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労災保険法では「事業主」とは法人の代表者あるいは個人事業主であ
り、法人であろうと個人事業であろうと、事業主は被保険者となることができない。(ただし、特別加入の制度はある)
なお、厚生年金保険法や健康保険法においても事業主と称されるが、この場合は法人の代表者であっても、法人に雇われていて報酬を受けているとみなされて、被保険者となりうるなど、取り扱いが異なる。 |
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事業とは(S22.9.11基発36)
「労災保険法において事業とは、一定の場所においてある組織のもとに相関連して行われる作業の一体をいい、強制適用事業であるか否かは、その作業体即ち事業場の実態によって決定すべきものである。
即ち、一つの事業場における主たる作業が強制適用事業に該当する場合には、その事業場の中の任意適用に該当する部分(事務所等)をも含めて強制適用の事業場とする」
⇒ 適用事業であれば、その事業の労働者全員が一括して適用される。 労災保険率適用基準について (S62.2.13発労徴6基発59、現在はH12.02.24発労徴12,基発94による)
基本原則
「個々の事業に対する労災保険率の適用については、@事業の単位、Aその事業が属する事業の種類、Bその事業の種類に係る労災保険率の順に決定する。
事業の概念
「事業とは、一定の場所においてある組織のもとに相関連して行われる作業の一体をいい、工場、建設現場、商店等のように利潤を目的とする経済活動のみならず社会奉仕、宗教伝道等のごとく利潤を目的としない活動も含まれる」
@適用単位としての事業
「一定の場所において、一定の組織のもとに相関連して行われる作業の一体は、原則として一つの事業として取り扱う」
・継続事業
「工場、鉱山、事務所等のごとく事業の性質上事業の期間が一般的には予定し得ない事業を継続事業という。
継続事業については、同一場所にあるものは分割することなく一つの事業とし、場所的に分離されているものは別個の事業として取り扱う。
ただし、同一場所にあっても、その活動の場を明確に区分することができ、経理、人事、経営等業務上の指揮監督を異にする部門があって、活動組織上独立したものと認められる場合には、独立した事業として取り扱う。(たとえば、工場内にある食堂とか診療所などはその典型的な例である)
また、場所的に独立しているものであっても、出張所、支所、事務所等で労働者が少なく、組織的に直近の事業に対し独立性があるとはいい難いものについては、直近の事業に包括して全体を一つの事業として取り扱う」 ⇒ 1事業所とは会社単位ではなく、原則として、工場、支店、営業所などの場所単位である。
・有期事業 「木材の伐採の事業、建物の建築の事業等事業の性質上、一定の目的を達するまでの間に限り活動を行う事業を有期事業という。
有期事業については、当該一定の目的を達するために行われる作業の一体を一つの事業として取り扱う」
⇒ 有期事業に期限の上限はない。 A)事業の種類 「一つの事業の「事業の種類」の決定は、主たる業種(業態)に基づき、「労災保険率適用事業細目表」により決定する。
⇒同じ場所において多様な業種が営まれているものの、それぞれを明確に区分することはできず、経理、人事、経営等業務上の指揮監督においても、活動組織上独立したものと認められるまでにはない場合は、原則にのっとって、一つの事業とみなされる。
その場合の労災保険率は、必ずしも労働者の数の多少ではなく、主たる業種(その事業の実質的な内容、主たる作業の種類、主たる製品・完成物、主として提供されるサービス等により判断される主たる事業の種類)に応じて決められる。
B労災保険率 「決定された事業の種類に基づき、労災保険率表により、労災保険率を決定する」
⇒労災保険率のいずれの事業に該当するかは、当該事業の主たる業態・種類又は内容等により当該事業を1単位として保険率を決定すべきものである。⇒ 1事業では1労災保険率である。 |
共同企業体による建設事業(S41.02.15基災発8)
「建設業において、2以上の建設業者が共同企業体を結成して工事を施行している場合の適用事務は、以下によって処理されたい」
(1)甲型(全構成員が各々資金、人員、機械等を拠出して、共同計算により工事を施工する共同施工方式の場合)は、共同企業体が行う事業の全体を一の事業とし、その代表者を事業主として保険関係を成立させること。
(2)乙型(各構成員が工事をあらかじめ分割し、各々分担工事について責任を持って施行し、共通経費は搬出するが、損益については共同計算を行わない分担施行方式の場合)は、協定書に基づいてあらかじめ分担されている工事部分をそれぞれ独立の事業とし、各構成員をそれぞれ事業主として保険関係を成立させること。 |
出向労働者に対する労災保険法の適用について(S35.11.2基発932)
「ある事業(出向元事業)に雇用される労働者(出向労働者)が、その雇用関係を存続したまま、事業主の命により、他の事業(出向先事業)の業務に従事する場合における労災保険法の適用は、下記のとおりとする」
(1)出向労働者に係る保険関係について 出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行なつた契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働の実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して、決定すること。
その場合において、出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(ただし、身分関係及び賃金関係を除く)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事している場合には、たとえ、当該出向労働者が、出向元事業主と出向先事業主とが行なつた契約等により、出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合であつても、出向先事業主が、当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として、徴収法11条2項に規定する事業の賃金総額に含め、保険料を納付する旨を申し出た場合には当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし、当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うこと。
(2)前記(1)の後段に係る事務取扱 @保険料の納付について 出向元事業主が、出向先事業主との契約等により出向労働に対して支払う賃金名目の金銭給付を、出向先事業に関する賃金総額に含めたうえ、保険料を算定し、納付させること。
A平均賃金の算定について 出向労働者につき業務上災害が発生し、保険給付のため平均賃金を算定する必要が生じたときは、出向元事業主が、出向先事業主との契約等により、出向労働者に対して支払う賃金名目の金銭給付を、出向先事業が支払つた賃金とみなし、出向先事業の出向労働者に対し支払つた賃金と合算したうえ、保険給付の基礎となる平均賃金を算定すること。
B休業補償費のスライドについて 労働基準法76条2項(休業補償費のスライド)の規定の適用については、「出向先事業場における同種の労働者」を「同一の事業場における同種の労働者」として取り扱うこと。
従つてたとえ、出向労働者が災害後出向元事業に復帰している場合であつても、同様であること。
C保険料率のメリツトについて 徴収法12条3項(継続事業のメリット制)の規定の適用については、出向労働者に対する保険給付を、出向先事業に対する保険給付として取り扱うこと。
在籍型出向・移籍型出向における労働契約関係(S61.06.30基発383抜粋)
「在籍型出向は、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係がある状態での出向であり、それぞれ労働契約関係が存する限度で(注:すなわち出向に関する取り決めにより定められた権限と責任において)労働基準法等の適用がある。
ここで、出向先と出向労働者との間に労働契約関係が存するか否かは、労働関係の実態により、出向先が指揮命令権を有していることに加え、出向先が賃金の全部又は一部の支払いをすること、出向先の就業規則の適用があること、出向先が独自に出向労働者の労働条件を変更することがあること、出向先において社会・労働保険へ加入していることなど総合的に勘案して判断すること」 ⇒上記の出向労働者に対する労災保険法の適用については、この在籍出向の場合の話である。
「移籍型出向は、出向先との間のみに労働契約関係がある形態で、出向元と出向労働者との労働契約関係は終了している。つまり、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある」 |
労働者派遣事業に対する労働保険の適用(要旨)(S61.6.30基発383)
「労働者派遣事業に対する労働保険の適用については、労災保険、雇用保険双方とも派遣元事業主の事業が適用される」
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また、詳しくは、労働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付に関する留意事項等について(S61.6.30発労徴41号、基発383号)を参照のこと |