6A 厚生年金保険法 基礎知識と関連過去問 Tome塾Homeへ
 老齢厚生年金(支給要件、年金額、報酬比例部分、従前額保障、経過的加算、厚生年金基金に関連する特例、繰下げ支給)
 関連過去問 12-3E12-10A12-10D13-9C13-10E14-6A14-10B16-6A17-1E18-5D18-5E19-2C19-3A19-3B19-3D19-3E20-8C23-1B25-8D26-6B26-6D28-4A28-4B28-4C28-4D30-2ア30-2ウ令3-2A令3-2B令3-9E令4-5C 令4-5D令4-5E令4-9A令4-9B令5-6D令5-9A令5-9B令5-9C令5-9D
 23-1選択令2-2選択
 関連条文 老齢厚生年金の支給要件(42条)、老齢厚生年金の支給要件の特例(附則14条)、老齢厚生年金(含む特別支給の老齢厚生年金)の裁定の請求(施行規則30条抜粋)裁定請求の特例(施行規則30条の2)、裁定請求の特例(施行規則30条の3)
 
老齢厚生年金の額(43条)、生年月日に応じた給付乗率の読替え(H12改正法附則20条2項)、従前額改定率による従前額保障(H12改正法附則21条1項)
 在職定時改定(43条2項)、退職改定(43条3項)、在職定時改定・退職改定の適用に関する特例(附則15条の2) 
 物価スライド特例措置(H16年改正法27条)
 経過的加算(60年改正法附則59条2項)
 繰下げの申出(44条の34項(年金額)、5項(繰下げみなし増額))、繰下げ加算額の計算(施行令3条の5の2)、繰下げ規定の経過措置(R04,04.01)




















1.老齢厚生年金
1.1 老齢厚生年金の支給要件(42条)法改正(H29.08.01)
 「老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が、次の各号のいずれにも該当するに至ったときに、その者に支給する」
1  65歳以上であること
2  保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上であること


@「被保険者期間を有する者」とは、厚生年金の被保険者期間が1か月以上ある者
A平成29年7月31日までは、「25年以上」が必要であった。
 平成29年7月31日までにおいて、「保険料納付済期間+保険料免除期間が10年以上あるが、25年以上なかった者」は、平成29年8月1日において受給資格期間を満たすとされ、支給開始年齢を過ぎておれば、平成29年9月分から、特別支給の老齢厚生年金あるいは本来の老齢厚生年金が支給されるようになる。
B平成29年8月1日以降においては「10年以上」で、老齢厚生年金、特別支給の老齢厚生年金、特例老齢年金の受給権が発生し、繰上げ請求も可能になる。
Cなお、長期要件による遺族厚生年金、特例遺族年金については、従来と同じく25年以上必要である。
1.2 老齢厚生年金の支給要件の特例(附則14条) 法改正(H29.08.01)
 「被保険者期間を有する者のうち、その者の保険料納付済期間、保険料免除期間及び国民年金法附則に規定する合算対象期間を合算した期間が10年以上である者は、42条(老齢厚生年金の支給要件)並びに附則7条の3(特別支給の老齢厚生年金がない者の繰上げ)の1項、8条(特別支給老齢厚生年金の受給資格要件)、13条の4(特別支給の老齢厚生年金の支給開始年令前の繰上げ)の1項、28条の3(旧共済組合員期間を有する者に対する特例老齢年金)の1項及び29条(脱退一時金)の1項の規定の適用については、42条2号に該当するものとみなし、被保険者期間を有する者のうち、その者の保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者は、58条1項(4号(長期要件による遺族厚生年金)に限る)及び附則28条の4(旧共済組合員期間を有する者の遺族に対する特例遺族年金)の1項の規定の適用については、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるものとみなす」

@保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が10年以上ある者は、保険料納付済期間+免除期間が10年以上あるとみなされる。
A保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が25年以上ある者は、保険料納付済期間+免除期間が25年以上あるとみなされる。
⇒長期要件による遺族厚生年金については、従来と同じく合算対象期間を含めて25年以上必要である。
 また、合算対象期間を含めて25年以上ある場合は、特例遺族年金ではなく、遺族厚生年金が支給される。
合算対象期間についてはこちらを
 60歳台前半の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金、特老厚ともいう)についてはこちらを
 老齢厚生年金(含む特別支給の老齢厚生年金)の裁定の請求(施行規則30条抜粋) 法改正(R01.07.01)
 「老齢厚生年金(厚生労働大臣が支給するものに限る)について、法33条の規定による裁定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した請求書を、機構に提出しなければならない」
@氏名、生年月日及び住所
A個人番号又は基礎年金番号
Aの2 雇用保険被保険者証の交付を受けた者にあつては、その旨
Aの3 雇用保険被保険者証の交付を受けた者(厚生労働大臣が番号法利用法により、直近の雇用保険被保険者番号の提供を受ける者を除く)にあっては、雇用保険被保険者番号
B被保険者であつた期間、国民年金の被保険者であつた期間又は共済組合の組合員若しくは私学教職員共済制度の加入者であつた期間(公的年金制度の加入期間)を有する者及び合算対象期間を有する者にあつては、その旨
C施行日前日において、共済組合が支給する退職年金又は減額退職年金の受給権を有していた者、旧通則法による老齢・退職を支給事由とする給付を受けることができる者等については、その旨
E最後に被保険者の資格を喪失したときに第四種被保険者等であつた者にあつては、その旨
F現に被保険者である者にあつては、使用される事業所の名称及び所在地又は船舶所有者の氏名及び住所
G配偶者又は加給年金額の対象となる子があるときは、その者の氏名、生年月日、請求者との身分関係
Gの2 配偶者があるときは、配偶者の個人番号又は基礎年金番号
H他の公的年金給付等を受ける権利を有する者にあつては、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード
I配偶者が公的年金給付等のうち老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付を受ける権利を有するときは、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード
J払渡し希望金融機関の名称、口座番号など、払渡し希望郵貯銀行の営業所名称等。
  「同2項 法改正(R01.07.01)  前項の請求書には、次に掲げる書類等を添えなければならない。(主なもの)
@法改正(R04.04.01) 基礎年金番号を記載する者にあつては、基礎年金番号通知書その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
⇒年金手帳の廃止に伴い、法令上はこれに代わるものとして「基礎年金番号通知書」を添付(ただし、年金手帳は基礎年金番号を明らかにすることができる書類として有効)
@の2 雇用保険被保険者証その他の雇用保険被保険者番号を明らかにすることができる書類(雇用保険被保険者証の交付を受けていない者にあつては、その事由書)
A生年月日に関する市町村長の証明書又は戸籍の抄本(厚生労働大臣が機構保存本人確認情報の提供を受けることができないときに限る)
B共済組合の組合員又は私学教職員共済制度の加入者であつた期間を有する者にあつては、当該共済組合又は日本私立学校振興・共済事業団が当該期間を確認した書類
C配偶者又は加算対象の子があるときは、その者の生年月日及びその者と請求者との身分関係を明らかにすることができる市町村長の証明書又は戸籍の抄本
Cの3 配偶者が振替加算の受給権を有している受給権者にあつては、・受給権者と配偶者との身分関係を明らかにすることができる市町村長の証明書又は戸籍の抄本、受給権者が配偶者によつて生計を維持していたことを明らかにすることができる書類
D配偶者又は加算対象の子があるときは、その者が請求者によつて生計を維持していたことを証する書類
E加算対象の子のうち、1級又は2級の障害の状態にある子があるときは、その障害の状態の程度に関する医師又は歯科医師の診断書、(いっての場合は)その障害の状態の程度を示すレントゲンフイルム
F公的年金給付(厚生労働大臣が支給するものを除く)を受ける権利を有する者にあつては、当該公的年金給付を受ける権利についての裁定又は支給決定を受けたことを証する書類
⇒情報連携により、@の2の雇用保険被保険者証、Aのうち住民票、Dのための課税(非課税)証明書などは添付不要になった。

 裁定請求の特例(施行規則30条の2) 法改正(H31.04.15)
 「老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を除く)について、法33条の規定による裁定による裁定を受けようとする者(66歳未満の者であり、かつ、特別支給の老齢厚生年金の受給権を有していた者に限る)は、前条の規定にかかわらず、次に掲げる事項を記載した請求書を機構に提出しなければならない」
@氏名、生年月日及び住所
@の2 個人番号又は基礎年金番号
A特別支給の老齢厚生年金の年金証書の年金コード
B配偶者又は加給年金額の対象となる子(前条1項(特別支給の老齢厚生年金)の請求書に記載した配偶者又は子に限る)があるときは、その者の氏名、生年月日、その者が請求者によつて生計を維持していた旨
C他の公的年金給付等を受ける権利を有する者にあつては、当該給付の管掌機関、年金コード
D配偶者(65歳に達した日の前日において特別支給の老齢厚生年金の加給年金額の対象となつていた配偶者に限る)が他の公的年金給付等を受ける権利を有するときは、当該給付の管掌機関、年金コード等並びに配偶者の個人番号又は基礎年金番号
E同時に老齢基礎年金の裁定の請求を行わない者にあつては、その旨(老齢基礎年金の繰り下げ希望)
⇒老齢基礎年金も同時に請求するか、後刻請求(繰下げ)するかを選択する。

 特別支給の老齢厚生年金の受給権者を有していた66歳未満の者の裁定請求(特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、65歳になり、本来の老齢厚生年金を繰下げしないで受給しようとするときは、改めて裁定請求をしなければならない。その場合の簡易な形式の請求(諸変更裁定の請求)のことである。

 裁定請求の特例(施行規則30条の2の2項) 法改正(H31.04.15)
 「老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を除く)について、法33条の規定よる裁定を受けようとする者(66歳に達している者であつて、特別支給の老齢厚生年金の受給権を有していたものに限る))は、前条の規定にかかわらず、次に掲げる事項を記載した請求書を機構に提出しなければならない」
@氏名、生年月日及び住所
@の2 個人番号又は基礎年金番号
A特別支給の老齢厚生年金の年金証書の年金コード
B特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得した日以後に初めて国民年金法の1号被保険者(任意加入被保険者を含む)又は国民年金法の3号被保険者としての国民年金の被保険者期間を有することとなつた者にあつては、その旨
C配偶者又は加給年金額の対象となる子があるときはその氏名、生年月日、請求者との身分関係
Cの2 配偶者(Eの配偶者を除く)又は加給対象の子があるときは、その者の個人番号
D公的年金給付等を受ける権利を有する者にあつては、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード
E配偶者が公的年金給付等(老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付に限る))を受ける権利を有するときは、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード、配偶者の個人番号又は基礎年金番号
F老齢基礎年金の支給繰下げの申出を行う者にあつては、その旨

 特別支給の老齢厚生年金の受給権者を有していた66歳以上の者が、繰下げではなく、65歳にさかのぼって、(本来の)老齢厚生年金を受給しようとするときの、簡易な形式の請求(65歳支給請求)のこと。

 裁定請求の特例(施行規則30条の3) 法改正(H31.04.15)
 「老齢厚生年金について、法33条の規定による裁定を受けようとする者(老齢基礎年金の受給権を有する者(当該老齢厚生年金が特別支給の老齢厚生年金以外のものであるときは、特別支給の老齢厚生年金の受給権を有していなかつた者に限る)に限る)は、前二条の規定にかかわらず、次に掲げる事項を記載した請求書を機構に提出しなければならない」
@氏名、生年月日及び住所
@の2 個人番号又は基礎年金番号
A老齢基礎年金の年金証書の年金コード
B老齢基礎年金の受給権を取得した日以後に初めて被保険者となつた者にあつては、その旨
C配偶者又は加給年金額の対象となる子があるときは、その者の氏名、生年月日及びその者と請求者との身分関係
D公的年金給付(老齢基礎年金を除く)を受ける権利を有する者にあつては、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード
E配偶者が公的年金給付等(老齢・退職又は障害を支給事由とする給付に限る))を受ける権利を有するときは、当該給付の名称、管掌機関、支給を受けることができることとなつた年月日、年金コード、配偶者の個人番号又は基礎年金番号
F支給繰下げの申出をするときは、その旨

特別支給の老齢厚生年金の受給権がなかった老齢基礎年金の受給権者が、厚生年金被保険期間1か月以上を有するため(本来の)老齢厚生年金の受給権が発生した場合、
・繰上げ支給の老齢基礎年金受給権者が、厚生年金被保険期間12か月以上を有することとなって、特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生した場合など
における、老齢基礎年金受給権者老齢厚生年金請求書のこと
 裁定請求の特例(施行規則30条の4) 
 「老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を除く)について、法33条の規定による裁定を受けようとする者(特別支給の老齢厚生年金の受給権を有していた者であつて、支給繰下げの申出を行うものに限る)は、施行規則30条及び同30条の2の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事項を記載した請求書を機構に提出しなければならない」
@施行規則30条の2の2項各号に掲げる事項
A支給繰下げの申出を行う旨

 特別支給の老齢厚生年金の受給権者を有していた66歳以上の者が、(本来の)老齢厚生年金を65歳にさかのぼってではなく、繰下げ受給しようとするときの繰下げ請求書
20
8C
 65歳以上の者であって、厚生年金保険の被保険者期間が1年未満の者は、国民年金法に規定する保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上あるときであっても、老齢厚生年金を請求することはできない。(H30年度改)(基礎)

解説を見る

正しい 誤り
30
2ア
 老齢基礎年金を受給している66歳の者が、平成30年4月1日に被保険者の資格を取得し、同月20日に喪失した。(同月に更に被保険者の資格を取得していないものとする) 当該期間以外に被保険者期間を有しない場合、老齢厚生年金は支給されない。(基礎)

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正しい 誤り




30
2ウ
 特別支給の老齢厚生年金の受給権者(第1号厚生年金被保険者期間のみを有する者とする)が65歳に達し、65歳から支給される老齢厚生年金の裁定を受けようとする場合は、新たに老齢厚生年金に係る裁定の請求書を日本年金機構に提出しなければならない。(基礎)

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正しい 誤り



























2.老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給額  (定額部分の支給額はこちらを)
2.1 老齢厚生年金の額:本則(43条)
 「老齢厚生年金の額は、被保険者であった全期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、別表各号に掲げる受給権者の区分に応じた再評価率を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額)の1000分の5.481に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする」
  この再評価率は一定のルールに基づいて毎年自動的に改定され 、その結果がこちらの再評価率表の例(令和5年度令和4年度令和3年度)となる。
 つまり、老齢厚生年金の額も、毎年このルールに基づいて自動的に変わっていくのだ。
 1号、2号、3号、4号厚生年金被保険者期間がある者に対しては、それぞれの号毎に、年金額を計算する。(78条の26の2項)
 報酬比例部分本体の計算においては、被保険者期間に上限はない。
 (生年月日に応じた上限があるのは、特別支給の老齢厚生年金とそれに基づく経過的加算の計算の場合である。。

  報酬比例分の経過措置等を踏まえた現時点での本来の計算額(平成12年改正法附則20条)
 「被保険者であった期間の全部又は一部が平成15年4月1日前であるときは、次の各号に掲げる額を合算した額とする」
1  平均標準報酬月額×1000分の7.125(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者であった期間の月数
2  平均標準報酬額 ×1000分の5.481(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者であった期間の月数

 給付乗率の読替え
 
H12改正法附則20条2項 前項に掲げる額を計算する場合においては、改正前の昭和60年改正法附則第59条第1項及び附則別表第7の規定はなおその効力を有する」とあり、生年月日に応じた給付乗率の読替え表(S60法附則別表第7表)はまだ生きている。
 すなわち、昭和21年4月1日以前に生まれた者については、生年月日に応じて、
  1000分の7.125 ⇒ 1000分の9.5  から1000分の7.23 の範囲で読み替え
  1000分の5.481 ⇒ 1000分の7.308から1000分の5.562の範囲で読み替え
 ただし、従前額保障の場合は、
  1000分の7.5  ⇒ 1000分の10.00から1000分の7.61 の範囲で読み替え
  1000分の5.769 ⇒ 1000分の7.692から1000分の5.854の範囲で読み替え
 読替え後の生年月日別給付乗率表はこちらを
 S60改正法附則59条
 「老齢厚生年金及び58条1項4号の長期要件により支給される遺族厚生年金の額を計算する場合は、1,000分の5.481とあるのは、S60法附則別表第7により生年月日に応じた読み替えを行う」

 実際の年金額は、この本則(本来の規定)に基づく額と、従前額改定率に基づく額のうち、高い額を採用する。詳細はこちらを
2.2 老齢厚生年金(報酬比例部分)の実際の支給額
 以下の計算方法の内、最も金額の大きいものを採択する。改定の推移はこちらを


@平成26年度までは、計算法4(いわゆる物価スライド特例水準、改前H06水準)が一番高かったが、27年度に特別な措置が行われて、本来水準との乖離が解消され、27年度以降廃止。
A27年度以降は、計算法1(いわゆる本来水準)と計算法5(本来水準の前年度額保障)並びに計算法2(従前額保障水準改後H06水準)のうち、一番高い額を採用する。
・一般的には計算法1による本来水準が一番高い。
・ただし、昭和11年度(12/04/01)以前生まれの者など一部例外的に本来水準が計算法2に及ばない場合は、計算法2による。
・また、計算法5(前年度額保障の特例)は、前年度、前前年度、3年度前の再評価率がデータ不足のために例外的な方法で改定されることによる歪みを補正するものであり、適用例は稀と考えられる。
計算法1 
(本則による本来額)
43条
 最新再評価による平均標準報酬月額×1,000分の7.125(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者月数+最新再評価率表による平均報酬報酬額×1,000分の5.481(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者月数
・報酬は最新年度再評価率表による
・乗率はH12年改正(5%カット)後の値 
・物価・賃金の変動は再評価率表を毎年見直すことによって行う。
計算法2
(従前額保障) 
(H12改正法附則21条1項)
 {H6年再評価による平均標準報酬月額×1,000分の7.5(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者月数+H6年再評価率表による平均標準報酬額×1,000分の5.769(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者月数)}× 従前額改定率
・報酬はH6年再評価率表による(その後の期間の報酬はH6時点に逆再評価)
・乗率はH12年改正(5%カット)前の値
・従前額改定率は、H16年度1.001(=1.031×0.971)をスタートとし、その後は既裁定者の基準年度以後算定率変動率で改定 (詳細はこちらを) 
・ただし、被保険者期間が平成14年1月以後のみである場合のは従前額改定率は、従前額改定率の特例に基づき従来あった物価スライド特例に準じた値が適用される。
計算法3(廃止)
(H16年改正前本則(旧43条)による本来額+物価スライド特例措置)
 {H12年改正前(H11年再評価率表による)平均標準報酬月額×1,000分の7.125(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者月数+H12年改正前(H11年再評価率表による)平均標準報酬額×1,000分の5.481(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者月数}×物価スライド率
・報酬はH12年改正前(H11年水準への再評価)による
・乗率はH12年改正(5%カット)後の値 
・物価スライド率は、H16年度0.988をスタートとし、その後は物価変動率に応じて、下げ方向でのみ改定する。下記に同じ。
計算法4(廃止)
従前額保障+物価スライド特例措置)
(H27以降廃止)
 {H6年再評価率表による平均標準報酬月額×1,000分の7.5(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者月数+H6年再評価率表による平均標準報酬額×1,000分の5.769(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者月数)}×1.031×物価スライド率
・報酬はH6年再評価率表による(その後の期間の報酬はH6時点に逆再評価)
・乗率はH12年改正(5%カット)前の値
・物価スライド率は、H16年度0.988をスタートとし、その後は物価変動率に応じて、下げ方向でのみ改定する。
 すなわち、前年の物価が上がった場合は改定しない。
 前年の物価が下がった場合でかつ、直前の年金額がダウンがあった年の前年の物価水準よりも下がった場合は、その差だけ年金額を下げる。
計算法5(前年度額保障の特例)  計算法1と同じ方法による前年度の年金額
・本来水準による当年度の年金計算額が、前年度の3月31日における年金額に満たない場合は、前年度年金額を当年の年金額とする。(ただしこれは、前年度、前前年度、3年度前の再評価率がデータ不足のために変則的な方法で改定されることによる歪みのみを補正するものである)

 計算法2(従前額改定率による従前額保障)
(1)平成12年改正法附則21条1項のH16改正前
 「平成12年改正後の乗率により計算した額が、改正前の乗率により計算した額に1.031を乗じた額に満たないときは、後者の従前額を用いる」
(2)平成12年改正法附則21条1項のH16改正後
 「平成12年改正後の乗率により計算した額が、改正前の乗率により計算した額に従前額改定率を乗じた額に満たないときは、後者の従前額を用いる」
(3)従前額改定率の改定
 「同4項 従前額改定率は、毎年度、厚生年金保険法43条の3(基準年度以後の再評価率の改定)の1項(調整期間にあっては、43条の5の1項、4項)の規定の例により改定する
・すなわち、調整期間における従前額改定率は、原則的には同条1項により、基準年度以後算出率物価変動率(ただし物価変動率の上昇率が名目手取り賃金変動率より大きいときは、名目賃金変動率)×調整率×前年度の特別調整率、を基準に改定される。
 ただし、「物価変動率又は名目手取り賃金変動率が1を下回る場合」は、43条の3の1項による「名目手取り賃金変動率で改定する」

@H12法改正により給付乗率を5%カットしたが、年金額の急激な減額を避けるために、改正前の従前額を保障し、
・5%カット前の給付乗率(平均報酬額は平成6年度当時の額⁾で計算した年金額×1.031と、5%カット後の給付乗率(平均報酬額は該当する年度の額)で計算した年金額のうち、高い方を採用することに。
・H16の改正後は、5%カット前の給付乗率(平均報酬額は平成6年度当時の額⁾で計算した年金額×従前額改定率と、5%カット後の給付乗率(平均報酬額は該当する年度の額)で計算した(計算法1⁾年金額のうち、高い方を採用することに。
・H16年度のスタート時点の従前額改定率は1.001(=1.031×0.971)
 その後は、当年度従前額改定率=前年度最下段の行の従前額改定率×物価変動率(ただし物価変動率の上昇率が名目手取り賃金変動率より大きいときは、名目手取り賃金変動率)×調整率×前年度の特別調整率で改定する。
 ただし、「物価変動率又は名目手取り賃金変動率が1を下回る場合」は、43条の3の1項による「名目手取り賃金変動率で改定する」

・従前額改定率の推移はこちらを
AH6年再評価率表について 具体的な表はこちらを
 H6年後にも被保険者期間がある場合を想定し、毎年、最下段の行を追加する。
・平成6年4月から12年3月までは0.990
・平成12年4月から17年3月までは0.917
・平成17年4月からは、「前年度最下段行の値/(物価変動率×実質賃金変動率)⁾を基準として政令で定める」ここで、平成16年法附則51条によると、「前年度の最下段行の再評価率は.926と読み替える」。
・よって、平成17年度に被保険者期間がある者については、平成16年度に被保険者期間がある者の再評価率が0.917であるところ、これを0.926と読み替えて、これを平成17年度計算に適用する物価変動率1.0×実質賃金変動率1.003で除することにより、0.923となる。
⇒分母は名目賃金変動率(可処分所得割合変化率はかけない)で、賃金が上がったことは、平成6年度値はそれだけ低い値であるとする。

 最近の従前額改定率の改定状況
@令和2年度
・物価変動率=1.005、名目手取り賃金変動率=1.003(名目賃金変動率は1.004)、調整率=0.999、前年度の特別調整率はなし 
 から、1.003×0.999=1.002で改定。
・元年度従前額改定率=1.000(S13.04.02以降生まれ0.998)であるから、
  従前額改定率=1.002(S13.04.02以降生まれ1.000)
・H6再評価率(令和2年度に被保険者期間がある者)=(令和元年度に被保険者期間がある者の再評価率値)/名目賃金変動率から、0.903/1.004=0.899
A令和3年度
・物価変動率=1.0、名目手取り賃金変動率=0.999(名目賃金変動率も0.999)、調整率は適用せずから、0.999で改定。
・2年度従前額改定率=1.002(S13.04.02以降生まれ1.000)であるから、
  従前額改定率=1.001(S13.04.02以降生まれ0.999)
・H6再評価率(令和3年度に被保険者期間がある者)=(令和2年度に被保険者期間がある者の再評価率値)/名目賃金変動率から、0.899/0.999=0.900
B令和4年度
・物価変動率=0.998、名目手取り賃金変動率=0.996(名目賃金変動率も0.996)、調整率は適用せずから、0.996で改定。
・3年度従前額改定率=1.001(S13.04.02以降生まれ0.999)であるから、
  従前額改定率=0.997(S13.04.02以降生まれ0.995)
・H6再評価率(令和4年度に被保険者期間がある者)=(令和3年度に被保険者期間がある者の再評価率値)/名目賃金変動率から、0.900/0.996=0.904
C令和5年度
・物価変動率=1.025、名目手取り賃金変動率=1.028(名目賃金変動率も1.028)、調整率=0.997、前年度の特別調整率=0.997から、   
 1.025×0.997×0.997=1.019で改定
・ 年度従前額改定率=0.997(S13.04.01以前生まれ0.995)であるから、
   従前額改定率=1.016(S13.04.02以降生まれ1.014))
・H6再評価率(令和5年度に被保険者期間がある者)=(令和4年度に被保険者期間がある者の再評価率値)/名目賃金変動率から、0.904/1,028=0.879
D令和6年度
 物価変動率=1.032、名目手取賃金変動率=1.031(名目賃金変動率も1.031)、調整率=0.996、前年度の特別調整率=1.0から、   
 1.031×0.996=1.027で改定
   5年度従前額改定率=1.016(S13.04.01以降生まれ1.014)であるから、
   従前額改定率=1.043(S13.04.02以降生まれ1.041))
 H6再評価率(令和6年度に被保険者期間がある者)=(令和5年度に被保険者期間がある者の再評価率値)/名目賃金変動率から、0.879/1,031=0.853

 物価スライド特例措置(H16年改正法27条)平成26年度以降廃止
 「厚生年金保険法による年金たる保険給付については、平成16年改正後の厚生年金保険法、平成12年改正法等の規定により計算した額が、これらの改正前の規定により計算した額に特例による物価スライド率(H16を0.988とし、前年の消費者物価指数が直近の当該改定が行われた年の前年の物価指数を下回るに至つた場合においては、改定前の率にその低下した比率を乗じて得た率)を乗じて得た額に満たない場合は、改正前の厚生年金保険法等の規定はなおその効力を有するものとし、改正後の厚生年金保険法等の規定にかかわらず、当該額をこれらの給付の額とする」  

・平成16年の法改正により16年10月からは、平成12年度以降の物価変動に対応した年金額を出発点とし、その後は賃金あるいは物価の変動に応じて、自動的に年金額を改定する仕組みを作った。
 しかしながら、16年度改正前時点での実際の年金は、特例によりH11,12,13年の物価下落がなかったとみなした額が支給されていたので、改正後の年金計算額よりも1.7%高いものであった。
 このため、年金額の急激な減額を避けるため、改正前の年金額を保障した。
 ただし、その後は物価スライド率に変更があった場合にみ年金額が改定される。
・特例による物価スライド率は、H16年度の0.998をスタートとし、その後は、直近の改定があった年度の前年の物価水準よりも下がった場合に改定する。
 (H16年度の0.998は、H11,12,13年の物価下落率の合計値-1.7%を反映していない数値)
・物価が上がった場合は改定せず。(賃金の変動には対応せず)
・物価が下がった場合でも、直近の改定があった年度の前年の物価水準に比べて高い場合は、改定せず。
・物価スライド率の推移はこちらを
 計算法3(H16改正前本則による本来額+物価スライド特例措置、廃止)
 平成16年10月改正前の本則(旧43条)により計算した本来の年金額とは、報酬はH12年改正時点((H11年水準への再評価)による値、乗率はH12年改正(5%カット)後の値とした計算式である。ただし、H13年以降の報酬の再評価は(65歳未満の者を除き)行わず、年金額に物価変動率をかけて完全スライドさせる)
 この完全物価スライドのかわりに、物価スライド特例措置による物価スライド率を適用したのが計算法3である。

 計算法4(従前額保障+物価スライド特例措置、廃止)
 平成12年改正前の乗率による年金額を保障した計算法2の従前額保障に、従前額改定率ではなく物価スライド特例措置による物価スライド率を適用したもの
 H16年の年金額は、1.031に物価スライド率0.988を掛けた1.018によりきまる水準であり、計算法2の従前額改定率による水準1.001よりも1.7%高い。
 計算法5(前年度額保障の特例)(附則17条の7抜粋)
 「当該年度の前年度に属する3月31日において年金の受給権を有する者について、再評価率の改定により、当該年度において本則により計算した額(当該年度額)が、当該年度の前年度に属する3月31日において同じく本則により計算した額(前年度額)に満たない場合には、前年度額を当該年度額とする
 ただし、
@新規裁定者に対して、43条の2あるいはマクロ経済スライドが適用される43条の4で改定される場合は、
 当該年度額が、前年度額に
・名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を下回るときは賃金変動率
・物価変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは物価変動率
をかけた額に満たないときは、かけた額を当該年度額とする
A既裁定者に対して、43条の3あるいはマクロ経済スライドが適用される43条の5で改定される場合
・物価変動率が1を下回るときに
 当該年度額が、前年度額に物価変動率をかけた額に満たないときは、かけた額を当該年度額とする。
⇒いずれも、当該年度の年金額が前年度額より下がるのはやむをえないとしても、至近3年度の再評価率の改定が変則的であるがために生じた減額分がもしあれば、その分だけを保障するもの。






23
1

 老齢厚生年金の額は、被保険者であった全期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、厚生年金保険法別表の各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に定める率(以下、「| A |」という)を乗じて得た額の総額を当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう)の1,000分の| B |に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。(基礎)

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語群はこちらを


4
9A
  1つの種別の厚生年金保険の被保険者期間のみを有する者の総報酬制導入後の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の計算では、総報酬制導入後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じて得た額の総額を当該被保険者期間の月数で除して得た平均標準報酬額を用いる。(23-1選択の類型)

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正しい 誤り
被保険者期間 26
6B
 老齢厚生年金の受給権を取得した月に被保険者であった場合、その受給権を取得した時点の年金額の計算の基礎には、受給権を取得した月を被保険者期間として含めることとなる。(基礎)

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正しい 誤り
13
9C
 報酬比例部分の年金額の計算に用いる被保険者期間には、生年月日に応じた上限がある。(発展)

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正しい 誤り












14
10
B
 平成12年の法改正では、老齢厚生年金の給付乗率が改正されたが、経過措置として、改正後の算定方法による額が、改正前の算定方法による額を下回るときは、改正前の算定方法による額が老齢厚生年金の額となる。(発展)

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正しい 誤り
18
5D
 平成12年の法改正により、基金が支給する代行部分についても給付水準の5%適正化の対象となったが、昭和16年4月1日以前生まれの者及び平成12年4月1日前に老齢厚生年金の受給権を取得した者については適用されない。(14-10Bの類型)

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正しい 誤り
16
6A
 昭和21年4月2日以後に生まれた者について、平成15年4月以後の被保険者期間に係る報酬比例部分の給付乗率は、従前額保障となっているので、計算結果により、1000分の5.481か1000分の5.769のいずれかになる。(14-10B関連)

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正しい 誤り
17
1E
 従前額保障等により、平均標準報酬月額及び平均標準報酬額に平成12年改正時の再評価率を使用する場合、平成17年4月以降の再評価率は、0.926を、前年度の物価変動率に3年度前の賃金変動率を乗じて得た率を基準にして、政令で定める。(発展)

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正しい 誤り
賞与
13
10
E
 賞与は、給付額の計算には一切反映されることはない。(改)、(基礎)

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正しい 誤り

























2.3 在職定時改定と退職改定
 在職定時改定(43条2項) 法改正(R04.04.01)
 「受給権者が毎年9月1日(「基準日」という)において被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く)の老齢厚生年金の額は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。
 ただし、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が1月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する」


 老齢厚生年金の受給権発生日と年金額の計算の基礎となる被保険者期間在職定時改定
@老齢厚生年金の受給権は、65歳以降であって、被保険者期間要件(保険料納付済期間と保険料免除期間との合算期間が10年以上、厚生年金被保険者期間が1か月以上)に該当するに至った日に発生する。
・たとえば、被保険者期間要件を満足する限り、65歳に到達した日
 ただし、被保険者期間要件を満足するものが繰上げ請求した場合は、繰り上げ請求を行なった日に、受給権が発生する。
A額の計算の基礎となる被保険者期間は、受給権を取得した日の属する月の前月までにある被保険者月数である。
⇒受給権取得時に、その時点での年金額を必ず決定する。
B受給権取得後も被保険者である場合は毎月毎に月数が増えることになるので、これを年金額にできるだけ反映させるために在職定時改定の制度が、令和4年4月からスタートした。
 これは毎年定期的に、1年単位で年金額を見直すもので、
 「9月1日に被保険者である場合は、8月までの被保険者であった期間月数を、年金額計算の基礎とする被保険者期間に加えて、10月分から年金額を改定
C9月1日には被保険者でない場合は、それまでに退職改定による改定がなされているはずであるから、これによる。
・ただし、43条ただし書きにあるように、「9月1日には被保険者でないが、資格喪失が8月で、喪失後1月以内に再取得した場合は、退職改定は行われないので、在職定時改定による」
D在職定時改定の制度は、65歳支給の(本来の)老齢厚生年金の受給者(65歳以上に限る)に適用されるものであって、
・ただし、繰上げ受給者については、報酬比例部分の支給開始年齢に達している場合に限って適用される。
 退職改定 詳細は、退職改定を参照のこと
 「43条3項 被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときは、その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日(退職した場合はその日)から起算して1月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する」
⇒受給権が発生した時点以降も勤務を継続して被保険者であった者が退職したときは、退職して1月経過した時点で、改めて被保険者期間月数を増加し、老齢厚生年金の額を改定するということ。
  在職定時改定・退職改定の適用に関する特例(附則15条の2) 法改正(R04.04.01)
 「43条2項(在職定時改定)及び3項(退職改定)の規定の適用については、当分の間、
・同条2項中「受給権者」とあるのは、「受給権者(附則7条の3(特老厚がない者の繰上げ)又は附則13条の4(特老厚報酬比例部分の支給開始前の繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては、65歳に達しているものに限る)、
・同条3項中「受給権者」とあるのは、「受給権者(附則7条の3(特老厚がない者の繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては65歳に達しているものに限るとし、附則13条の4(特老厚の支給開始年令前の繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては支給開始年齢に達しているものに限る)」

4
9B
 65歳以上の老齢厚生年金受給者については、毎年基準日である7月1日において被保険者である場合、基準日の属する月前の被保険者であった期間をその計算の基礎として、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する在職定時改定が導入された。

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正しい 誤り

5
9D
  厚生年金保険法第43条第2項の在職定時改定の規定において、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が1か月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎として、基準日の属する月の翌月から年金の額を改定するものとする。(令4-9B関連)

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正しい 誤り








3.加給年金額(44条再掲) 詳細はこちらへ
 被保険者期間月数が240(中高齢の短縮特例適用者は240とみなされる)以上ある者に対して、
@配偶者がおれば、その配偶者が65歳に到達するまで、
A年少の子がおれば、その子が18歳到達年度末まで(2級以上の障害状態にある子であれば20歳まで)
 老齢厚生年金に加給年金額が加算される。
 特別加算 詳細はこちらへ
 老齢厚生年金の配偶者に係る加給年金額については、上記の加給年金額に加えて特別加算もある。




















4.経過的加算(60年改正法附則59条2項)
 「老齢厚生年金(法附則8条(60歳台前半の老齢厚生年金)又はH6改正法附則15条1項若しくは3項(坑内員・船員に対する60歳前支給)の規定により支給する老齢厚生年金を除く)の額は、当分の間、43条1項及び44条1項の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に第1号に掲げる額から第2号に掲げる額を控除して得た額を加算した額とする」
⇒「経過的加算」または「差額加算」とよばれている。
1  1,628円×改定率×厚生年金保険の被保険者期間の月数(480を超えるときは、480)
⇒被保険者期間には、附則47条1項により旧船員保険法による船員保険の被保険者であった期間、その他の規定により厚生年金保険の被保険者であった期間とみなされた期間を含む)
⇒特別支給の老齢厚生年金の定額部分の計算式に等しい。
 1,628円については生年月日による乗率の調整があり、それにともなって、被保険者期間の上限480も生年月日による読替えがある。
⇒中高齢の特例、第3種の特例等によるものは、被保険者期間が240月未満であっても240月とする。(H60改正法附則61条2項)
2  満額の老齢基礎年金額×厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和36年4月1日以後の期間(附則47条2項(3種被保険者期間の特例)、3項(船員期間の4/3特例)、4項(船員期間の6/5特例)又はH8改正法附則5条2項、3項(旧適用法人共済組合員で船員であった者の4/3特例と6/5特例)又はH24一元化法附則7条2項、3項(国家公務員あるいは地方公務員共済組合員で船員であった者の4/3特例と6/5特例)の規定の適用があった場合にはその適用がないものとして計算した被保険者期間とし、20歳未満の期間及び60歳以後の期間その他政令で定める経過措置期間を除く)の月数/加入可能月数
⇒老齢基礎年金相当額

・特別支給の老齢厚生年金は、定額部分と報酬比例部分からなるが、65歳に達するとこの年金はなくなり、報酬比例部分は老齢厚生年金、定額部分に相当する分は老齢基礎年金として支給される。
 ところが、厚生年金法による定額部分の額の計算方法と、国民年金法による老齢基礎年金額額の計算方法が異なることから、この差を補正するために、老齢厚生年金に加算して支給されるのが経過的加算額。
44条による加給年金は、その支給要件に該当すれば、経過的加算とは別途に加算される。
・定額部分と老齢基礎年金額の差額と説明するのは間違いである。
 正しくは、定額部分と老齢基礎年金相当額(昭和36年4月1日以後でかつ20歳未満の期間及び60歳以後の期間を除く厚生年金保険被保険者期間の月数によって求めた老齢基礎年金額)の差額である。
 つまり、老齢基礎年金額であっても、国民年金1号被保険者として国民年金保険料を納付した期間に相当する部分は当然除くべきである。
 よって、経過的加算(6年度値)はこちらにある通りで、
@満額の老齢基礎年金の1か月当たりの単価と老齢厚生年金の定額部分の単価の違いによる年金額の補正分と、
A老齢基礎年金には反映されない、昭和36年4月1日前の厚生年金被保険者期間、昭和36年4月1日以後でかつ20歳未満及び60歳以後の厚生年金被保険者期間に対する定額部分、からなる。
19
2C
 60歳台前半の老齢厚生年金の定額部分と昭和36年4月1日以後の20歳以上65歳未満の厚生年金保険の被保険者期間に係る老齢基礎年金相当額に差があるときは、当該差額を老齢基礎年金に経過的に加算する。(基礎)

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正しい 誤り
令3
2A
 厚生年金保険の被保険者期間の月数にかかわらず、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢厚生年金における経過的加算額の計算の基礎とされない。(19-2Cの応用)

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正しい 誤り

5
9A
 今年度65歳に達する被保険者甲と乙について、20歳に達した日の属する月から60歳に達した日の属する月の前月まで厚生年金保険に加入した甲と、20歳に達した日の属する月から65歳に達した日の属する月の前月まで厚生年金保険に加入した乙とでは、老齢厚生年金における経過的加算の額は異なる。(19-2Cの応用)

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正しい 誤り

3
2B
 経過的加算額の計算においては、第3種被保険者期間がある場合、当該被保険者期間に係る特例が適用され、当該被保険者期間は必ず3分の4倍又は5分の6倍される。(発展)

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正しい 誤り
18
5E
 老齢厚生年金の経過的加算の額の計算における老齢基礎年金相当部分の額を計算する場合に、厚生年金保険の被保険者期間のうち、昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間については、生年月日に応じた乗率を乗じて得た月数を基礎とする。(応用)

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正しい 誤り
厚生年金基金の加入員 5.厚生年金基金に関連する特例(44条の2)  法改正(H26.04.01削除、ただし存続厚生年金基金については暫定的に適用)
 「被保険者であった期間の全部又は一部が厚生年金基金の加入員であった期間である者に支給する老齢厚生年金については、43条1項に規定する額は、同項に定める額から当該厚生年金基金の加入員であった期間に係る132条2項に規定する額(その額が43条1項に定める額を上回るときは、43条1項をの額)を控除した額とする」

@基金の加入期間がある者に(政府が)支給する老齢厚生年金の額は、基金の加入期間も含めて計算した通常の額から代行部分を引いた額である。(代行部分には、標準報酬の再評価と物価スライドが考慮されていないので、政府が支給する老齢厚生年金にはこれに相当する額も含まれる)
A基金が支給する老齢年金は、基金の加入期間における代行部分の額+基金独自のプラスアルファ分である。
12
3E
 被保険者であった期間の全部又は一部が、厚生年金基金の加入員であった期間である者に支給する老齢厚生年金については、厚生年金基金の加入員であった期間は、43条1項により求めた老齢厚生年金額を適用しない。(改)(基礎)

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正しい 誤り




































6.老齢厚生年金の繰下げ支給
6.1 繰下げの申出(44条の3) 法改正((H19.4.1施行)
 「老齢厚生年金の受給権を有する者であってその受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。
 ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、他の年金たる保険給付(他の年金たる保険給付、又は国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く)の受給権者であったとき、又は当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から1年を経過した日までの間において他の年金たる保険給付の受給権者となったときは、この限りでない」
  補足
@「受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前」とは、
 いつ「繰下げの申出」をしても構わないとはいえ、最低でも繰下げ増額期間は1年以上ないといけない。
 たとえば、65歳と10か月後に申し出て、10か月間増額した年金が欲しいということはできない。
A「他の年金たる保険給付等々」とは、老齢厚生年金とは併給できない(併給できたとしても満額併給ではない)障害厚生年金、遺族厚生年金などのほか、繰下げを同時に行うべき退職共済年金などのこと。
  一元化前の退職共済年金など退職を事由とする年金は、老齢厚生年金と同時に繰下げを行うべきものであるので、取扱い上は「他の年金たる保険給付」ということになる。
B1項ただし書きの意味
 老齢厚生年金の受給権を取得したとき(通常は65歳)に、上記の他の年金の受給権がある者(あるいはその後1年以内にこれらの年金の受給権を取得したときは、他の年金を受給する一方、老齢厚生年金はしばらくいらないから繰下げ増額対象期間にしてくれということはできない。
C申出の方法等:年金機構HP(ページID:170010010-689-952-235)
 「老齢厚生年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳まで(注)の間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。
 なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げすることができます
 また、特別支給の老齢厚生年金は「繰下げ制度」はありません。特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達したときは速やかに請求してください」
 :昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢厚生年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(または権利が発生してから5年後⁾までとなります。
 「2項 法改正(R05.04.01、5項の新設に伴い( )内を追加)、法改正(R04.04.01)、法改正(H26.04.01施行) 
 「1年を経過した日後に次の各号に掲げる者が1項の申出(5項の規定により前項の申出があったものとみなされた場合における当該申出を除く)をしたときは、当該各号に定める日において、1項の申出があつたものとみなす」
@老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して10年を経過した日前に他の年金たる給付の受給権者となつた者:他の年金たる給付を支給すべき事由が生じた日
A10年を経過した日後にある者(前号に該当する者を除く):10年を経過した日

◎対象者は、令和4年4月1日以降に
 老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過する者(受給権発生日が平成29年4月1日以降)
@老齢厚生年金の受給権を取得した日から10年間の間に、他の年金の受給権を取得した場合:いつ申出をしても、それらの受給権を取得した日までしか増額は認めない。(それ以降は、そこまで増額された老齢厚生年金を受給するか他の年金にするか選択してくれ)
A老齢厚生年金の受給権を取得した日から10年間経過した後であれば、いつ申出をしても、年金額は10年間分増額となる。
⇒受給権取得日から起算して12年経過日に「繰下げの申出」をした場合、10年経過日の翌月分から申出月までは遡って一括支給、それ以降の分は毎偶数月に定期的に支給される。
 なお、この場合、5項の適用による別の選択もある。
 補足:繰下げと受給権の時効との関係は、H04,03,29、年管発0329-15)により、
 令和4年4月1日以降に受給権を取得した日から起算して5年を経過した者が、当該受給権を取得した日から起算して15年を経過した日までの間に老齢厚生年金の支給繰下げの申出(繰下げの申出があったものとみなされる場合を含む)を行う場合は、時効消滅はない。
 「3項 法改正R05.04.01(5項の新設に伴い( )内を追加)
 1項の申出(5項の規定により1項の申出があったものとみなされた場合における当該申出を含む)をした者に対する老齢厚生年金の支給は、36条(支給期間)1項の規定にかかわらず、当該申出のあつた月の翌月から始めるものとする」
⇒36条1項の規定によれば、「年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始める」
 つまり、この者は老齢厚生年金の受給権をすでに取得済みであり、受給権取得月の翌月から支給を開始すべきところ、まだ裁定請求をしていないので支分権が発生していない。
 そこで、この者が繰下げの申出をした日に支分権が発生し、その翌月から支給を開始することにした。
⇒この場合「翌月から開始」とは翌月から実際に支給され始めるという意味ではなく、「翌月分から支給される」という意味である。
 「4項(繰下げ支給の年金額の規定)については、こちらを」
 繰下げみなし増額(44条の3の5項) 法改正(R05.04.01)新規
 「1項の規定により老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる者が、その受給権を取得した日から起算して5年を経過した日後に当該老齢厚生年金を請求し、かつ当該請求の際に1項の申出(繰り下げの申出)をしないときは、当該請求をした日の5年前の日に1項の申出(繰り下げの申出)があったものとみなす。
 ただし、その者が次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない」
@当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して15年を経過した日以後にあるとき
A当該請求をした日の5年前の日以前に他の年金たる給付の受給権者であったとき。
 補足(繰下げみなし増額)
(1)対象者
 令和5年4月1日以降に、老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過する者、すなわち、受給取得日が平成29年4月1日以降の者)
 よって、老齢厚生年金の受給権を65歳到達時に取得した者については、令和5年4月1日以降に、71歳に到達する者(すなわち、昭和27年4月2日以降生まれの者)
(2)繰下げみなし増額規定及び関連規定のケーススタディ
例1:たとえば受給権取得から7年経過日に繰下げではなく通常の裁定請求をした場合は、5年前の前日に繰下げ請求したとみなされ、2年分(16.8%)増額した年金が、5年経過月の翌月分から請求月分までの5年間分はまとめて一括支給、請求月翌月分以降は毎偶数月に支給される。
(参考1) 5項新設前に、受給権取得から7年経過月に通常の裁定請求をした場合は、2年分は支分権の時効消滅により支給されず増額なしの年金が、5年経過月の翌月分から請求月分までの5年間分はまとめて一括支給、請求月翌月分からは毎偶数月に支給されていた。
例2:受給権取得から12年経過日に繰下げではなく通常の裁定請求をした場合は、5年前の前日に繰下げ請求したとみなされ、7年分増額した年金が、すでに経過している5年間分はまとめて一括支給、請求月の翌月分からは毎偶数月に支給される。
(参考2) 受給権取得から12年経過日に繰り下げの申出をした場合、2項により10年経過日に繰下げ請求した者とみなされ、10年分増額した年金が、すでに経過している2年間分はまとめて一括支給、請求月の翌月分からは毎偶数月に支給される。(こちらの方が、例2よりも単年度の年金額は多いが、支給年数は5年少ない)
例3:受給権取得から17年を経過日以後に繰下げではなく通常の裁定請求をした場合、5項による繰下げみなし増額は適用されない。よって、増額なしの年金が、すでに経過している17年間分のうち、時効消滅していない5年間分はまとめて一括支給、請求月の翌月分からは毎偶数月に支給されるので、圧倒的に不利となる。
 この場合は、繰下げの申出を行うのが有利。この場合は2項の適用を受けるので、10年経過日に繰下げの申出を行ったとみなされ、10年間分増額された年金が、すでに経過している7年間分のうち、時効消滅していない5年間分はまとめて一括支給、請求月の翌月分からは毎偶数月に支給される。
 繰り下げ上限年齢の75歳化に伴う時効の取扱いについてはこちらを
 60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金の繰下げ(附則12条)
 「44条の3(繰下げの申出)の規定は、附則8条(60歳台前半の老齢厚生年金)の規定による老齢厚生年金については、適用しない」

 繰下げ規定の経過措置 
(1)老齢齢厚生年金の支給の繰下げに関する経過措置(令和2年法附則8条) 法改正(R04.04.01)
 「改正後の厚生年金保険法44条の3(繰下げ)の規定は、施行日(R04.04.01)の前日において、老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない者について適用する」
(2)受給権を取得した日から起算して5年を経過した日後の老齢厚生年金の請求に関する経過措置(令和2年法附則11条) 法改正(R05.04.01)
 「改正後の厚生年金保険法44条の3の規定は、施行日(R05.04.01)の前日において、老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない者について適用する」
 ⇒老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以後である者(上記(1)と同じ)
(3)老齢齢厚生年金の繰下加算額に関する経過措置(令和3年経過措置政令附則4条)法改正(R04.04.01)
 「改正後の厚生年金保険法施行令3条5の2(繰下加算額)の規定は、施行日(R04.04.01)の前日において、老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない者について適用する」
⇒老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以後である者(上記(1)、(2)と同じ)
チョット補足
◎繰り上げは請求、繰下げは申出
(1)「繰上げ」の場合は、年齢要件を満たしていない受給権(基本権)のない者が行うので、裁定請求が必要である。
(2)「繰下げの申出」とは、当面の間は受給しないという申し出ではなく、受給していなかった年金を増額して支給開始してくれということ。
 (老齢厚生年金の受給権(裁定前基本権)はあるが、裁定請求していないので基本権があることの確認と、増額した年金の支分権を発生させてくれという申出を行う。一方、裁定請求だけを行えば、増額なしの年金を受給権発生日に遡って支給いてくれということになる)
 なお、1号、2号、3号、4号被保険者期間がある場合は、それぞれの老齢厚生年金について同時に「繰下げの申し出」を行わないといけない。(78条の28の2項)
@たとえば67歳になったときに申出をすれば、65歳から基本権があることの確認と、67歳から増額年金(2年分の年金はあきらめるかわりに、以降は0.7×24=16.8%増額した年金)の支給を可能とする支分権が発生する。(申出した月の翌月分から支給される)
A67歳になったときに、65歳からの年金の支給を請求しても構わない。
 この場合は65歳から基本権があることの確認と、65歳から増額なしの年金の支分権が発生する。(過去2年分の年金は一括支給される)
6.2 繰下げ支給の年金額( 44条の3の4項)
 「1項の申出(5項の規定により1項の申出があったものとみなされた場合における当該申出を含む)をした者に支給する老齢厚生年金の額は、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として43条(老齢厚生年金額)の規定の例により計算した額並びに46条(60歳台後半の在職老齢年金)の規定の例により計算したその支給を停止するものとされた額を勘案して政令で定める額を加算した額とする」  
 繰下げ加算額の計算(施行令3条の5の2) 法改正(R04.04.01)
 法44条の3の4項に規定する政令で定める額は、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月(受給権取得月)の前月までの被保険者期間(受給権取得月前被保険者期間)を基礎として法43条条1項(老齢厚生年金額の計算)の規定によつて計算した額に平均支給率を乗じて得た額(経過的加算がある場合はその額を加算した額)に増額率(1000分の7に受給権取得月から繰下げの申出をした日の属する月の前月までの月数(当該月数が120を超えるときは、120)を乗じて得た率)を乗じて得た額とする」 
 「2項 前項の平均支給率は、受給権取得月(当該受給権取得月から申出日の属する月までの期間が10年を超える場合にあっては、当該申出日の10年前の日の属する月)の翌月から申出日の属する月までの各月の支給率(当該各月にのうち、老齢厚生年金の受給権を有する者が法46条1項(60歳台後半の在職老齢年金)に規定する属する月にあつては同項の規定によりその支給を停止するものとされた額を、受給権取得月前被保険者期間を基礎として法43条1項(老齢厚生年金額の計算)の規定によつて計算した額で除して得た率を1から控除して得た率とし、当該属する月でない月にあつては1とする)を合算して得た率を、受給権取得月の翌月から申出日の属する月までの月数で除して得た率をいう」

@支給率:60歳代後半在職老齢年金の仕組みによる支給停止額を控除後の老齢厚生年金額の、65歳到達時の老齢厚生年金額に対する割合(いずれも、経過的加算を除く)
 =1−(その月の在職老齢年金による支給停止額)/(65歳到達時の老齢厚生年金額
A平均支給率:支給率の、老齢厚生年金額の受給権取得月翌月から申出日の属する月までの平均値
 ={1−(各月の支給停止額)/(65歳到達時の老齢厚生年金額)の受給権取得月翌月から申出日の属する月までの平均値
B在職老齢年金の適用がある場合の年金額
 ={65歳到達時の老齢厚生年金額(経過的加算を除く)×平均支給率+経過的加算}× 増額率
 ここで、
 増額率=0.7%×(受給権取得月から繰下げ申出日の属する月の前月までの月数)
⇒繰下げによる本体部分の増額は、在職中に実際に支給される年金額(本来の老齢厚生年金額−60歳台後半の在職老齢年金制度による支給停止額)に対してのみ行われる。
6.3 繰下げ支給の実施(H16改正法附則42条)
 「改正後の厚生年金保険法第44条の3の規定は、平成19年4月1日前において老齢厚生年金の受給権を有する者については、適用しない」
 平成19年4月1日以降に新たに老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金は対象外)の受給権を取得した者は、老齢厚生年金の繰下げが可能になった。
 老齢基礎年金のほか、障害基礎年金受給権者も老齢厚生年金の繰り下げが可能
 老齢基礎年金の繰下げと同時に、あるいは単独(別々)に繰り下げ可能である。
 なお、繰り下げ制度が平成14年にいったん廃止されたのは、このときに、厚生年金被保険者の上限年齢が65歳から70歳に引き上げられ、65歳台後半の在職老齢年金の仕組みを適用するためには、この制度が邪魔であったからである。(繰り下げすることにより、支給停止を免れ、かつ、年金額が増額されるなどはあってはならないとしたのだ)

6.4 繰下げ支給の変遷
 対象者 老齢厚生年金の繰下げ 老齢基礎年金繰下げとの関係  増額率
 S12年4月1日以前生まれ  H14.4.1前において受給権を有する者  同時に繰下げ  年単位
 1年以上 12% 4年以上 64%
 2年以上 26% 5年以上 88%
 3年以上 43%
 S12年4月2日以降
 S16年4月1日以前生まれ
 不可  老齢基礎年金のみ単独で可能  老齢基礎年金増額率は年単位
 S16年4月2日以降
 S17年4月1日以前生まれ 
 老齢基礎年金増額率は月単位
 S17年4月2日以降
 S27年4月1日以前生まれ
 R04.03.31までに70歳に到達している者  別々にあるいは単独で繰下げ可能  月単位で0.7%(ただし、最小は12月8.4%、最大は70歳までの60月(42%)
 S27年4月2日以降生まれ  R04.03.31には70歳に到達していない者   月単位で0.7%(ただし、最小は12月8.4%、最大は75歳までの120月(84%)
 ただし、受給権取得が65歳到達日より後の場合は、取得日から5年間を限度。








12
10
A
 昭和12年4月1日に生まれた老齢厚生年金の受給権を有する者が、66歳に達する前に当該老齢厚生年金の裁定請求をしていないときは、厚生労働大臣に繰下げ支給の申し出を行うことができる。(発展)

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正しい 誤り
14
6A
 昭和12年4月1日以前に生まれ、平成14年4月1日前に老齢厚生年金の受給権を有する者が、66歳に達する前に当該老齢厚生年金を請求していなかった場合は、老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。(12-10Aの類型)

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正しい 誤り
19
3D
 昭和17年4月2日前に生まれた者であって、平成19年4月1日以降に老齢厚生年金の受給権を取得した者については、すべて老齢厚生年金の繰下げの申出を行うことができない。(発展) 

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正しい 誤り

4
5E
 令和4年4月以降、老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行うことができる年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられた。
 ただし、その対象は、同年3月31日時点で、70歳未満の者あるいは老齢厚生年金の受給権発生日が平成29年4月1日以降の者に限られる。

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正しい 誤り




















19
3A
 障害基礎年金の受給権者であって、平成19年4月1日以降に老齢厚生年金の受給権を取得した者が、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求しておらず、かつ障害基礎年金以外の障害年金又は遺族年金の受給権者となったことがないときは、厚生労働大臣に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行うことができる。(基礎) 

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正しい 誤り
25
8D
 老齢厚生年金の受給権を有する者(平成19年4月1日以後に老齢厚生年金の受給権を取得した者に限る)であって、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものはすべて、厚生労働大臣に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。(19-3Aの類型)

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正しい 誤り
28
4C

 障害基礎年金の受給権者が65歳になり老齢厚生年金の受給権を取得したものの、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかった場合、その者は、老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行うことができる。なお、その者は障害基礎年金、老齢基礎年金及び老齢厚生年金以外の年金の受給権者となったことがないものとする。 (19-3Aの類型)

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正しい 誤り
令2
2

 厚生年金保険法第44条の3第1項の規定によると、老齢厚生年金の受給権を有する者であってその| B |前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができるとされている。ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、他の年金たる給付(他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(| C |を除く)の受給権者であったとき、又は当該老齢厚生年金の| B までの間において他の年金たる給付の受給権者となったときは、この限りでないとされている。(19-3Aの類型)

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語群はこちらを


中に他








26
6D
 65歳で老齢厚生年金の受給権を取得したが請求していなかった者が、67歳になったときに遺族厚生年金の受給権者となった場合、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることはできず、65歳の時点に遡って老齢厚生年金が支給される。
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正しい 誤り

3
9E
 昭和28年4月10日生まれの女性は、65歳から老齢基礎年金を受給し、老齢厚生年金は繰下げし70歳から受給する予定でいたが、配偶者が死亡したことにより、女性が68歳の時に遺族厚生年金の受給権を取得した。
 この場合、68歳で老齢厚生年金の繰下げの申出をせずに、65歳に老齢厚生年金を請求したものとして遡って老齢厚生年金を受給することができる。
 また、遺族厚生年金の受給権を取得してからは、その老齢厚生年金の年金額と遺族厚生年金の年金額を比較して遺族厚生年金の年金額が高ければ、その差額分を遺族厚生年金として受給することができる。
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正しい 誤り

老厚と繰下げ
19
3B
 60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者であった者は、老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行うことはできない。(基礎)

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正しい 誤り
28
4B
 60歳から受給することのできる特別支給の老齢厚生年金については、支給を繰り下げることができない。(19-3Bの関連)

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5
6D
 報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権を有する者であって、受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかった場合は、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。(28-4Bの類型)

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19
3E
 老齢厚生年金の支給繰下げの申出は、老齢基礎年金の支給繰下げの申出と同時に行わなければならない。(基礎)

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正しい 誤り
28
4A
 平成19年4月1日以後に老齢厚生年金の受給権を取得した者の支給繰下げの申出は、必ずしも老齢基礎年金の支給繰下げの申出と同時に行うことを要しない。(19-3Eの応用)

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繰下げ加算額 23
1B
 70歳に達した者であって、その者が老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った場合に支給する老齢厚生年金の額に加算する額は、繰下げ対象額(在職老齢年金の仕組みにより支給停止があったと仮定しても支給を受けることができた(支給停止とはならなかった)額に限られる)から経過的加算額を控除して得られた額に増額率を乗じて得られる額である。(基礎)

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5
9B
 老齢厚生年金の支給繰下げの申出をした者に支給する繰下げ加算額は、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月までの被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額と在職老齢年金の仕組みによりその支給を停止するものとされた額を勘案して、政令で定める額とする。(23-1Bの類型)

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正しい 誤り
12
10
D
 平成14年4月1日前に老齢厚生年金の受給権を有する者が、支給の繰下げによって加算される額を算出するための率は、当該年金の受給権を取得した日から起算して当該年金の支給繰下げの申し出をした日までの期間が5年を超える場合には0.88である。(発展)

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繰下げみなし
5
9C
 65歳到達時に老齢厚生年金の受給権が発生していた者が、72歳のときに老齢厚生年金の裁定請求をし、かつ、請求時に繰下げの申出をしない場合には、72歳から遡って5年分の年金給付が一括支給されることになるが、支給される年金には繰下げ加算額は加算されない。(基礎)

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正しい 誤り
経過的加算
4
5D
 老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った場合でも、経過的加算として老齢厚生年金に加算された部分は、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出に応じた増額の対象とはならない。

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28
4D
 老齢厚生年金の支給の繰下げの請求があったときは、その請求があった日の属する月から、その者に老齢厚生年金が支給される。(基礎)

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正しい 誤り

4
5C
 68歳0か月で老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った者に対する老齢厚生年金の支給は、当該申出を行った月の翌月から開始される。(28-4Dの類型)

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正しい 誤り