。ただし、週40時間を超える場合は時間外割増賃金を払わなければならない。 |
遅刻 通達(S29.12.1基収6143)
「例えば労働者が遅刻をした場合その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、1日の実労働時間が法定労働時間を超えないときは、36協定及び割増賃金支払いの必要はない」 |
協定当事者
@事業場に複数の労働組合がある場合、当該事業場の過半数で組織されている労働組合と協定すれば足りる。(S23.4.5基発535)
A過半数組織労働組合がない場合は、当該事業場に使用されるすべての労働者の過半数を代表するものと協定する。(S46基収6206)
B事業場に日雇労働者と常雇労働者とがいる場合、常雇労働者の代表者との協定で日雇労働者の時間延長、休日廃止をすることは、その常雇労働者の代表が当該事業場の労働者の過半数を代表している場合には有効である。(S23.3.17基発461)
過半数代表者 施行規則6条の2の1号(管理・監督者でない者)かつ2号(民主的な手続きで選出され、使用者の意向に基づき選出されたものでない者)
過半数代表者を選ぶ労働者の範囲(S46.1.18基収6206)
一般の労働者のほか、管理・監督者、労働組合から除外されている非組合員、長期欠勤者、休職中の者、時間外労働の対象外者(年少者等)、派遣中の労働者(派遣元が協定締結者であって受入先は関係ない)、パートタイマー、アルバイトなどすべての労働者が含まれる。 |
労使協定の効力(免罰効果) (S63.1.1基発1)
「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところにより労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である」
⇒「労働基準法に違反しないという免罰効果」
つまり、たとえば36協定を結んでその範囲内で労働させれば、休日労働・時間外労働であっても、32条違反により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という、刑事罰の責任は免れるという意味であって、
実際に、労働者にそのような労働をさせるには、協定さえあればよいというものではなく、個々の労働契約あるいは、労働協約。就業規則などの根拠が必要である。
たとえば、就業規則等により、「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」などという規定を設けておく必要がある。 |
健康上特に有害な業務(H11.3.31基発168)
@坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務に従事する労働時間(坑内労働等の労働時間)が、法定労働時間(通常の場合は8時間)+2時間(合計10時間)を超えてはならないが、それ以外の労働時間を含めた全労働時間については36協定により、10時間を超えることがある。
A変形労働時間制の場合は、坑内労働等の労働時間が当該日の所定労時間+2時間を超えてはならない。よって、特定日においては、坑内労働等の労働時間が10時間を超えることもありうる。
B坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務に従事する労働時間は、1日について2時間を超えてはならないと規定されているが、休日においては、10時間を超えて休日労働をさせることを禁止する法意であると解されている。 |