27年度 法改正トピックス(厚生年金保険法に関する主要改正点)
  改正後 改正ポイント
訂正の請求   訂正の請求(28条の2) (H27.03.01新規)
 「被保険者又は被保険者であつた者は、前条の原簿(厚生年金保険原簿)に記録された自己に係る特定厚生年金保険原簿記録(被保険者の資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬その他厚生労働省令で定める事項の内容をいう)が事実でない、又は厚生年金保険原簿記録に自己に係る特定厚生年金保険原簿記録が記録されていないと思料するときは、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に対し、厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができる」
 「同2項 前項の規定は、被保険者又は被保険者であつた者が死亡した場合において、次の表の上欄に掲げる者について準用する。この場合において、同項中「自己」とあるのは、同表の上欄に掲げる者の区分に応じ、同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする」
 未支給の年金の支給を請求することができる者  死亡した保険給付の受給権者
 遺族厚生年金を受けることができる配偶者又は子  死亡した被保険者又は被保険者であつた者

 「3項 1項の規定は、78条の6の3項(離婚分割におけるみなし被保険者期間)又は78条の14の4項(三号分割におけるみなし被保険者期間)の規定により被保険者期間であつたものとみなされた期間を有する者(被保険者又は被保険者であつた者を除く)について準用する」
 訂正に関する方針(28条の3)(H27.03.01新規)
 「厚生労働大臣は、前条1項(同条2項及び3項において準用する場合を含む)の規定による請求(訂正請求)に係る厚生年金保険原簿の訂正に関する方針を定めなければならない」
 「同2項 厚生労働大臣は、前項の方針を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、社会保障審議会に諮問しなければならない」
 訂正請求に対する措置(28条の4)(H27.03.01新規)
 「厚生労働大臣は、訂正請求に理由があると認めるときは、当該訂正請求に係る厚生年金保険原簿の訂正をする旨を決定しなければならない」
 「同2項 厚生労働大臣は、前項の規定による決定をする場合を除き、訂正請求に係る厚生年金保険原簿の訂正をしない旨を決定しなければならない」
 「同3項 厚生労働大臣は、前2項の規定による決定をしようとするときは、あらかじめ、社会保障審議会に諮問しなければならない」
 本規定が新設された経緯、これまで設けられていた第三者委員会との関係等については、国民年金法におけるこちらの改正のポイントを参照のこと。
・「原簿に記録された自己に係る特定厚生年金保険原簿記録が事実でない」とは、基礎年金番号に結びつけられて厚生労働大臣が管理している自分の年金記録(被保険者資格の得喪の年月日、標準報酬など)に間違いがあるということ。
・「原簿記録に自己に係る特定厚生年金保険原簿記録が記録されていない」とは、自分の年金記録が基礎年金番号に結びつけられて厚生労働大臣が管理している原簿にはないということ。
 これらだけでなく、日常的に起きる可能性がある記録誤りを含めて、被保険者あるいは被保険者であった者が記録の訂正を請求する権利を認めることになった。
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 時効による給付制限(75条)(H27.03.01施行)
 「保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は、行わない。
 ただし、当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について、事業主からの届出若しくは被保険者等からの確認の請求又は28条の2(訂正の請求)の1項(2項及び3項において準用する場合を含む)の規定による訂正の請求があつた後に、保険料を徴収する権利が時効によつて消滅したものであるときは、この限りでない」
 時効による給付制限(75条)
 太字分を追加。すなわち
 時効消滅(原則2年)してしまった期間についての給付は行わないが、事業主からの届出や被保険者等からの確認の請求に加えて、
 記録の訂正の請求が、時効前に行われていたにもかかわらず業務処理の遅れ等により時効になってしまった場合は、時効消滅には該当せず、その期間の給付は行われる。
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 不服申立て(90条) (H27.03.01施行)
 「被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
 ただし、28条の4(訂正請求に対する措置)の1項又は2項の規定による決定については、この限りでない」
 不服の申立て(90条)
 厚生年金保険原簿記録の訂正の請求に対する処分については、社会保障審議会(実際には地方厚生局におかれる地方年金記録訂正審議会)への諮問を経て行われるので、その処分に不服がある場合は社会保険審査官に対する審査請求ではなく、行政不服審査法に基づいて厚生労働大臣に審査請求する。
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 資料の提供(100条の2) (H27.03.01大幅書きかえ)
 「厚生労働大臣は、被保険者の資格標準報酬又保険料に関し必要があると認めるときは、被保険者若しくは被保険者であつた者(被保険者等)、共済組合の組合員若しくは組合員であつた者、私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者若しくは加入者であつた者又は健康保険若しくは国民健康保険の被保険者若しくは被保険者であつた者の
 氏名及び住所資格の取得及び喪失の年月日被保険者等の勤務又は収入の状況法人の事業所の名称及び所在地その他の事項につき、官公署、国民年金法3条第2項に規定する共済組合等、健康保険組合若しくは国民健康保険組合に対し必要な資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは事業主その他の関係者に報告を求めることができる」
 従来の趣旨は未適用事業所の解消、あるいは被保険者となるべき者の加入促進にあったが、記録訂正問題に対して適切に対処するために、必要な情報を多くの関係者の協力を得て入手する必要が生じたことによる。
 具体的には。
・「被保険者」だけでなく、「被保険者であった者、共済組合の加入員等あるいは加入員等であった者」を追加。
・「法人の事業所の名称、所在地」だけでなく、「被保険者等の氏名及び住所、資格の取得及び喪失年月日勤務又は収入の状況」を追加
・「官公署」だけでなく、「共済組合等、健康保険組合、国民健康保険組合、銀行、信託会社等、事業主その他の関係人など」を追加
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 地方厚生局長等への権限の委任(100条の9) (H27.03.01施行)
 「この法律に規定する厚生労働大臣の権限(100条の5の1項及び2項(財務大臣への委任)に規定する厚生労働大臣の権限を除く)は、厚生労働省令(28条の4(訂正請求に対する措置)に規定する厚生労働大臣の権限にあっては、政令)で定めるところにより、地方厚生局長に委任することができる」
 「同3項 (H27.03.01新規) 1項の規定により28条の4(訂正請求に対する措置)に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生局長に委任された場合(前項により地方厚生支局長に委任された場合を含む)には、同条3項中「社会保障審議会」とあるのは、「地方厚生局に置かれる政令で定める審議会(地方年金記録訂正審議会)」とする」
 100条の9
  訂正請求に対する措置に関する権限は地方厚生局長に委任され、細部は政令で定められている。

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支給停止調整変更額  支給停止調整変更額(附則11条3項)(H27.04.01改正)
 「支給停止調整変更額は、48万円とする。
 ただし、48万円に平成17年度以後の各年度の物価変動率に実質賃金変動率を乗じた額(端数処理は同様)が48万円(あるいは直近の改定額)を超え、又は下るに至った場合においては、当該年度の4月以後の支給停止調整変更額を当該乗じて得た額に改定する」
 支給停止調整変更額は名目賃金変動率(=物価変動率×実質賃金変動率)に応じて、自動改定される。
 平成27年度値は、48万円×(1.003×0.996×1,002×0.998×1.011×
0.976×0.980×0.986×0.996×1.005×1.025)=47万円(469,086の5千円以上切り上げ)
⇒27年度の支給停止調整変更額は46万円から47万円に。基礎知識と過去問学習はこちらを
⇒支給停止調整額は支給停止調整変更額額と同じ額であり、27年度は46万円から47万円に。基礎知識と過去問学習はこちらを
延滞金の割合の特例  延滞金の割合の特例(附則17条の4) (H27.01.01施行)
 「87条1項(6項による不正利得の徴収の規定による徴収金及び平成25年改正法附則5条1項の規定によりなお効力を有するものとされた存続基金に関する準用規定に基づき、存続基金が徴収する不正利得に関わる徴収金を含む)に規定する延滞金の年14.6パーセントの割合及び年7.3パーセントの割合は、当分の間、これらの規定にかかわらず、各年の特例基準割合(租税特別措置法に規定する特例基準割合をいう)が年7.3パーセントの割合に満たない場合には、その年中においては、年14.6パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年7.3パーセントの割合を加算した割合とし、年7.3パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年1パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年7.3パーセントの割合を超える場合には、年7.3パーセントの割合)とする」
 原則は、
A:納期限の翌日から3か月を経過する日までの期間は年7.3%(ただし、徴収金はBと同じ)
B:その後の期間は年14.6%
 ただしこれまでは、特例基準割合が年7.3%未満であるときは、その年内は、Aは保険料のみ7.3%ではなく特例基準割合であったところ、改正後は、
 特例基準割合が年7.3%未満であるときはその年内は、
A:特例基準割合+年1%(年7.3%を超える場合は7.3%)(ただし、徴収金はBと同じ)
B:特例基準割合+年7.3%
 また、特例基準割合の定義も「各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4パーセントの割合を加算した割合」から、「各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における短期貸付(貸付期間1年未満)の平均利率の合計÷12として財務大臣が告示する割合+1.0%」に。
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外国人    外国人の場合の資格取得届(現施行規則15条4項)(H26.10.01)
 「日本国籍を有しない当然被保険者に係る前2項の届書又は磁気ディスクには、ローマ字氏名届を添えなければならない」
 国民年金法と同様の趣旨
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