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 未支給の保険給付、受給権の保護
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関連条文 未支給の保険給付(37条)、未支給の保険給付を受けるべき者の順位(施行令3条の2)、未支給の保険給付の請求方法(施行規則42条)
 受給権の保護(41条)、脱退一時金の保護(附則29条9項)
別ページ掲載:生計を同じくする生計維持

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.未支給の保険給付(37条) 法改正(H26.04.01)
 「保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる」
⇒「自己の名で」とは、死亡した受給権者の代理人としてではなく、請求者が自分に下さい、と自分の名前で請求すること。
 「生計維持ではなく、生計同一が条件
⇒これらの者以外の3親等内の親族とは、たとえば
 ・配偶者の父母、子の配偶者(以上1親等)、配偶者の祖父母・兄弟姉妹、孫・兄弟姉妹の配偶者(以上2親等)、おじ・おば・おい・めい、おじ・おば・おい・めいの配偶者、配偶者のおじ・おば・おい・めいなど(以上3親等) 
 「2項 前項の場合において、死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であったときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であった者の子であって、その者の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、同項に規定する子とみなす」
2項を意訳すると、「遺族厚生年金の受給権者であった後妻(継母)が 死亡したとき、その継母と生計を同じくしていた、先に死亡した父と先妻の間の子であって、継母の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、受給権者の子とみなす」
 すなわち、父親の死後にその遺族厚生年金を受給していた継母も死んだときは、子は継母の養子でない限り受給権者である継母にとっては他人であり、本来ならば未支給の給付は受けられない。
 しかしながら、もともとの年金は父親の死亡により発生したものであるから、この子が継母と生計を同じくしていたときは、未支給の給付の請求を認めようとする規定である。
⇒なお「継母の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除」とは、もともと、継母と先妻の子の両方に遺族厚生年金の受給権が発生していたが、継母が優先されて、実際の支給は継母のみで、子は支給停止になっていたところ、継母の死亡により支給停止が解除になったということ。
⇒同様に、施行令3条の2のカッコ書きにより、 母親の死後にその遺族厚生年金を受給していた継父も死んだときは、子は継父の養子でない限り受給権者である継父にとっては他人ではあるが、この子が継父と生計を同じくしていたときは、未支給の給付の請求を認めている、
 「3項 1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その保険給付を請求することができる」
 「4項 法改正(H26.04.01) 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、政令で定める順序による」
 「5項 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす」
⇒請求(受給)できる最優先順位者が複数人いるときは、代表者1人が請求すればよい。
 未支給の保険給付を受けるべき者の順位(施行令3条の2)法改正(H26.04.01新規)
 「法37条4項に規定する未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、死亡した者の配偶者、子(死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である夫であつた場合における被保険者又は被保険者であつた者の子であつてその者の死亡によつて遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものを含む)、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の三親等内の親族の順序とする」
 ⇒子の中には、37条2項に該当する子も含まれる。


(1)未支給の保険給付が発生するとき 
@  受給する権利があるのに、まだ裁定請求をしていなかったときに死亡
A  裁定が認められ受給権を取得したが、受給する前に死亡
B  受給中に死亡
・年金は死亡した日の属する月まで支給される(通常の場合は、偶数月15日に、その前月までの分が送金される)
 例えば、4月15日の年金支給日である場合において、
(a)4月1日から4月14日までに死亡すると、4月15日に送られるはずであった(あるいはすでに送られて口座に入金されていた)2月分と3月分ならびに、4月分の3か月分が未支給年金となる。
(b)4月15日以降4月30日までに死亡すると、送られてきた2月分と3月分は本人の財産で、4月分の年金が未支給年金となる。
(c)5月1日から31日までに死亡すると、 送られてきた2月分、3月分は本人の財産で、4月分、5月分の年金が未支給年金となる。
C  記録の訂正を請求したが、記録訂正による差額分を受給する前に死亡
 記録訂正すべき部分があるのに、記録の訂正を請求する前に死亡
(2)未支給年金の請求・支払い
・未支給年金は37条により権利あるものだけが、請求し、受け取ることができる。
・誰も受け取る権利がないときは、国のものになる。(既に送金されてしまったものがあれば返還しなければならない)
・死亡届の提出が遅れ、死亡後も引き続きあやまって年金が死亡した本人あてに送られてきた場合、未支給年金を請求できる者が未支給年金部分だけを受けとることができる。それ以外は国に返還しないといけない。
 ただし、未支給年金を請求できる者が遺族年金を受給できるときは、通常の場合、誤って送られてきた年金は遺族年金の内払いとされる。(返す必要はないが、その額だけ遺族年金の送金額がカットされる) 
(3)参考までに、死亡した受給権者の財産であっても、死亡後は、原則として相続手続き完了後に、相続人のみがこれを引き出すことができる。
 未支給の保険給付の請求方法(施行規則42条) 法改正(H31.04.15) 国民年金法の場合はこちらを
 「老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合(次項に規定する場合を除く)において、未支給の保険給付を受けようとする者は、次の各号に掲げる事項を記載した請求書を、機構に提出しなければならない」
・請求者の氏名及び住所、個人番号並びに請求者と受給権者との身分関係、
受給権者の氏名及び生年月日、基礎年金番号、老齢厚生年金の年金証書の年金コード、受給権者の死亡の年月日
・請求者以外に37条1項に該当する者(請求できる者)があるときは、その者と受給権者との身分関係
⇒具体的には、受給権者の死亡の当時、受給権者と生計を同じくしていた以下の者の有無:配偶者。子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等以内の親族のそれぞれの有無 
・払渡希望金融機関の名称及び口座番号等
 「同2項 老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合であつて、37条3項に該当する(受給権者が裁定請求する前に死亡)ときは、同条の規定による未支給の保険給付の支給を受けようとする者は、前項の請求書並びに老齢厚生年金の請求書及びこれに添えるべき書類等を機構に提出しなければならない」
 「同3項 前2項の請求書には、次の各号に掲げる書類を添えなければならない。
@死亡した受給権者と請求者との身分関係を明らかにすることができる市町村長の証明書又は戸籍の謄本若しくは抄本
A死亡した受給権者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたことを証する書類
B払渡希望金融機関の証明書、預金通帳の写しその他の預金口座の口座番号を明らかにすることができる書類
C法改正(H23.07.01追加) 法98条4項ただし書に該当するとき(死亡後7日以内に市町村に死亡届を提出し、機構への死亡届を省略できる者であるとき)は、受給権者の老齢厚生年金の年金証書(老齢厚生年金の年金証書を添えることができないときは、その事由書)
⇒機構への死亡届が省略できない者は、別途に死亡届を提出し、その際に年金証書を返還する必要がある。
 「同4項  1項又は2項の請求は、老齢厚生年金の受給権者が同時に老齢基礎年金の受給権を有していた場合であつて、請求を行う者が当該受給権者の死亡について国民年金法19条1項の請求を行うことができる者であるときは、当該請求に併せて行わなければならない
 この場合において、請求書の記載事項及び添付書類のうち国民年金法施行規則25条1項により記載し、又は添えたものについては、重複を要しない(一部意訳)」
 障害厚生年金、遺族厚生年金等に係る未支給年金の請求についても、適宜読み替えて、施行規則42条を準用する。
12
1E
 保険給付の受給権者が死亡したとき、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだ支給していなかったものがある場合に、その者と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族が、自己の名において、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。(H26改)(基礎)
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23
10
D
 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と 生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。(H26改)(12-1Eの類型)
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30
9C
 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であれば、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族は、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。(12-1Eの類型)
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20
8E
 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者は、厚生年金保険法第59条に規定する遺族厚生年金を受けることができる遺族以外の者であっても自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる場合がある。(応用)
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令元
9A
 夫の死亡により、前妻との間に生まれた子(以下「夫の子」という)及び後妻に遺族厚生年金の受給権が発生した。その後、後妻が死亡した場合において、死亡した後妻に支給すべき保険給付でまだ後妻に支給しなかったものがあるときは、後妻の死亡当時、後妻と生計を同じくしていた夫の子であって、後妻の死亡によって遺族厚生年金の支給停止が解除された当該子は、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。(発展)
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14
3A
 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付で、まだその者に支給されなかったものがあるときに、その者に、子、父母、祖父母がいないときは、その者の兄弟姉妹が自己の名でその保険給付の支給を請求することができる。(12-1Eの類型)
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21
4E
 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるとき、当該未支給の保険給付を請求することができる者の順位については、@配偶者又は子、A父母、B孫、C祖父母、D兄弟姉妹、Eこれらの者以外の3親等内の親族の順位である。(H26改)
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27
6D
 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、死亡した者と生計を同じくしていたもののうち、死亡した者の配偶者、子(死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である夫であった場合における被保険者又は被保険者であった者の子であってその者の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものを含む)、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の三親等内の親族の順序とする。(21-4Eの類型)
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最優先順位者が複数人いる場合の

17
4E
 保険給付の受給権者が裁定請求を行う前に死亡したときは、その者の死亡の当時生計を同じくしていた姉と妹がいる場合には、そのどちらか一方が自己の名で未支給の保険給付を請求することができる。(応用)
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23
2A
 保険給付の受給権者の死亡に係る未支給の保険給付がある場合であって、当該未支給の保険給付を受けるべき同一順位者が2人以上あるときは、当該順位者の数で按分した額をそれぞれ支給する。(基礎)

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29
9オ
 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされる。(基礎)

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4
10
E
  保険給付の受給権者が死亡し、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときにおいて、未支給の保険給付を受けるべき同順位者が 2人以上あるときは、その1 人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対しての支給は、全員に対してしたものとみなされる。(29-9オの類型)

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18
3D
 老齢厚生年金の受給権者が裁定請求をしないまま死亡した場合において、死亡するまでに受けるべきであった給付の申請を行なう者は、死亡した受給権者と生計を同じくしていたことを証する書類及びその他の書類を、その者の死亡時から5年以内に、厚生労働大臣に提出しなければならない。(発展)

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2.受給権の保護(41条) 
 「1項 法改正(R04.04.01) 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
 ただし、老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む)により差し押える場合は、この限りでない」
⇒年金担保貸付事業の廃止に伴う改定
 「2項 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない」
⇒「金銭を標準として」とあるが、課税標準についてはこちら
 独立行政法人福祉医療機構法(12条)
 「機構は、3条の目的を達成するため、次の業務を行う。
 12号 法改正(R04.04.01削除) 厚生年金保険法、船員保険法又は国民年金法に基づく年金たる給付の受給権者に対し、その受給権を担保として小口の資金の貸付けを行うこと」  
 脱退一時金の保護(附則29条9項)
 「41条1項において「老齢厚生年金」を「脱退一時金」に読み替えてこれを準用する」
⇒「脱退一時金を受ける権利は、譲り渡し、担保に供することはできないが、国税滞納処分の例により差し押えることはできる」
⇒「41条2項は準用されないので、課税をすることができる」
 本国に帰って脱退手当金を機構に請求したとき、退職一時金とみなされて20%が源泉徴収される。
 納税管理人を選び、日本国で確定申告すれば、会社等で受けた退職金の額と退職所得控除額を考慮した額(控除額以内であれば全額)が還付される。(本国で課税される場合もあり得る)

@原則的には、保険給付(年金、一時金)は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることはできないし、課税もされない。
Aしかし、老齢厚生年金(老齢基礎年金、付加年金も)、脱退手当金、脱退一時金は差押さえされるし、課税もされる。
12
3B
 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることはできない。ただし、老齢厚生年金の給付を受ける権利を、国税滞納処分(その例による処分を含む)により差し押さえる場合はこの限りではない。(R04改)(基礎)
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24
2B
 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることはできないので、老齢厚生年金及び脱退一時金を受ける権利は国税滞納処(その例分による処分を含む)によ って差し押さえることができない。(12-3Bの類型)
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14
3D
 老齢厚生年金として支給を受けた金銭について、これを標準として租税その他の公課を課すことはできないが、国税滞納処分により差し押さえることはできる。(基礎)
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26
7C
 老齢厚生年金として支給を受けた金銭を標準として、地方税を課すことはできない。(14-3Dの類型)
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2
5E
  老齢厚生年金の保険給付として支給を受けた金銭を標準として、租税その他の公課を課することはできない。(14-3Dの類型)
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介護保険料 26
7B
 老齢厚生年金として支給される金額は、全額が受給権者に支払われることとされており、そこから介護保険の保険料を控除して支払われることはない。 (14-3Dの応用)
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18
4C
 障害手当金として保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることはできず、かつ当該保険給付として支給を受けた金銭を標準として租税その他の公課を課すこともできない。(基礎)

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26
7E
 障害厚生年金を受ける権利は、令和3年度末までは、独立行政法人福祉医療機構法の定めるところにより、担保に供することができた。(R04改)

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27
8C
 障害厚生年金を受ける権利は、譲り渡し、又は差し押えることはできず、また、障害厚生年金として支給を受けた金銭を標準として、租税その他の公課を課すこともできない。 (18_4Cの類型)
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令2
5D
 障害厚生年金の保険給付を受ける権利は、国税滞納処分による差し押さえはできない。 (18_4Cの類型)

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26
7A
 遺族厚生年金として支給を受けた金銭を標準として、租税を課すことはできないが、租税以外の公課は課すことができる。 (基礎)

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26
7D
 遺族厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることができる。(基礎)

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