20年度 法改正トピックス(厚生年金保険法に関する主要改正点) |
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改正後 | 改正ポイント | |||||||||
時効 ・ 時効 特例法 |
1.時効(92条)(1項太字部分と4項の追加)(H19.7.6施行) 「保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、2年を経過したとき、保険給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利を含む。4項において同じ)は、5年を経過したときは、時効によつて、消滅する」 「4項 保険給付を受ける権利については、会計法31条の規定を適用しない」 時効特例法についてはこちらを |
会計法の31条では 「国に対する金銭の給付を目的とする権利は、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができない」 すなわち、国は時効消滅の利益を放棄することは許されないから、時効消滅を主張しなくても、必ず時効が成立する、とある。 しかし、92条4項を新設することにより、 「国は時効消滅を援用(主張)しない限り、時効消滅することはない」とした。 これにより、記録の訂正に係る時効の特例を実行することができるようにになった。 過去問解説はこちらを |
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情報提供 |
被保険者に対する情報の提供(31条の2)(H20.4.1新設) 「社会保険庁長官は、厚生年金保険制度に対する国民の理解を増進させ、及びその信頼を向上させるため、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者に対し、当該被保険者の保険料納付の実績及び将来の給付に関する必要な情報を分かりやすい形で通知するものとする」 |
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被扶養配偶者期間の特例 |
1.基本的認識(78条の13)(H20.4.1新設) 「被扶養配偶者に対する年金たる保険給付に関しては、3章(離婚時の特例)に定めるもののほか、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識の下に、この章の定めるところによる」 |
被扶養配偶者がある厚生年金被保険者が納付した保険料の半分は、その被扶養者が負担したもの(従って、それに相当する年金額の半分は配偶者のもの)と考える。 過去問解説はこちらを |
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2.標準報酬(78条の14)(H20.4.1新設) 「特定被保険者が被保険者であつた期間中に被扶養配偶者を有する場合において、当該特定被保険者の被扶養配偶者は、当該特定被保険者と離婚又は婚姻の取消しをしたときその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるときは、社会保険庁長官に対し、特定期間(被保険者であつた期間であり、かつ、その被扶養配偶者が3号被保険者であつた期間)に係る被保険者期間(2項、3項により既に標準報酬が改定され、及び決定された被保険者期間を除く)の標準報酬の改定及び決定を請求することができる。 ただし、請求をした日において特定被保険者が障害厚生年金(特定期間の全部又は1部をその額の計算の基礎とするものに限る)の受給権者であるときその他の厚生労働省令で定めるときは、この限りでない」 「同2項 社会保険庁長官は、前項の請求があつた場合において、特定期間に係る被保険者期間の各月ごとに、特定被保険者及び被扶養配偶者の標準報酬月額を特定被保険者の標準報酬月額に2分の1を乗じて得た額にそれぞれ改定し、及び決定することができる」 ⇒ 同3項により、標準賞与額についても同じ。 「同4項 前2項の場合において、特定期間に係る被保険者期間については、被扶養配偶者の被保険者期間であつたものとみなす」 「同5項 2項及び3項の規定により改定され、及び決定された標準報酬は、1項の請求のあつた日から将来に向かつてのみその効力を有する」 |
1.離婚した場合に被扶養配偶者が請求すると、平成20年4月1日以降の3号期間の標準報酬(年金計算の基礎となる部分)は、自動的に2分割される。 2.ただし、障害厚生年金の受給権者であるときは、年金額が減って保障にならなくなる恐れがあるので、この期間については分割 の対象から除外する。 3.分割された 3号被保険者期間も、みなしの厚生年金被保険者期間として扱う。 |
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3.1 記録(78条の15)(H20.4.1新設) 「社会保険庁長官は、28条の原簿に前条4項の規定により被保険者期間であつたものとみなされた期間(被扶養配偶者みなし被保険者期間)を有する者の氏名、被扶養配偶者みなし被保険者期間、被扶養配偶者みなし被保険者期間に係る標準報酬その他厚生労働省令で定める事項を記録しなければならない」 3.2 通知(78条の16)(H20.4.1新設) 「社会保険庁長官は、78条の14の2項及び3項の規定により標準報酬の改定及び決定を行つたときは、その旨を特定被保険者及び被扶養配偶者に通知しなければならない」 3.3 通知(29条) 「社会保険庁長官は、任意適用事業所の脱退、任意単独被保険者の資格取得・喪失の認可、資格取得・喪失の確認又は標準報酬の決定若しくは改定(離婚等をした場合の特例並びに被扶養配偶者期間である特例による標準報酬の改定又は決定を除く)を行つたときは、その旨を当該事業主に通知しなければならない」 |
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4.老齢厚生年金等の額の改定の特例(78条の18)(H20.4.1新設) 「老齢厚生年金の受給権者について、78条の14の2項及び3項の規定により標準報酬の改定又は決定が行われたときは、43条1項の規定にかかわらず、改定又は決定後の標準報酬を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、78条の14の1項の請求のあつた日の属する月の翌月から、年金の額を改定する」 「同2項 障害厚生年金の受給権者である被扶養配偶者について78条の14の2項及び3項の規定により標準報酬の決定が行われた場合は、改定後の標準報酬を基礎として、当該標準報酬改定請求のあつた日の属する月の翌月から、年金の額を改定する 。ただし、300月保障が適用されている障害厚生年金については、みなし被保険者期間はその計算の基礎としない」 ⇒分割を受ける側が障害厚生年金の受給権者であった場合も、老齢厚生年金と同様に年金額が改定される。ただし、300月保障がされているときは、改定は行なわない。 |
300月保障がなされれているときは、3号分割によって新たに標準報酬が増えたとしても、年金額そのものが低下する場合があるので、年金額は改定しない。 過去問解説はこちらを |
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5 標準報酬の改定・決定に伴う保険給付の特例(78条の19)(H20.4.1新設) 78条の14の2項及び3項の規定により標準報酬が改定され、及び決定された者に対する保険給付についてこの法律を適用する場合においては、次の表の上欄に掲げる規定)中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、当該保険給付の額の計算及びその支給停止に関する規定その他政令で定める規定の適用に関し必要な読替えは、政令で定める」
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被扶養配偶者みなし被保険者期間は、原則として、分割請求後に発生する事象に対してのみ有効となる。 過去問解説はこちらを |
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6. 合意分割を行う場合の特例(78条の20)(H20.4.1新設) 「特定被保険者又は被扶養配偶者が、離婚等をした場合において、3号分割による標準報酬改定請求が行われていない特定期間の全部又は 一部を対象期間として、合意分割により標準報酬の改定請求をしたときは、当該請求をしたときに、3号分割標準報酬改定請求があつたものとみなす。 ただし、当該請求をした日において当該特定被保険者が障害厚生年金の受給権者であるときは、この限りでない」 「2項 前項の場合において、按分割合に関わる対象期間標準報酬総額の基礎となる当該特定期間に係る被保険者期間の標準報酬、並びに合意分割を行う際の改訂前の標準報酬については、3号分割の規定による改定及び決定後の標準報酬とする」 |
合意分割期間の中に3号分割期間が含まれている場合は、まず3号分割による標準報酬の改定を優先して行い、その結果を踏まえて合意分割による改定が行われる。 過去問解説はこちらを |
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厚生年金保険事業の円滑な実施を図るための措置(79条)法改正(H20.4.1施行) 「政府は、厚生年金保険事業の円滑な実施を図るため、厚生年金保険に関し、次に掲げる事業を行うことができる」
「2項 政府は、厚生年金保険事業の実施に必要な事務(基礎年金拠出金の負担に伴う事務を含む)を円滑に処理し、被保険者等の利便の向上に資するため、電子情報処理組織の運用を行うものとする」 「3項 政府は、独立行政法人福祉医療機構法に規定する小口の資金の貸付けを、独立行政法人福祉医療機構に行わせるものとする」 |
旧条文 「政府は、被保険者、被保険者であつた者及び受給権者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる」 ⇒ 評判の悪かった、保険料を利用した福祉施設の建設等をやめ、教育・広報等の事業に限定することにした。 過去問解説はこちらを |
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資料の提供(100条の2)法改正(H19.7.6施行) 「社会保険庁長官は、被保険者の資格、標準報酬又は保険料に関し必要があると認めるときは、官公署に対し、法人の事業所の名称、所在地その他必要な資料の提供を求めることができる」 |
被保険者の資格だけではなく、標準報酬や保険料に関して必要な資料の提供を求めることができるようにした。 過去問解説はこちらを |